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2016年が明けました。

このブログを開始してからどれくらいの年月が・・というほど
大層な話ではありませんが、10年以上はもうたっています。
その間に、当然ですがいろんなことがありました。

10年ですから、ないほうがおかしいのです。
人も社会も企業も、常に流れ沈み、浮かびそしてまた流されと
綿々と続いているのですから。

わたくしも相応に年は経てきましたが、これはこれで良いこともあり
悪しきこともありで、なかなか楽しい10年でしたね。

昔よく聞かれました。
「もし、帰れるなら何時の時代に帰りたい?」と。
その都度
「今が一番いいですよ。」と答えてきたわたくしですが、その気持ちに
なんの変化もないのは、未熟ということなのか、はたまた成熟と
いうことなのか?

年の初めに従姉妹から、「あけおめ」ラインが来ましたので、今年の
抱負をと思い「今年は鬼ババキャラに更に磨きをかけるわ」と返信したら
「いやいや、もうそれ以上は誰も求めてないと思うよ」と返されて、
家族一同、妙に納得しておりました。

ま、親族でもそうなのですから、わたくしは死ぬまでこのキャラのままで
生き続けるのだと改めて実感した年の初めでございました。


もうそう長くはない余生(と、言いながら100歳軽く越える気だよと、
カゲの声は申しておりますが)

自由に(いまだって、十分自由じゃん。これもカゲの声)
奔放に(あんたが奔放でないっていったら、この世の誰が奔放?またまたカゲの声)
・・・・・・

ああ、もう煩い。
そうですよ。わたくしはわたくし、今までと同じように、自由に奔放に
思うが儘に生きていきますよ。


ということで、このブログも、そのように自由に気儘に、奔放に書いたり
書かなかったりを繰り返すこともある・・・と、ご寛恕くだされば
幸いです。


数少ない貴重なわがブログの読者の皆様に・・・

                    2016年の相談員

                  

# by sala729 | 2016-01-10 14:52

寄る年波か、飽き性のせいかは定かではありませんが、ずいぶんと
久方ぶりです。(笑)

最近は嫌なことや、怒れる事ばかり綴っているので、意識的に避けて
いた・・という処もままあるのはあるのです。
でも、その縛りをまたも揺るがしたのが、過日の戦後70年記念番組
「レッドクロス」

そもそも、タイトルからして、なんじゃこれ?
と、思ったら、主人公(松島菜々子さんでした)が、日赤の従軍看護婦で
彼の大戦で運命にもてあそばれる「母と子」というテーマ・・らしかった
です。

・・私、これ見て、共産主義者とみなされて、レッドパージに
あった夫を支える妻の話かと思いましたよ。・・って誰もそんなこと
思わないか・・(苦笑)

それにしても、この物語は酷い。
何のための戦争特集番組なんだ!と、何度も叫びたくなりました。
まず、設定が佐賀県なのに、みんなきれいな標準語。
方言一切なし。ある程度ノンフィクションを謳っているから、佐賀県
なのでしょうが、今時、方言話さない地方ドラマなんて、ありませんよ。

松島さんもそうだけど、祖父役の山崎勉さんも、村長も、先生も友達も
みんなが標準語。
貧しい小作の家ったって・・・確かに鄙ではあるけど、間口の広い
立派な農家ですよ。誰がみても・・・

主人公は母の闘病がきっかけで医療に目覚め、看護婦になるべく勉強します。
そして、晴れて日赤の看護婦として満州に渡ります。

戦地ではないにせよ、前線で傷ついた兵士を看護し、厳しいステレオタイプの
日本陸軍の上官に、赤十字の志を宣言し、その正義のために、同僚の
医師は殴られ、のちに夫となる人も殴られ・・・・
彼女の口癖は「赤十字精神・・・」

