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先月、幼いふたりの子供を残して、家出した武原麻衣子さんは、クリスマスも終わって、世間が
年末年始の用意に本腰をいれたころ見つかりました。
相手のヒロトの借りたマンスリーマンションで、ささやかなふたりだけの生活を送っているところを確認した調査班からの連絡をうけて、もちろんすぐにご主人に連絡をいれました。

夫は生真面目な声で、今からすぐ迎えに行くというのを、ヒロトが仕事から帰って、ふたり一緒のところに踏み込みましょうと、そのための指示が調査に飛び交います。
そんな緊迫した中で、夫は
「妻の両親が、県外に仕事で出ているんです。明日にできませんか?」やら
「妻の姉夫婦がこちらに向かっているんですが、少し遅くなってもいいでしょうか?」とか
「うちの父親の仕事が、どんなに速く片付けても、間に合いそうにないんです。どーしたらいいでしょうか?」

などと、N係長が聞けば ぶちぎれる!(^^;) よーなことを次々と言って来ます。


確かに家出人がみつかったら、家族で迎えに行くことはお薦めしています。
て゜も、妻の両親やら姉夫婦やら、自分の父親やら・・・次々と出てくるこの縁者たちは・・・・
そういえば面談のときも、この人、親戚縁者が揃っていたような・・・。

親戚の誰がこなくても、夫たる自分がいればいいと、なぜ腹を括れない?と、言いたいのを
ぐっと押さえて、
「ご主人がこられればいいじゃないですか?。なにも皆さんおそろいを待つことはないでしょう?
あなたの奥様ですよ。」



と、まぁ、いろいろな雑事があって、とうとう武原さんは麻衣子さんと対面しました。
呆然とする麻衣子さんと不貞腐れるヒロト。
聞けばヒロトも結婚していたのを麻衣子さんと不倫して、離婚したのだと言います。
「なぁ、帰ろう。子供たちも待つとるんや。」
夫の言葉に、両手で耳を塞ぐ麻衣子さん・・・・。
傍らでは、ヒロトを相手にOH氏が、話をつけています。

そうこうしているところに、トントンとノックの音・・・
現れたのは麻衣子さんの父と母です。
仕事を早々と終えて駆けつけてきたのでしょう。
麻衣子さんをみて、安堵の溜息をもらします。そして、どこえやらに電話を入れています。

「はよう、帰らにゃあいけんよ。」母は泣きながら、麻衣子さんの背中を撫で始め、父は無言のまま見つめています。

すると・・・またトントン・・・
麻衣子さんの長姉夫婦です。
「なんしてこんなところに・・・」言ったまま、長姉は絶句しています。その隣には幼稚園児と思われる子供がふたり。
そして、頭にねじったタオルで鉢巻をしめた義兄。

続いて、またまたトントン・・・・
「こげなところに、よーおったなぁ」
なんだか呑気に聞こえる大きな声は、次姉の夫です。

そしてまた・・・・ ふうぅぅ・・

結局、一族郎党総勢14人・・・。次々と携帯で、親戚を呼び出しては集まってくるのです。

しかも、夫の説得になかなか首を縦に振らない麻衣子さんに業を煮やして、こともあろうに
「子供を呼んで来い。子供がきたら、気が変わるやろ」なんて無責任なことまで言い出す始末で
嫁側の親戚に遠慮してか何も言わない夫に代わって、それはOH氏が一喝しました。

「こんなところに、年端もいかない子供を呼んでどうする。こんな様を見せたら、子供にどんな
影響残すか考えてみなさいっ!」


と、なんだかだのドタバタも、時間の経ん過と共に少しづつ収まってきて、なんとか帰ると言った麻衣子さんを自分の車に乗せて、夫は出発しました。そしてそのあとに続く、数台の親戚車。

ところが、国道の大きな較差点に入って、右折しょうとした夫が、あまりの緊張のためか
突然、過換気症候群の発作にみまわれたのでした。
交差点で立ち往生の車と、けたたましくサイレンを鳴らす救急車・・・まわりは騒然としています。




「麻衣子は、ぼくのこと、ぼんやり見てました。ぼくの処置が終わっても、ぼんやりしていて、
お義母さんに声かけられてようやく立ち上がったくらいです。
子供の顔みて、泣いていましたけど、これで帰ってくるでしょうか?」
・・・・・引き合わせ時の顛末は調査から聞いていましたが、その後の救急車騒ぎは、翌日の夫からの電話で知りました(^^;)

「それにしても、14人さんとは・・・。親戚ご一同さまですね。これだけに囲まれては、彼女も
話すことはできなかったでしょうね。」
「そーですか。やっぱり。でも、みんな心配していて、それを止めることができなかったんです。」
「それにしても、そういう周りから、異口同音に責められ、問い詰められる麻衣子さんのお気持ちを考えたことがありますか?
そりゃあ、家を出たのは麻衣子さんが悪いですよ。でも、その麻衣子さんを受け入れることを決めたのはあなたですからね。それならそれで、麻衣子さんを守ってあげなくっちゃあいけないでしょう?」

「そうですね。・・・でも、ぼく、処置が終わったばかりでまだ体調も完全でないし・・・」

夫は生真面目で、誠実かもしれませんが、勇気と度量はなさそうです。

「で、いま彼女は?」
「実家にいます。お義父さんがしばらく預かったほうがいいじゃろうと・・」
「そうですか。」
夫婦で話し合ったほうがいいのか、すこしはなれた方がいいのかは、場合によります。
一概には言えませんが、ただこの夫婦には、ふたりだけの話し合いの場が少なすぎるような気
はします。



そして、年もあけてしばらくして・・・

「Aさん。ぼくらはもうだめです。麻衣子は、離婚してくれ言い寄ります。子供もいらんと・・」
夫はなきじゃくっています。
(じつは、私、泣きじゃくる男は 大ッキライ なんです・・・・・。
「あなた、麻衣子さんと話し合いされました?」
「話し合いもなにも、ぼくとは話、しとうないって・・・。あの男のところに行きたいというてます。」

聞けば、ずっと麻衣子さんは実家にいて、実姉たちとはいろいろ話をしていたと言うのです。
はじめは、「すまん、すまん」と、言っていた義父も、最近は何も言わなくなったと言います。

どんな話になったかは判りませんが、夫の知らないところで、麻衣子さんの意志が確かめられ
告げられているようです。


それにしても、「子供はいらん」なんて、そんなことを言えるのでしょうか?
いつかもしも、子供たちがそのことを知ったら、どんな傷つくことでしょう・・・・
父に捨てられても、母に捨てられても、苦労の重さは同じかもしれませんが、哀しみの深さは
違うような気がすると思うのは、私が「意味のない母性信仰」を持っているからでしょうか?

その人は母にあらず・・・・なんと淋しいタイトルでしょう・・・・。

by sala729 | 2007-01-11 16:41

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