母になった夜
2015年 08月 04日
寄る年波か、飽き性のせいかは定かではありませんが、ずいぶんと
久方ぶりです。(笑)
最近は嫌なことや、怒れる事ばかり綴っているので、意識的に避けて
いた・・という処もままあるのはあるのです。
でも、その縛りをまたも揺るがしたのが、過日の戦後70年記念番組
「レッドクロス」
そもそも、タイトルからして、なんじゃこれ?
と、思ったら、主人公(松島菜々子さんでした)が、日赤の従軍看護婦で
彼の大戦で運命にもてあそばれる「母と子」というテーマ・・らしかった
です。
・・私、これ見て、共産主義者とみなされて、レッドパージに
あった夫を支える妻の話かと思いましたよ。・・って誰もそんなこと
思わないか・・(苦笑)
それにしても、この物語は酷い。
何のための戦争特集番組なんだ!と、何度も叫びたくなりました。
まず、設定が佐賀県なのに、みんなきれいな標準語。
方言一切なし。ある程度ノンフィクションを謳っているから、佐賀県
なのでしょうが、今時、方言話さない地方ドラマなんて、ありませんよ。
松島さんもそうだけど、祖父役の山崎勉さんも、村長も、先生も友達も
みんなが標準語。
貧しい小作の家ったって・・・確かに鄙ではあるけど、間口の広い
立派な農家ですよ。誰がみても・・・
主人公は母の闘病がきっかけで医療に目覚め、看護婦になるべく勉強します。
そして、晴れて日赤の看護婦として満州に渡ります。
戦地ではないにせよ、前線で傷ついた兵士を看護し、厳しいステレオタイプの
日本陸軍の上官に、赤十字の志を宣言し、その正義のために、同僚の
医師は殴られ、のちに夫となる人も殴られ・・・・
彼女の口癖は「赤十字精神・・・」
しかし、現実はそれを発揮すればするほど、自分はもちろん、周囲の人たちも
傷つき、巻き込んでいくのです。
それは、あたかも正義を振りかざす学級委員の女子のようです。
その下で、息を潜めている子たちのことなど、何も構いはしない。
自分の正義だけが、通ればそれでいいという、幼稚な正義感。
環境は悲惨です。第一夜ではラストで、夫が四肢欠損状態で運ばれ、
彼女の目の前で亡くなります。
置いてきた子供を迎えに行った開拓村では、世話になった義兄夫婦が
無残に殺され、その子と自分の息子は、列車に乗るために、駅に行ったと
聴き、友好的な中国人の乗る馬に乗せてもらい駅に向かいます。
その間、彼女の叫びは「ヒロト!ヒロト!」
駅でも、別れ際でも彼女は、ヒロトとしか叫びません。
一緒にいるであろう、父と母を惨殺された甥のダイチのことは、一言も
口にしません。
・・・・博愛の赤十字の権化なのに、この自分の子だけみたいな設定は
なに??
二夜からはさらに「ヒロト!」の連呼。
自分の正義感で女の子を庇い、その自分を庇って死ぬ医師。
地下に隠れていろと厳命されながら、病気の女の子ひとりを手術する
ために、のこのこ出てきて、同僚の医師や看護師達を窮地に陥れる
無軌道。
これってほんとに、この女性を正義の人として描きたかったの?と
思わず疑るような、種々の設定にブラックジョークかと思いました。
わが子を甥を助けてくれた、中国人富豪の末路を聞いても、彼女の
中にはわが子だけ。
ヒロト!
そのヒロトは、いつも傍にいてくれるダイチと支えあって困難を生き延び
ながら、ついにはそのダイチも死ぬ。
その後、二人は佐賀の陸軍病院で人民解放軍の傷病兵士と看護婦として再会
するも、彼女の口から出るのは「ヒロト!」だけ。
忘れたことはなかったという自己弁護だけ。
こうなると、この脚本家は、ホントは松島菜々子さんのこと、嫌いなんじゃ
ないかな・・とさえ思ってしまいます。
しかも、少し遡れば、彼女が人民解放軍から解き放たれ、故郷に帰ってきたのは
20年後。
なのに、じっちゃんは、そのままでいる。「アカ」扱いされた孫娘のために
啖呵を切る元気もある。
これはないでしょ・・・・
などと、突っ込みどころ満載のドラマでしたが、何よりわたくしが嫌いなのは
博愛の赤十字と臆面もなく口にしながら、自分の正義と自分の子供しか愛せなかった、ひとりよがりの母の愛と正義感です。
正義を口にしなくても、そう生きた人はいたでしょうし、自分の子も
人の子も、愛し守っていた、あの時代の大人もいたはずです。
その日の昼間、
わたくしはたまたま「いしぶみ」という朗読ドラマを見ました。
1960年代に、杉村春子さんが朗読した文を、綾瀬はるかさんが
していました。
広島で原爆にあった、広島二中の子らの最後を、父母や家族が文にした
ものを朗読していました。
事実は、重いです。なんの装飾もない設定の中で、淡々と読むだけの
一語一語が胸に刺さります。
それは何十年たっても、同じように母の胸に刺さるような気がします。
真実は何よりも重く、何よりも深いことを、しみじみ感じ入った夜でした。
久方ぶりです。(笑)
最近は嫌なことや、怒れる事ばかり綴っているので、意識的に避けて
いた・・という処もままあるのはあるのです。
でも、その縛りをまたも揺るがしたのが、過日の戦後70年記念番組
「レッドクロス」
そもそも、タイトルからして、なんじゃこれ?