しかし、現実はそれを発揮すればするほど、自分はもちろん、周囲の人たちも
傷つき、巻き込んでいくのです。

それは、あたかも正義を振りかざす学級委員の女子のようです。
その下で、息を潜めている子たちのことなど、何も構いはしない。
自分の正義だけが、通ればそれでいいという、幼稚な正義感。

環境は悲惨です。第一夜ではラストで、夫が四肢欠損状態で運ばれ、
彼女の目の前で亡くなります。
置いてきた子供を迎えに行った開拓村では、世話になった義兄夫婦が
無残に殺され、その子と自分の息子は、列車に乗るために、駅に行ったと
聴き、友好的な中国人の乗る馬に乗せてもらい駅に向かいます。
その間、彼女の叫びは「ヒロト!ヒロト!」

駅でも、別れ際でも彼女は、ヒロトとしか叫びません。
一緒にいるであろう、父と母を惨殺された甥のダイチのことは、一言も
口にしません。
・・・・博愛の赤十字の権化なのに、この自分の子だけみたいな設定は
なに??


二夜からはさらに「ヒロト!」の連呼。
自分の正義感で女の子を庇い、その自分を庇って死ぬ医師。
地下に隠れていろと厳命されながら、病気の女の子ひとりを手術する
ために、のこのこ出てきて、同僚の医師や看護師達を窮地に陥れる
無軌道。
これってほんとに、この女性を正義の人として描きたかったの?と
思わず疑るような、種々の設定にブラックジョークかと思いました。

わが子を甥を助けてくれた、中国人富豪の末路を聞いても、彼女の
中にはわが子だけ。
ヒロト!

そのヒロトは、いつも傍にいてくれるダイチと支えあって困難を生き延び
ながら、ついにはそのダイチも死ぬ。

その後、二人は佐賀の陸軍病院で人民解放軍の傷病兵士と看護婦として再会
するも、彼女の口から出るのは「ヒロト!」だけ。
忘れたことはなかったという自己弁護だけ。

こうなると、この脚本家は、ホントは松島菜々子さんのこと、嫌いなんじゃ
ないかな・・とさえ思ってしまいます。

しかも、少し遡れば、彼女が人民解放軍から解き放たれ、故郷に帰ってきたのは
20年後。
なのに、じっちゃんは、そのままでいる。「アカ」扱いされた孫娘のために
啖呵を切る元気もある。
これはないでしょ・・・・


などと、突っ込みどころ満載のドラマでしたが、何よりわたくしが嫌いなのは
博愛の赤十字と臆面もなく口にしながら、自分の正義と自分の子供しか愛せなかった、ひとりよがりの母の愛と正義感です。

正義を口にしなくても、そう生きた人はいたでしょうし、自分の子も
人の子も、愛し守っていた、あの時代の大人もいたはずです。


その日の昼間、


わたくしはたまたま「いしぶみ」という朗読ドラマを見ました。
1960年代に、杉村春子さんが朗読した文を、綾瀬はるかさんが
していました。
広島で原爆にあった、広島二中の子らの最後を、父母や家族が文にした
ものを朗読していました。
事実は、重いです。なんの装飾もない設定の中で、淡々と読むだけの
一語一語が胸に刺さります。
それは何十年たっても、同じように母の胸に刺さるような気がします。

真実は何よりも重く、何よりも深いことを、しみじみ感じ入った夜でした。

# by sala729 | 2015-08-04 15:11

朝食の仕度をしていると、テレビでニュースが流れていました。
見るとなく、聞くとなくではありましたが、同じ部屋の中です。
音は当然耳にも入ります。

内容は、あの神戸連続殺傷事件の酒鬼薔薇君(こう呼んでいいのか
どうかは判りませんが、文中の便宜上とお許しください。酒鬼クンと
呼ばせていただきます)が、自署した本が上梓されたというものでした。

このニュースは前日、わたくしも耳目にはしておりましので、
「正直に言うなら読みたいよね。」「そりゃそうやろ。本読む人間
ならこれ読まな嘘やろ。」なんて会話を今朝も家人としたばかりでした。

