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日曜日に、、海辺の「オーベルジュ」に泊まって、潮騒を聞きながら、なーんにもない時間を、楽しんできました。
瀬戸内海に突き出た、ガラス張りの目の前は、雨にくもった水平線が広がり、定期航路のフェリーや、場違いに大きなタンカーが、のっそりと行き交う景色は、なかなかのものです。
夕食は、たっぷり時間をかけて、フランス料理を堪能して、夜はお友達夫婦も招いて、話し込んでいるうちに、時間はとっぷり暮れて、「なーんにもしない時間」も、楽しいままに過ごしていると
こんなに早いんだということに、改めて気づきました。


翌日の朝は、テラスで、ゆったりとカフェオレとパン。自家製のジャムや蜂蜜を弄びながら、ヨーグルトと、山盛りの果物で、なんだか、海外にいるような、そんな気分です。
オーナーのお話によると「別荘感覚」で使って欲しいとのことで、ひろーいお部屋も、家具の全てが外国製品で、これは「お薦めプライベートタイム」です。
・・・・ちなみに、食事のサービスにもフランス人の綺麗な女の子が付きますし、会計レシートも
全て英文でした・・・(^^;)

まとめてお休みを取る・・ということが殆どないものですから、近場でこーいう楽しみ方をするのが、私の「バカンス」なのですが、こちらのオーナーに言わせれば、それこそが「一番贅沢な
楽しみ方」なのだそーです(近場で泊まる人なんて・・いないと、言うことらしいです・・苦笑)


そんなこんなで、優雅な朝食を終えて、そのまま出社したのですが、席を温める間もなく
相談電話が入りそのまま、相談者さんのお宅に・・・。

新幹線を降りたら、H氏が車で待っていてくれることになっていますので、改札を抜けると、
車を捜します。。。すると・・ えっ! な、なんと・・助手席に女性が・・・。

しかも、その女性は、私に向かってにこやかに微笑み、手を振っているてはありませんか・・。
うっぅぅ・・・こ、これは、H氏の奥様にこの状況を知られたら・・と、思わず周囲を見回しました。

恐る恐る近づくと、 ぬぁ~んとっ ・・・・・「Eちゃん~~」

そーなんです。かって同僚として机を並べていた、Eちゃんがにこやかに手を振っています。
もちろん、H氏にとってもかっての、同僚であるわけなんですけど・・(笑)
たまたま、ふたりが出逢って、今から私が来ると聞いて、待っていてくれたらしいのです。
「やれやれ・・」と、気付かれぬようにほっと胸を撫で下ろす私・・(^^;;)

久しぶりの再会に、近況を語り合い、次の約束をして別れたのですが、結婚退職した彼女は
只今、不妊治療の真っ最中とか・・・。
決して、早い結婚ではありませんでしたから、当初から子供は欲しいと熱望していました。
でも、話に聞けば不妊治療というものは、それは苛酷なもので、経済的負担も並大抵のもの
ではないとか・・・。


心なしか少し痩せたように見える面差しから判断するのも早計でしょうが、「子供は神様からの授かりもの。育てたらお返しする」なんて、子育てが終わったからといって嘯いていた私の周りにも、こうして不妊に悩み傷つき、日々苦しんでいる人がいることを実感すると、自分の態度の
不遜さに、恥じ入るばかりです。
「Eちゃんに、幸いあれ」と、心から祈ります。。


ま、そんなこんなあって・・・
辿り着いたのが、小ぶりですが、モダンな黒いドアが印象的な、川原さん(79才・仮名)のお宅です。
対峙するリビングは、整理整頓がされてちょっと部屋全体が暗いのを除くと、なかなかこぎれいに生活されているのが窺えます。

「妻が・・昨日から家出したんですわ。」
・・・この年代で、妻と呼ぶのも、なかなかシャレてます。

見せてもらった「書置き」は新聞広告の裏とはいえ、流れるような達筆で、半紙に書けば、水茎も鮮やかな・・と、表現できそうな字でした。ただその内容は・・・

゛口を開けば、金返せばかり・・貴男のような男とはもう暮らせません。
 私のことは捜さないでください。
 私の親族になにかしたら、私もただでは済ませませんよ。
 老人会や、寿会。テニス、カラオケ・・あなたの交際範囲はみな知ってます。
 ばらしてもいいんですよ。‘‘


これって・・・(^^;)(^^;)
この奥さん、リリ子さん(66才・仮名)と、言います。華やかな印象のなかなかの美人です。
川原さんとは結婚三年目。彼の預貯金の全てを解約して家を出ています。
そもそも、ふたりの出会いというのも・・・・

10年前に前妻と別れた川原さんは、淋しさのあまり、結婚相談所の門を叩こうと、やってきたましたがその入り口で、遭遇したのがリリ子さんでした。
意気投合した二人は、そのまま外で話し込み、気がついたら20万を無心したリリ子さんを自宅の近くまで送ってあげていたそうです。
その20万の返済の連絡もなく、やっと自宅を捜し歩いてたどりついたものの、ブザー押しただけでなにも言えずに帰った川原さんのもとに、リリ子さんから家財道具が送りつけられました。
そして、リリ子さん自身も、婚姻届を持ってやってきました。

川原さんは有頂天で、この申し出を受け入れ、二人が結婚生活を始めたのが三年前です。
ところが、結婚してからの彼女の態度は一変しました。
川原さんが近寄ると、臭い。きたない。近寄るなと避け、食事は別々。もちろん夫婦生活もありません。そして、二言目には、「夫婦なんだからお金は私に管理させて」と迫ります。

運悪く(?)川原さんは彼女に「ベタ惚れ」状態でした。
美貌で、教養も感じられ、過去には華麗な経歴があるようなことも仄めかしているりり子さんに
心底、惚れ抜いていたと言います。
そして・・・とうとう、定期預金証書。権利書などを入れた金庫の鍵を、彼女に預けました。
そのやさき・・・・の、家出です。

そして残されたのは残高0の、通帳が数冊と、前述の書置き・・・だったのです。


「わしゃ、バカですよ。判っとんです。そいでも・・・惚れとったんですなぁ・・」
他人事のように言いながら、川原さんはのんびりと言います。
そして、話をしている間にも、何回か電話が鳴り、明日のテニスの予定や、老人会の相談をしています。
なにか、時間に余裕のある様子は、感じられます。

「ほら、見てください」
開け放した次の間にはがらんとした部屋に、絨毯だけが冷たく敷かれています。
「ここに置いとった箪笥や、テーブルなんかはみーんな持って行きよりました。ほら、あの電話もそうです。ないと困るんで、今は納屋から前の電話持ってきたんです。植木鉢の花も、洗濯ハサミも持っていきよりましたわ。」
淋しげに川原さんは笑いますが・・・・これはどうみても「作為的」です。
計画された「悪意」があるのは誰の目にも明らかです。

でも、リリ子さんに惚れ抜いている川原さんには、「捜す」ことしか方法がないのです。
この方法を取るにしても、根こそぎ財産を持ち出された川原さんに、なんのなす術があるでしょう。。
どこかで、密やかに・・もしくは高らかにかもしれませんが、笑い続けている、リリ子さん。
あなたは「毒の花」です。
もう充分に養分の補給はしたではありませんか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・秘やか咲き続けることを黙認しますが、もう世に出るのはおやめなさい。

ひっそりと、つつましく、枯れるを待つがいいです。
そんな花こそが、本当に愛でられるというものですよ。



 
 

by sala729 | 2006-07-25 14:23

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