どこまでも不幸
2006年 05月 05日
世はまさにGW真っ最中というのに、相談電話を受けて、今対峙している素子さん(32才・仮名)はずっと俯いたまま、なかなか口を開こうとしません。
誰もいない、社内でこの沈黙は・・・ちょっとキツイです。
「兄が・・兄が一ヶ月前から、いなくなりました。」
やっと顔を上げての第一声は搾り出すような声でした。
「お兄様はおいくつですか?」
やっと話のトバ口を見つけて、質問すると、それを契機に素子さんの口は開いていくようでした。
兄の武生さんは38才。大手の食品メーカーの製造部門にもう20年から勤務していました。
そこに、6年ほど前から、中国の研修生といわれる女子工員たちが、定期的に送られてくるようになり、武生さんはその指導係をしていました。
常時20人くらいの女子工員たちはみな20才前後で、優しい性格の武生さんは彼女らに慕われていたそうです。もともと、武生さんは、穏かで親孝行、大きな声をあげるタイプではありませんでしたから、それも当然のことではあったのでしょう。
武生さんと素子さんにはもうひとり兄がおりましたが、その兄が事故で一昨年急死すると、実家の畑仕事が武生さんひとりの肩にかかるようになりました。
兄妹の母は7年前に亡くなり、気難しい父と、長男、武生さんとの間に入って、そのころ結納まで済ませていた素子さんですが、そのまま嫁ぐことはできませんでした。
素子さんの危惧はそのまま的中し、長男と父、武生さんと父はも事あるごとに対立し、間に入った素子さんはハラハラとしどおしでした。
もともと、優しい武生さんでしたが、さすがに父に大声で「バカ」だとか「たわけ!」などと無能呼ばわりされると、一緒の畑仕事は辛かったようです。
そんなときに知り合ったのが、中国人女工の麗華(20才・仮名)です。
武生さんはこっそり実家に麗華を連れてきて、素子さんに紹介しました。
小さな危惧を抱きながらも、内気な兄がはじめて連れてきた麗華を暖かく迎えようと思ったものの、その頃武生さんはサラ金から小さな借金を繰り返していました。
時折かかる催促電話や、ダイレクトメールを父に見つからないように、処分して、自分の貯金から何度か支払っていた素子さんでしたが、麗華を紹介されてから一月も立たない間に、その額が400万を越えていることが判りました。
もうこれ以上は無理と、素子さんは父に相談するように武生さんに言い、大罵倒の末、それは父が支払ってくれました。
そして、すぐに長男の急死・・・と、立て続けの出来事に、素子さんも忙しさに取り紛れ、麗華のことなどすっかり忘れていました。
そして、やっと一息・・・と、思ったところに武生さんの失踪です。
置手紙には
「会社は辞めました。整理はつけています。
心配しなていください。旅に出ます。」
それだけ書かれてありました。
素子さんが、会社に確認すると、なんと退職手続きはもう2ヶ月も前に終わっており、退職金も振り込まれたあと・・・でした。
置き去りにされた携帯電話には、麗華からの着信が何件か残っており、彼女が武生さんの失踪2~3日間に、なんらかのコンタクトを取っていたことは確かです。
しかも、武生さんは3月の終わりに、突然パスポートを取得しており、関連がないとはとても考えられません。。。。
素子さんは色白の細面の顔をさらに曇らせて、大きな目に涙をいっぱいためて「心配なんです」
と、言葉少なに言いますが、その表情は「母のもの」です。
ワンマンで厳しいだけの父と、気弱で優しいだけが取柄の兄との間に挟まって結婚まであきらめた素子さんの忍耐はいったいなんだったのでしょう?
武生さんの借金の原因がなんなのか、まだあるのか(たぶんあると思いますが・・)それは
定かではありませんが、少なくとも、優しい武生さんには麗華という花があり、それはそれで
ある意味本望でしょうが、素子さんの今までは、どうなるのでしょう・・・。大人の選択といえば
それまでですが、半世紀前の、まるで「おしん」のような話が、今のこの日本にも生きているんですね。
素子さんが調査を決心するのかどうかは、まだ判りませんが、GWの海外旅行が史上最高!
