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中澤まなかさんの居場所が判りましたという第一報は、週末の帰社寸前にもたらされました。
彼女はここから遠く離れた、おそらく今までのまなかさんとはなんの交わりもない街の片隅の
プレハブのアパートの一室に、女性と一緒に住んでいた。
これが第一報でした。

交際していた、下平直人との交際を母親の小夜子さんに反対され引き裂かれ、捜しても、捜しても見つからなかった彼女の足跡にやっと追いついた・・と、いうことです。

もちろん、小夜子さんには第一報をいれています。
嗚咽でとぎれとぎれの声で何度も「ありがとうこざいます」を繰り返す小夜子さんに、調査はまだ
終わっていないと告げて、その後の情報をまちました。
そのまま、まなかさんを迎えにいって引き連れて帰るのがよいか、曲がりなりにも仕事をしている彼女の様子をもう少し確認したほうがよいかということになって、後者の判断になりました。


そして、二日たって、いろいろな事実が判明してきました。
まなかさんと一緒の女性は、崎田和子・・・姓は違いますが、まなかさんの交際相手、下平直人の実母でした。

姑のお金を取って、男と逃げたと彼が嘯いていた実母と、まなかさんはこうして一緒に暮らしているという事実・・・・・。
これがすべて発端でした。

まなかさんは派遣会社に登録して、近くの電子部品の工場に勤めています。
8時前に、近くのコンビニに、和子と行くとそこに工場のマイクロバスが来ます。
二人をひろって、バスはそのまま工場の通用門をくぐっていきます。
17時半になると再びバスがでて、同じコンビニで二人を降ろします。
二人はその店で弁当を買い、そのままアパートに帰ります。
そんな生活を繰り返していることが判りました。
和子は、大声で笑いながら、まなかさんに話しかけるシーンも何度かありましたが、彼女は
表情に乏しい顔をして頷いたり、聞こえぬふりしてたりするだけで、笑って返すところは見たことがないと担当調査員がつぶやいています。


でも、なぜここに下平の姿がないのか・・・
近くの駐車場には彼の車が停められていることも確認しています。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なぜだ??

さらに調査は進みます。

そして、判ったことは、衝撃的でした。
下平は、「服役中」だったのです。。。。。


この事実は小夜子さんを打ちのめしました。
まなかさんの様子を写した数枚の写真・・・一枚一枚と手にとり潤んだ目で見つめていた小夜子さんが、突然
「ひいぃ~」と、声をあげたまま硬直してしまいました。
それは、コンビニの一隅で、いわゆる「ウンコ座り」をして、背中を丸出しにしたまなかさんがタバコをゆっくりとくゆらせている一枚の写真でした。

長い時間、小夜子さんはその写真を待ったまま、口を開きませんでした。
唇がわなわなと震え、言葉を探しているのでしょうがそれが見つからず、途方に暮れている・・
そんなかんじがしました。


ようやく・・・
「前にいただいた写真をお姉ちゃんに見せたら、この娘ヤンキーになっとるなっなって言われました。・・・・でもね。でも、Aさん、それでも私、まなかが可愛いんです。親ばかと言われても
まなかが可愛くて、可愛くて仕方ないんです。。。。」
落ちる涙を拭おうともせず、小夜子さんは訴えます。

「私、下平君とのこと、彼が真面目に仕事さえしてるなら、いやだけど半分くらいは、いえ6割くらいは認めようと思ってました。
でも、でも、今はもうだめです。服役なんて・・・・・そんな怖ろしいこと考えたこともありませんでした。認めることなんて絶対にできません。」

それはそうでしょう。。。娘の結婚相手が「前科持ち」になって、それでも結婚を許す親はいないでしょう。
下平の罪状がなんであるかは今はまだ判りませんが、何ヶ月かは服役することは確認済みです。初犯ならば、実刑は免れるはずですから、再犯であることは間違いないでしょう。
もともと、彼は何度も少年院や鑑別所にはお世話になっとると嘯いていましたから、それは満更
ハッタリではなかった・・と、言うことでしょうね。


小夜子さんは早々にまなかさんを連れ戻しに行くことになりました。
もちろん、こちらからはN係長が同伴します。
現地では、二人を引き合わせる準備にとりかかりました。

いろいろな場合を想定して、小夜子さんにも考えをまとめておいて欲しい旨は伝えています。

まなかさんが帰らないと言い張ったとき・・・・
そのまま素直であっても、不承不承であっても帰るといったとき・・・・・
もちろん、下平とはこちらで話をしないとならないでしょう。
私たちの取材に嘘をついていたこと。
今回の服役についてのこと。
まなかさんとの今後についてのこと。。。。


でも、まなかさんの生気の感じられないこの写真の瞳を見ていると、彼女が決してこの環境に満足しているとは思えません。
もともと、福祉の仕事に自己を捧げたいとの志を持ち続けていた人です。
それが、流れ作業の工場勤務で一日が終わり、親をも捨てて飛び込んだ愛する人とは一緒に暮らせず、その母という人と狭い1DKでの生活・・・・・
これで、不満や失望が溜まらぬはずがありません。


あとは、小夜子さんにかかっています。
私たちは、あらゆるシーンを想定して、できる限りのサポートをしますが、まなかさんが小夜子さんの胸の中に帰ってくるかどうかは、小夜子さん次第です。

小夜子さんとまなかさんが少しでも、たった一歩でもいいから、歩み寄れますように・・・と、祈らずにはおれません。

by sala729 | 2007-10-24 11:27

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