でも、改めてニュースになってみると、はたと考えたのです。

わたくしは一人の部外者・・はっきり言えば、野次馬としての興味で
読みたい。とても読みたい。
毎月、分不相応に本を買い漁り、読み散らかすわたくしが、これに
飛びつかないわけはない・・と、本人も思います。


でも、遺族の方からすれば、それはどうなのだろうか。
殺害された女児のお母様は、ずいぶん前から酒鬼クンが心境的に成長
したと評価されておりました。
これはなかなかにできることではありません。
と言うか、こんなに冷静に静かに心境をお話できる人間性には、ただただ
感服するだけです。

また、男児のお父様は、ずっと長い間酒鬼クンからの手紙を
公開せず、コメントも出されておりませんでしたが、最近になって
「彼の心境に変化の兆しがみられるような気がする」と、少し
心の鎖が緩まったのかと思わせるようなコメントを出されておりました。

そんな中での突然の独白本です。
もちろん彼の声で、事件の真実や彼の心境、変遷を聞きたいと希求する
人間は決して少なくはないでしょう。

これまで、何人もの人たちが、関連するいろいろな本を出されておりますが
そのどれよりも、意義のあることなのかもしれません。


でも、男児のお父様は、この出版に対して、はっきりと不快感を
示していらっしゃいます。
お父様の今までの今までの言動から察するに、今回の上梓を遺族、
少なくともこのお父様はご存知なかったのではないか・・

現に、そういうコメントを出されていましたね。

わたくしも、それはないんじゃないかと思います。
毎年送られてくる、愛する息子を無残に手にかけた男からの手紙を
読み続け、やっとその中に受け入れられるかもしれない萌芽を
見たと思ったその矢先、自分の知らないところで、愛息の死が
こともあろうに加害者の側からだけから語られる・・・・こんな
理不尽があるでしょうか。

酒鬼クンがどんなに反省しょうと、懺悔しょうと、いいえ自分の命を
捧げようと、手にかけた命は還らないのです。
自分の気持ちを打ち明けて、これからの世の中に何か役立てたいと
本当に思うなら、ご遺族のみなさんのご理解と賛同を得てからに
すべきでしたね。

これが得られないのなら、世間に問うのではなく、研究機関のみに
自らの心境を文章や肉声にして、後世に役立ててもらうべきでした。

この本の上梓には、出版社のあざとい経営戦略がぷんぷん臭ってきます。
酒鬼クンも、もしかしたらこの戦略に嵌ってしまったのかもしれません。

そしてかく言うわたくしも、まんまと嵌って、一抹の後ろめたさを
興味が覆い隠して、この本を手にするところでした。


家人は
「君が買わなくても、これは多くの人が買うよ。きっと。ボクみたいに
普段活字に縁のない人間でも読みたいと思うもの。」と言いますが、
わたくしはやっぱり、買うのはためらいます。



この被害者の女児と男児のお母様とお父様は、それぞれに自署のご本を
出されています。
これは読みました。でも、さすがにすぐには手に出来ず、随分たってから
読みました。
わが子を「殺される」という、想像もつかない理不尽に対して、人間は
どう立ち向かうのかと思っておりましたが、人はそんなに
強くはありませんでした。
そこには理不尽に立ち向かう強い姿ではなく、愛する者を突然に奪われた
怖ろしい暴力の前に、いつまでも立ち直れないままの、哀しい親の
姿があっただけです。


それを読んでいるだけに、酒鬼クンからだけの、一方的心情告白記(読んで
いませんのでそうでないかもしれませんが、今のわたくしにはそうとしか
思えない)を、自分の興味だけで購入しょうとは思えないのです。