なんててニュースを聞くたび「それってどこの話?」と、問い返したくなるのは私だけでしょうか???
誰もいない、社内でこの沈黙は・・・ちょっとキツイです。
「兄が・・兄が一ヶ月前から、いなくなりました。」
やっと顔を上げての第一声は搾り出すような声でした。
「お兄様はおいくつですか?」
やっと話のトバ口を見つけて、質問すると、それを契機に素子さんの口は開いていくようでした。
兄の武生さんは38才。大手の食品メーカーの製造部門にもう20年から勤務していました。
そこに、6年ほど前から、中国の研修生といわれる女子工員たちが、定期的に送られてくるようになり、武生さんはその指導係をしていました。
常時20人くらいの女子工員たちはみな20才前後で、優しい性格の武生さんは彼女らに慕われていたそうです。もともと、武生さんは、穏かで親孝行、大きな声をあげるタイプではありませんでしたから、それも当然のことではあったのでしょう。
武生さんと素子さんにはもうひとり兄がおりましたが、その兄が事故で一昨年急死すると、実家の畑仕事が武生さんひとりの肩にかかるようになりました。
兄妹の母は7年前に亡くなり、気難しい父と、長男、武生さんとの間に入って、そのころ結納まで済ませていた素子さんですが、そのまま嫁ぐことはできませんでした。
素子さんの危惧はそのまま的中し、長男と父、武生さんと父はも事あるごとに対立し、間に入った素子さんはハラハラとしどおしでした。
もともと、優しい武生さんでしたが、さすがに父に大声で「バカ」だとか「たわけ!」などと無能呼ばわりされると、一緒の畑仕事は辛かったようです。
そんなときに知り合ったのが、中国人女工の麗華(20才・仮名)です。
武生さんはこっそり実家に麗華を連れてきて、素子さんに紹介しました。
小さな危惧を抱きながらも、内気な兄がはじめて連れてきた麗華を暖かく迎えようと思ったものの、その頃武生さんはサラ金から小さな借金を繰り返していました。
時折かかる催促電話や、ダイレクトメールを父に見つからないように、処分して、自分の貯金から何度か支払っていた素子さんでしたが、麗華を紹介されてから一月も立たない間に、その額が400万を越えていることが判りました。
もうこれ以上は無理と、素子さんは父に相談するように武生さんに言い、大罵倒の末、それは父が支払ってくれました。
そして、すぐに長男の急死・・・と、立て続けの出来事に、素子さんも忙しさに取り紛れ、麗華のことなどすっかり忘れていました。
そして、やっと一息・・・と、思ったところに武生さんの失踪です。
置手紙には
「会社は辞めました。整理はつけています。
心配しなていください。旅に出ます。」
それだけ書かれてありました。
素子さんが、会社に確認すると、なんと退職手続きはもう2ヶ月も前に終わっており、退職金も振り込まれたあと・・・でした。
置き去りにされた携帯電話には、麗華からの着信が何件か残っており、彼女が武生さんの失踪2~3日間に、なんらかのコンタクトを取っていたことは確かです。
しかも、武生さんは3月の終わりに、突然パスポートを取得しており、関連がないとはとても考えられません。。。。
素子さんは色白の細面の顔をさらに曇らせて、大きな目に涙をいっぱいためて「心配なんです」
と、言葉少なに言いますが、その表情は「母のもの」です。
ワンマンで厳しいだけの父と、気弱で優しいだけが取柄の兄との間に挟まって結婚まであきらめた素子さんの忍耐はいったいなんだったのでしょう?
武生さんの借金の原因がなんなのか、まだあるのか(たぶんあると思いますが・・)それは
定かではありませんが、少なくとも、優しい武生さんには麗華という花があり、それはそれで
ある意味本望でしょうが、素子さんの今までは、どうなるのでしょう・・・。大人の選択といえば
それまでですが、半世紀前の、まるで「おしん」のような話が、今のこの日本にも生きているんですね。
素子さんが調査を決心するのかどうかは、まだ判りませんが、GWの海外旅行が史上最高!
なんててニュースを聞くたび「それってどこの話?」と、問い返したくなるのは私だけでしょうか???
by sala729 | 2006-05-05 18:17