と、思ったら、主人公(松島菜々子さんでした)が、日赤の従軍看護婦で
彼の大戦で運命にもてあそばれる「母と子」というテーマ・・らしかった
です。
・・私、これ見て、共産主義者とみなされて、レッドパージに
あった夫を支える妻の話かと思いましたよ。・・って誰もそんなこと
思わないか・・(苦笑)
それにしても、この物語は酷い。
何のための戦争特集番組なんだ!と、何度も叫びたくなりました。
まず、設定が佐賀県なのに、みんなきれいな標準語。
方言一切なし。ある程度ノンフィクションを謳っているから、佐賀県
なのでしょうが、今時、方言話さない地方ドラマなんて、ありませんよ。
松島さんもそうだけど、祖父役の山崎勉さんも、村長も、先生も友達も
みんなが標準語。
貧しい小作の家ったって・・・確かに鄙ではあるけど、間口の広い
立派な農家ですよ。誰がみても・・・
主人公は母の闘病がきっかけで医療に目覚め、看護婦になるべく勉強します。
そして、晴れて日赤の看護婦として満州に渡ります。
戦地ではないにせよ、前線で傷ついた兵士を看護し、厳しいステレオタイプの
日本陸軍の上官に、赤十字の志を宣言し、その正義のために、同僚の
医師は殴られ、のちに夫となる人も殴られ・・・・
彼女の口癖は「赤十字精神・・・」
しかし、現実はそれを発揮すればするほど、自分はもちろん、周囲の人たちも
傷つき、巻き込んでいくのです。
それは、あたかも正義を振りかざす学級委員の女子のようです。
その下で、息を潜めている子たちのことなど、何も構いはしない。
自分の正義だけが、通ればそれでいいという、幼稚な正義感。
環境は悲惨です。第一夜ではラストで、夫が四肢欠損状態で運ばれ、
彼女の目の前で亡くなります。
置いてきた子供を迎えに行った開拓村では、世話になった義兄夫婦が
無残に殺され、その子と自分の息子は、列車に乗るために、駅に行ったと
聴き、友好的な中国人の乗る馬に乗せてもらい駅に向かいます。
その間、彼女の叫びは「ヒロト!ヒロト!」
駅でも、別れ際でも彼女は、ヒロトとしか叫びません。
一緒にいるであろう、父と母を惨殺された甥のダイチのことは、一言も
口にしません。
・・・・博愛の赤十字の権化なのに、この自分の子だけみたいな設定は
なに??
二夜からはさらに「ヒロト!」の連呼。
自分の正義感で女の子を庇い、その自分を庇って死ぬ医師。
地下に隠れていろと厳命されながら、病気の女の子ひとりを手術する
ために、のこのこ出てきて、同僚の医師や看護師達を窮地に陥れる
無軌道。
これってほんとに、この女性を正義の人として描きたかったの?と
思わず疑るような、種々の設定にブラックジョークかと思いました。
わが子を甥を助けてくれた、中国人富豪の末路を聞いても、彼女の
中にはわが子だけ。
ヒロト!
そのヒロトは、いつも傍にいてくれるダイチと支えあって困難を生き延び
ながら、ついにはそのダイチも死ぬ。
その後、二人は佐賀の陸軍病院で人民解放軍の傷病兵士と看護婦として再会
するも、彼女の口から出るのは「ヒロト!」だけ。
忘れたことはなかったという自己弁護だけ。
こうなると、この脚本家は、ホントは松島菜々子さんのこと、嫌いなんじゃ
ないかな・・とさえ思ってしまいます。
しかも、少し遡れば、彼女が人民解放軍から解き放たれ、故郷に帰ってきたのは
20年後。
なのに、じっちゃんは、そのままでいる。「アカ」扱いされた孫娘のために
啖呵を切る元気もある。
これはないでしょ・・・・
などと、突っ込みどころ満載のドラマでしたが、何よりわたくしが嫌いなのは
博愛の赤十字と臆面もなく口にしながら、自分の正義と自分の子供しか愛せなかった、ひとりよがりの母の愛と正義感です。
正義を口にしなくても、そう生きた人はいたでしょうし、自分の子も
人の子も、愛し守っていた、あの時代の大人もいたはずです。
その日の昼間、
わたくしはたまたま「いしぶみ」という朗読ドラマを見ました。
1960年代に、杉村春子さんが朗読した文を、綾瀬はるかさんが
していました。
広島で原爆にあった、広島二中の子らの最後を、父母や家族が文にした
ものを朗読していました。
事実は、重いです。なんの装飾もない設定の中で、淡々と読むだけの
一語一語が胸に刺さります。
それは何十年たっても、同じように母の胸に刺さるような気がします。
真実は何よりも重く、何よりも深いことを、しみじみ感じ入った夜でした。
by sala729 | 2015-08-04 15:11