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奥さんに家出された中野さんのご依頼は、お母様も立会いのもとお受けすることになりました。曼受紗華の咲き乱れる崖っぷちの道を登りつめて、小川の反対側に数件ならんだ古い平屋のお宅の玄関先で、彼は私をまっていました。

お母様は、60代後半ということでしたが、介護の仕事をしているとかで、きりりとした印象で、落ち着いた話し振りをされる方でした。
「なっちゃんには苦労かけました。私にはそれがよーく判っているんです。だからなんとかあのこを探してやりたいんです。」そういって目頭を押さえる姿にも心打たれるものがありました。

お二人を前に契約書を交わし、費用のことになると、中野さんは改まった表情で私に向き直りました。
「じつは、Aさん、我が家には金がありません。」

「は??」(ないって言われても・・・・)

「それで、今から金策に走りますので、一週間ばかり待ってくれませんか?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーむ。。。
これは、私の一存でき決められません。
しかし・・・・失礼ながら、お母様まで同席しておきながら、今さら金策に・・・とは(溜息)


Oリーダーに状況を説明して、了承を得てから、支払日を伸ばすことになりました。

でも、調査は始めます。家出の場合は特にそうですが、早いほど情報は生かされていますので
早ければ、早いほど結果がでるのも早いです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一週間たちました・・・

それまで、こんな情報があった。こんな話を思い出したと、連日情報をあげてきた中野さんからの連絡がパタッととまりました。
しかし、その日のご入金はありませんでした。

翌朝、私の携帯がなります。
「中野の母ですが・・・」
中野さんの携帯からですし、お母様ということは判りました。

「あのう、Aさん、誠に申し訳ないんですが、お金ができません。銀行にも断られました。いま、
あの子はまだほうぼう工面しておりますので、もう少し、お手間とらせますが、お待ちいただけませんか?」
「それは、仕方のないことですが、ご契約者は中野さんですので、申し訳ありませんがご本人さんから、ご連絡いただけまんでしょうか?。お母様ということはよく存じ上げております。でも、
これは契約ですから、しかも中野さんはご立派な男性ですから、代わりにお母様が・・というわけにはいかないと思いますが、?」

「はい。そうですね。その通りです。」

電話を切って2分後、中野さんから携帯でかかってきました。
ということは、すぐそばにいたんじゃないの・・・・・(--;)
「すみません。いろいろ工面してるんですが、なんともならんのですよ。もうちょっと待ってください。」
「どうしてもできないというのを、無理やりというわけにはいかないでしょうけど、こちらも会社ですので、ではいつなら大丈夫か目安を決めていだけませんか?」
「・・・え、ええ。じゃ、来週の火曜日に・・・」
「判りました。それと、ご連絡は中野さんご本人がくださいね。」
「はい。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そして、火曜日・・・

またまた早朝に携帯がなりました。
「中野です。あのぉAさん・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・この声はまたしても、お母様です・・・・
・・・・・・・・・・ぶちっ!・・・・

「やっぱり、無理です。今日もあちこち金策に走っとりますけど、なかなか上手くいかないんです。」
「前回、私のお話したことは、お忘れですか?
ご本人から連絡いただきたいと申したはずですが・・・」

「いゃあ、それがですね。男ですから、なんとも言うのが・・・言うに言えないんですよ。そこのところをなんとか斟酌してやっていただけませんかねぇ。」
凛としていたはずのお母様の声が、急に下卑た響きに聞こえるような気がしてきました。
「男の意地というものですか?・・・・でも、それは違うものじゃありませんか?
大人の男性がご自分の意志で決めたことです。何かあったらご自分で連絡するのが筋じゃないかと思うんですけど。」
「そりゃそうです。だけど、男ですからねぇ。そう何度も何度も、金がないとはよう言いませんよ。
そこらあたりは、ねぇ。」

・・・・なにが、ねぇ。なのよっ!・・・・自分のしたことの責任は自分がとる・・・こんなことくらい
小学生でも知ってます。

それにしても、言いにくいことや、できないことを「おかーちゃん」に言ってもらうなんて、高校生を筆頭に三人の子をもつ父親のやることじゃないでしょ????
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
このまま奈津子さんが帰らなくても、それはそれで仕方がないかもしれないと、そう思い至る
自分の心を制することができませんでした。

「契約した以上、お金を払っていただくのは、当然ですし、それができないならできないと契約者ご自身がお知らせくださるのが当然と私は思いますが。
できないなら、なおさらご自身で説明なさるのが本当でしょう?
お母様がご連絡してくださらないなら結構です。わたくしがしますから。」

「いや・・いや、今は仕事中で・・。あ、私が、私がしておきますから。すぐにするようにと。」

あわてて制するお母様の声が上ずっているのは、息子が不憫だからでしょうか・・・・。

「遅くなっても、早朝でも結構です。必ずご連絡ください。」というと、はいはいと繰り返し、お母様は電話を切りました。

でも・・・・・いまだ電話はかかっておりません・・・・(--;)

by sala729 | 2007-10-17 15:51

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