わたくしごときが、ここでこんな風に言って、何が変わるなどとは思って
おりませんが、例え日本中のみなさんがこの本を手にしても、わたくしは
すまいと今、決めました。

今朝までは、ためらいだったものが、自分の心境をここに認めていると
はっきりとしてきました。
蟷螂の斧であろうと、ひとりよがりの納得と言われようと、わたくしは
子を亡くした親が、辛いと思うことを自分の楽しみの代償にしょうとは
思いません。

こんなわたくしを、家人は「ややこしい女やな」と、嘆息しながら呟き
ますが、はい。それで結構です。
ややこしくて結構。なんの力にならなくても、効果をえられなくても、
わたくしは、わたくしの様に生きたいのです。

# by sala729 | 2015-06-11 11:54

始めにお断りしておきますが、今回は大いなる「バババカ」ブログです。
それを、飲み込んで読み続けてくださる読者諸兄には、心からの謝辞と
少しばかりの含羞をお伝えしておきたいと思います。

前置きが長いのは、生来の癖であいすみません。

先日の日曜日のことです。
わたくしの住む地域では、春に小学校、幼稚園、保育園、老人会、婦人会
などが対象の、地域「体育協議会」なるものが主宰する「運動会」があります。

ようするに、「○○地域大運動会」と、判りやすく言えば、ソレです。

うちのチビもいつの間にか、小学二年生になり、もちろん参加いたします。
GW前から、毎日、毎日練習に明け暮れ、真っ赤に日焼けして、汗みどろで
帰ってくる毎日だったそうです。
アトピー持ちの彼としては、かなり辛い日々だったようですが、それも
なんとか持ちこたえ、とうとう当日を迎えました。

今回は、なんとクラス対抗リレーのアンカーをおおせつかっているとの
ことで、本人はもとより、親もわたくしも、そして家人もそれはそれは
並々ならぬ意気込みでありました。
(本人からしてみれば、さぞや迷惑なことであったでしょう・・・)

当日、まず徒競走のために、午前9時には小学校に赴いていなければなりません。
ご承知の通り、こういう日は車の乗り入れは禁止されますから、
徒歩でいかなければならないのです。
しかも、この日は真夏日。。。。


行きましたよ。もちろん。近くのスーパーで車を停めてそこから歩きました。
我が家の息子も娘も通った小学校ですからもちろん道は判ります。
両側のおうちの名前も住民さんも、よーく知ってます(関係ないですけど・・)

懐かしい正面玄関を入ると右手がプールです。
グランドでは全員体操が終了間際。どうやらいいタイミングみたいです。

娘も気づいて手をふります。
「八番目やからね。気をつけておかないと、あっと言う間に終わるからね。」

そのアドバイスに従って、ゴール前で待つこと10分。
最初の女の子のグループが終わって、男の子のグループが終わって、ここで
もう20番くらいは終わったんじゃ・・と疑問が湧きます。

家人に至っては、「判らんかった」としおれています。


・・・でも、なんだかおかしい・・・
しっこいわたくしは更に続けてみています。

すると、何番目かはもう判りませんが、うちのチビが二番手で走って
くるではありませんか。
「So!」
娘の声に振り返った家人は、慌ててビデオをセットしますが、時すでに
遅し・・(バカ・・ばか・・・ばか)



チビとは運動会前に話しておりました。
「なかなか、Tに勝てないんやけど、ボクがんばる。」
「そうよ。そのいき。そうやね。そしたらT君に勝ちさえしたら、
何番でも、あーちゃんがご褒美あげる。
もしも、T君が転んでも、あなたが転んでも、ビリでも、T君に
勝ちさえしたら、ご褒美あげるわ。」

・・・・そ、それって、なんか過激なような・・という家人と娘の
つぶやきを無視して、わたくしとチビの約束は成立しました。

ちなみにご褒美は「子供用サングラス」だというのです。



さて、二番でゴールしたチビ。スタートで見ていた婿殿(チビ父)の
言によると、彼はフライング気味にスタートしたのでその分、遅れた
のだそうです。
しかし、約束どおり、二番とはいえ仇敵T君よりは半身早かったのは
わたくしも確認いたしました。

