暑い日々が続いています。きのうも、今日も、太陽は容赦なく地上を照らし、連日のニュースで「水不足」と「熱射病」が、知らされない日はありません。
そして、同時に「水難事故」の知らせも・・・

中川さん(34才・仮名)は、緊急救命士です。と、いうとテレビドラマのような颯爽とした人を、誰もが想像するのでしょうけれど、そーはいかない(苦笑)と、いうのを私は、経験則で知っています。(^^)
初対面では、ちょっとひきましたね(笑)。胸をはだけたポロシャツから見える、銀色のふっとい鎖の、ネックレスと、白黒格子柄の綿パンツに、ベンハーサンダル。しかも、左手には、明らかに偽物と判る、金無垢風の腕時計。パンパンに張った黒皮のセカンドバッグ。誰がこの格好を見て、彼が緊急救命士と、思うでしょうか。。。

「妻が・・・妻が、浮気をしているかもしれません・・」
搾り出すような中川さんの姿に、外見にはない誠実さ(・・すみません。しょーじきもので・・)が、漂っていました。
話を促すと、中川さんは、ぽつりぽつりと話はじめました。

妻のあさみさん(32才・仮名)は、看護士です。ふたりはまさに「似合いの夫婦」であったわけです。。ほんの三ヶ月ほど前までは・・。
あさみさんの帰宅に変化が現れたのはつい三ヶ月ほど前からです。
最初は、職場で主任になったあさみさんは、「立場上、部下の子の愚痴を聞かないといけないので、遅くなる」と、言っていました。
そういって、子供が眠りについたころでかけて、翌日の早朝に帰ってきました。

おいおい・・ふつうそんな時間までの相談なんて・・ありえない・・・
と、たいていの人は、思いますよね。
ところが、中川さんは、そういう妻をねぎらいながら、少し誇らしくもあったらしいのです。
「うちの嫁さんは、人からこんなに頼りにされてる・・」と・・。

しかし、この暗黙の了承は、あさみさんをますます大胆にして、それはもう毎日のように、帰宅は午前5時前後です。
問い詰めても、なかなか口を割りません。
そして、はじめに赦した手前、中川さんは問い詰められなくなった・・というのです。・・・んなばかな・・・と、皆さんは思われるかもしれませんが、こういうことはよくあるのです。
「物分りのいい人」を演じると、その仮面が脱げなくなるのです。
自分がどんなにつらくても、苦しくても、いい人を演じ続けることをやめられなくなるのです。

自問自答を続けること三ヶ月。
とうとう中川さんは、相談電話をかけてきました。彼は、その異様な風体を気にすることもなく、
小さな、パンやさんの喫茶コーナーの一隅で目を潤ませながら「別れたくはないのです。子供のためにも、離婚はしません。でも、相手は知りたいんです。」と、私に迫ります。
状況的には、まず間違いなく短時間でけりがつくでしょう。。。
しかし、この一途さ・・この一途さは・・ちょっと危険かも・・・

そして、その日を迎えました。
中川さんからは5分おきに、状況報告の電話がはいります。
・・・・私は、たまりかねて・・・
「中川さん、もう報告は結構ですよ。うちは充分に注意してスタンバイしています。あなたが奥様の目を盗んで、何度もこうしてお電話していることは危険です。奥様に気づかれたら、どうしますか?。あとはお任せください。てすから、もうご連絡は結構です。私どもには、状況きちんと把握できています。」
「すみません。わかりました・・」と、沈んだ声。

彼はいまから、業務に就くのです。かれの「緊急救命士」という職業を考えたとき、この落ち着かない性格は・・・日本国民として、ちょっと不安です。。。

あさみさんは、夜になって、単身で山間の村にむかって車を走らせます。
そして、そこは、・・・・・あさみさんの同僚男性の実家だったのです。
男は、20少し出たくらいの若い見習い看護士でした。
あさみさんは、そこで男の親の了解のもと、一晩あかして、それから中川さんと子供の待つ家に帰る・・・・そんな生活を三ヶ月続けていたのです。

「別れます。もう、わかれますっ。」
・・・・・・あなた、別れないって言ったんじゃないの?。子供のために別れないって・・・まぁいいけど・・・ね。・・・・・(はっきりしないわよね・・・)
「こ、子供の親権は、とれますかね?」と、中川さんの心配気な声は続きます。
「それなら、もう一回くらいは、現場押さえておきましょう。」と、三日後にあともう一回続けることになりました。

その日から、毎夜毎夜、中川さんから電話が入ります。
「僕はいつまで待たんといかんのてすか?。いつになったら、あいつらに言えるんですか?」

いーですよ。言いたけりゃ言っても全然かまいません。でも、あと一回は、もう取れませんよ。
判っちゃって、それでも行動する「お馬鹿さん」は、まずいませんからね。。。

そういうと、中川さんは悲しそうな声で「はい。判りました。僕、がまんします・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいんです。いいんですよ。こういう気弱な男性もいるでしょう・・・・・・・・
でも、でもですね。彼は仮にも「緊急救命士」なんですよ。とっさの緊急時に人の生死を判断し、
対処していく決断力と、行動力を即座に展開していかなければならない職業ですよ・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいの???。ほんとに、あなたに命任せていいの???・・・・・・・・・・・

私の気持ちも心配も知らず、中川さんは今夜も電話をかけてくるでしょう。
「すみません。落ち着かなくて・・・くやしくて、僕、相手から二千万は三千万取りたいです」

はいはい・・・どーぞ。二千万でも三千万でも取ってください。
だから、お願い。あなたの使命に目覚めて!(溜息)
あさみさんのことは、私たちがちゃんとしてあげる。だから、あなたは、あなたの使命に目覚めて・・・と、記憶を失った「ウルトラマン」に呼びかけているような、そんな自分の声が聞こえるような・・・今夜も暑くなりそうです。。。
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by sala729 | 2005-06-27 18:16