世の中には数知れない親子が存在していますなんてことは、改めて声をあげることではないのですが、この仕事をしていると、男と女の幾多の感情のもつれと同じぐらいに、摩訶不思議であったり、愚かであったりする親子の情愛を垣間見てしまうことが、侭あります。

雅代さん(仮名・44歳)は、小学校の先生です。指導主事という肩書きももっています。
その雅代さんが、わが社にやって来たのは、二週間前のことです。
「息子が、半年ほど前からいなくなりました。ずっと携帯で連絡とりあっていたんですけど、一ヶ月ほどまえから、それも音沙汰がなくなって、どうしているものやら・・と。」

息子の亮二君は(21歳)。地元の高校を中退したものの、大検を受けて、長崎の大学に進学したものの、数ヶ月しか続かず、ずるずると休学を続けていたそうです。もともと、高校を中退したのも、馬が好きで、それに関連した仕事をしたいと言い出したのを、雅代さんと雅代さんの父母が止めたのが原因でした。

雅代さんは、亮二君が小学校4年生の時、現在の夫と再婚し、その後、今の夫との間にふたりの妹が生まれ、祖父母はなさぬ仲の亮二君を不憫に思い溺愛してきたと、雅代さんは言います。亮二君も母親からお小遣いをひきだせないと、祖父母に上手く取り入って・・という典型的な現代っ子のようでした。
義父はそういう、母親と祖父母を醒めた目で見ながら「甘やかすばっかりしてるから、あいつはどんどん出来損ないになっていくんだ。」と、つぶやいていたそうで、この相談は夫には内緒できましたと、雅代さんは淋しげに言います。

状況をお聞きすると、亮二君は長崎で、ホストをしていたらしく、そこのお客だった亜由美さんという女性を雅代さんに(交際中の彼女)と、紹介しています。亜由美さんは4歳年上で、なんてクラブを二軒経営していると言います。しかも、父親は警察官で、こんな仕事してばれたら困るとも言っていたそうです。
クラブ経営は、眉唾ものですが、どうやらこの亜由美さんがキーパーソンのようです。しかし、雅代さんは、亜由美さんの本名も住所も、店の名前も知りません。ただ「なかざと亜由美」という名前だけが手かがりです。
水商売に入っているのか、所謂「ヒモ」になっているのか・・・いずれにしともちょっと厄介です。

しかし、雅代さんはどうしても捜したいと、思いつめた顔で訴えます。
「自分の子供がこんなことばかりしてて、他人様の子供なんて教育できませんよね。私は、教師失格です。」と、はらはらと涙をこぼします。
たしかに、夫の言い分にも、一理はあるでしょう。
しかし、息子が思春期の微妙な時期に再婚した雅代が、亮二君に対して、うしろめたさと、少しの後悔を抱いているとしたら、その「甘やかし」は、少しだけ判るような気がします。
だから、仕方ないとはいいませんが、少なくとも自分の職業を省みて、こういう自己反省ができる人ですから、ことが終了したときには、今までとは違った観点や、方法、行き方が模索できる人ではないかと思っています。

結局この調査にかかる費用は、祖父母が提供しました。
亮二君は、祖父母にもなんらかのアクションを起こしてくるとは思います(お金がなくなれば・・)
この、亜由美という女性に騙されていないのなら、思いの外早く見つかるでしょう。
しかし、この期待は、どうやらあくまで期待でしかないようです。
今現在、この件は大詰めに向かって進行中です。発見は、N係長はじめ、調査にお任せするにして、私は、雅代さんとコンタクトをとりながら、雅代さんの期待が、亮二君に伝わるようにと、祈らずにはいられません。それを、亮二君が受け止められないのなら、それはそれで仕方のないことです。でも、21にもなって、母親の気持ちの一部でも受け止めて欲しいものだと、私は祈ります。



そして、今日はもうひとりの母をご紹介しましょう。
貴子さん(54歳・仮名)は、地元の大きな病院のひとり娘。夫は優秀な婿養子です。
その貴子さんのご自慢がひとり息子の、翔君(26歳・仮名)です。
国立大学医学部をでて、国家試験もパスして彼が貴子さんに言ったことは「音楽がやりたいから三年間、東京で勉強したい」ということでした。
貴子さんの弁を借りるなら、「翔は、親の私が言うのもなんですが、背も高くて、顔もいいんです。性格もすごくよくて、成績はもちろんいいんです。それで、なんでも出来るんですね。ピアノもあっという間にマスターするし、テニスもそこそこ上手い。ギターもちょっとやったかとおもうと、パソコンで作曲もすると、なんでも才能があるんです。」と・・

はぁ・・・そ、そーですか。。うーーーん。
そりゃあね、そりゃあ、医学部も国家試験も嘘じゃないでしょう。
でも、でもね。。。ここまで言いますか。しかもです。その続きをきいて、さらにびっくり、
「それで、翔がその前に紹介したい女性がいると申しますの。看護学校の3年で、四国の子だというんです。それで、私、逢いに行きましたの。そしたらですね。・・・びっくりしましたわ。ほんとに・・。ちっちゃくて貧相で、顔だって少しも綺麗じゃないんですのよ。」

?!?****//;;;;xxxxx・・・・@@@×××・・・○○◎◎◎・・・・

・・・・・しばし、口があんぐり・・
言葉の見つからない私でした・・・・しかし、気を取り直して
「ということは、お母様は彼女がお気に召さないと・・」慇懃にお聞きしました。
「もちろんですわよ。なんでこの娘でなきゃいけなのぉ・・・って思いません?」と、私に同意を求めてくるのです。
・・・・人として、言わなければいけないことは判っています。・・・しかし、貴子さんの場合、
なんというか・・・邪気がないというか、悪気がないというか・・・ぜんぶ本音なのですね。
それが、手に取るように判るところに。貴子さんのかわいらしさがあります。
「それでね。これは調べなくっちゃあって思ったんです。だって、一年して看護学校卒業したら
彼女も東京に行くって言うんですもの・・」
・・・・それは大変(笑)・・・・・

文にしてしまうと、なんてやな母親と思われるかもしれませんが、貴子さんはほんとに、いやみなく息子を褒め称えます。あまりの無邪気さに、拍手を贈りたいぐらいです。きっと、家庭でもかわいらしいお母さんであり、奥様なのでしょう。
自分の環境に浸って波風もなく、そのまま妻になり、母になったということでしょうか・・
自分の母親なら、大人になってその母親像をかわいらしいと見ることが出来るかもしれないという稀有なキャラではないかと思います。

ただし、お友達としてなら、その世間知らずぶりにきりきり舞いさせられて、周囲を疲れ果てさせても、そのことには気づかない「絶対にお友達にはしたくないタイプ」の女性であることは断言できますが・・(^^:)
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by sala729 | 2005-06-18 12:37

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