Vサインを残し、わたくしと家人は一旦帰ります。
次のリレーは最後ですからとてもお付き合いは出来ません。

お昼も済ませて、自宅でのんびりしていると娘からの連絡。
真夏日かという昼下がり、家人と二人またもやスーパーから歩きます。
幼稚園や保育園組は、午前で出番が終わったらしく、お昼を食べて
帰宅している親子連れと行き違いました。


到着すると「お楽しみ抽選会」とやらの真っ最中。
30年来変わらぬ役員男性の声がグランドに響いています。
・・・・・・・待つこと30分・・・・・・・孫じゃないと待てないわよ
ねぇと、陽射しの下つぶやく自分がおりました。


いよいよリレーです。
まずは一年生。男女混成チームです。一人グランド半周ですから、
彼らにとってはなかなかの距離かと思います。

チビは二年生ですから、もうスタンバイはしています。
わたくしはゴール目の前で見ていますので、現在彼は一番遠いところに
おります。

心なしか妙に落ち着いて大人びて見えるのは、ババの欲目という
やつでしょうか。・・・・・んだと、娘は相槌打ちますが・・・・

スタートのピストルの合図は心を引き裂きます。(・・そんな繊細な
心だった?と、聞き返す家人にアッパーカット!!)

二番目か三番目かというところで第二走者にバトンたっち。二番手は
そのままの順位で三番手に。


この三番手のH奈ちゃんが速かった。後で聞けばこのH奈ちゃん・・
昨年度の校内マラソンを制している実力者なのだそうです。
難しいコーナーでするすると抜け出し、一番手でチビにバトンタッチ。

そこでポロリ・・と、いうこともなく、受け取ったチビの今までに
見たこともない真剣な表情。まっすぐ前を見て思い切り走っている
ようです。
二番手でバトンタッチされて抜くよりも、一番手で渡されるほうが
もっと追い風力がつくというのが、我が家の家風です(どんな家風や??)
ぐいぐい距離を離して、なんとぶっちぎりのゴールイン。

いやぁ~興奮しましたねぇ。
それはわたくしだけではなかったようで、ビデオを構えていたはずの
家人はわたくしの隣で「So!So!so!」(なんだか、SOSみたい
ですが・・笑)と、絶叫。
隣の奥様方が苦笑いで見つめていることにも全く気づいてないようです。

娘もビデオ持っていましたが、そんなの覗いていられないと、もう絶叫!
あの、鉄仮面と呼ばれている(いや、わたくしが呼んでいるのですが)
婿殿でさえ、興奮気味です。

廻りのお母様方からも、速かったわねぇと言われて、わが事以上に嬉しい。

特にわたくしはここでも何度も披瀝しておりますように、運動会といえば
これっぽっちもいい思い出のない「超ウンチ」であります。
亡夫も、長距離はそこそこでしたが、短距離はさっぱり。息子も娘も
陸上とは無縁でした。
婿殿家系も、似たり寄ったり・・・。日頃、Soは自分の遺伝子継いだと
訳のわからぬこと言っている家人にしても、リレーとは無縁。

どこでどう間違えたか、この快挙。

もちろん、その日のうちに、お約束の子供サングラス買いに行きました。
「あーちゃんは約束守る女」(これ、ちびに対する私のデンモンストレーション
です。笑)ですから、当然です。

そのサングラス・・1000円だったことは、ご愛嬌でした。(^^)

# by sala729 | 2015-05-19 14:28

ほぼ20年ぶりに、燕さんたちが我が家に帰ってきました。
もちろん、当時の彼らではないでしょうが、当時と全く同じ場所に
巣作りをしはじめました。

これを見て一番喜んだのは、家人です。
彼にとっては初体験・・・。それはもう、誰よりもそわそわと
何度も見に降りては、戻りを繰り返し、わたくしが
「巣が落ちちゃったら可哀想だから下に受け皿作ってやらんとね。」と
言うと、あろうことか巣作りの真っ最中に脚立を取り出して、なにやら
ごそごそと動き回ります。

「何やってんのよ。それは巣ができてからよ。」と、わたくしが
声をかけでも、「いや、ネットで調べたら、天井から15センチのところに
巣作りするっていうから、このあたりに受け皿してやってたら、丁度いい」と
聞く耳を持ちません。



・・・・そりゃあ、燕夫婦も、危機感持ちますよ。
こう何度も見に来られて、しかも巣づくりの土台を作りかけたら、いつの間にか
下に受け台なんかができて・・・不審・・と、思われても仕方ありません。

15センチなんて、ネットすずめの噂話で、どんなに気を回してあげても
燕は燕の論理と生活体系で動きます。
人間の「お心遣い」など、なんの必要もありません。
それどころか、まさしくこれこそ「余計なお世話」です。


案の定、燕夫婦はその場の「巣作り」を中止しました。



家人の落胆は、それはもう見るに気の毒・・なわけありませんっ!
人がやめろと言っているのに、ネット雀に踊らされて、いらんお世話の
大安売りの結果がこれです。

ふつーに考えて、巣作りの真っ最中に脚立立てられて、柱に受け台なんて
作られたら、燕からしたら警戒情報!まっ赤、赤でしょ。

「こーへんようになった。」軽い関西弁までも、腹だたしく響きます。

「あなたのせいよ。どうしてくれるの。」
相手が落ち込んでいるからといって、同情するような私達の関係ではありません。
(そうだよね。むしろ余計責め立てるよね。と懲りない家人の独り言です)


「どーしてくれるって・・・どうしたら燕さん帰ってくれる?」

・・・・・・・ばしっ!!!

なに可愛い子ぶってるのよ。自分のした始末は、自分でつけなさいよ。
散々罵詈雑言を浴びせかけ、怒れる自らを落ち着かせようと、わたくしは
リビングに戻って、友人娘から送られて来たハーブティーを楽しむ
ことにしました。


そして一時間後・・・・

「おおっ・・・・」
凝りもせずに、庭先を見つめていた家人が、感嘆の言葉をしっかり口の
中に納めて、リビングにやってきました。

「見て。見てよ。見て、見て」
まるで、ちびの「ボク見て見て」口撃のようです。

「なによ。」


不承不承、階下に下りて・・・

「おおぉぉ・・・」
思わずわたくしも声が漏れました。

なんと、件の燕夫婦(状況からしてたぶん同じだと思います。顔の分別が
つきませんが・・・)が、隣の柱に巣作りを初めているではありませんか。

もうだいぶ、土泥を塗りたくり土台を作っていました。



「もう、余計な手出ししないでよ。自然は自然に任せよ。所詮、
ネットでは、自然の営みのホントは判んないだから。」

ひたすら、相槌をうち続ける家人。

リビングに戻るわたくしを尻目に、今度は1階の部屋からそっと
外を窺っておりました。



それでも、家に人がいたら作りにくかろうと、その日、わたくしたちは
たいした用事もないのに、一日自宅を空けて、夕方帰宅しました。

土台づくりは順調のようです。



一夜明けて、もうだいぶ慣れたのか、燕夫婦は、わたくしたちが外にいても
せっせと藁や泥を運んできます。

こうして巣づくりをして、卵を産んで孵して育てて、また季節になったら
帰っていくのですね。

ふと、古代ローマの哲学者、セネカの言葉を思い出しました。

「人生は短くなどない。与えられた時間の大半を我々が無駄遣いしているに
すぎない。」

せめて、ひと時は、この言葉を噛み締めて生きたいと思います。

# by sala729 | 2015-04-27 15:02