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いつものように、あっという間に8月が終わり9月になりました。
今も、窓の外は雷鳴が響いて、夏が去り行く大きな足音を残しているようです。

さきほど、近くのデパートに行ってながーい昼休み(笑)を楽しんで来ました。
平日のデパートは閑散としており(ここは、平日でなくても・・なんですけどね。)

その日、そこでは古代紫を現代に甦らせたというデザイナー氏の作品展と
即売が催されていました。
上海の博覧会で展示されたものと仰々しい看板が出迎える中、展示場に入ると
先客は妙齢の女性客が二組。二人連れとお一人様です。

確かに、濃淡の段染め紫は、高貴で艶やかで匂い立つような美しさが
周りを圧倒しておりました。

芸術的なマネキンにその衣を着せたり、壁に展示したりしているものも
ありますが、その間にハンガーに吊るされた、何点もの販売作品が並べ
られています。

販売員の女性は自らも、紫のオーガンジー風の上着に、ゆったりとした
パンツといういでたちで、決して派手ではありませんが、その場の
雰囲気を壊さないような、慎みと品位を感じるものがありました。

彼女は二人組みの接客をしておりましたので、私ともう一人のお一人様客は
自由に作品を見せていただいておりました。

そこに、恰幅のいい体を白いジャケットに包んで、白髪気味の長髪を
後ろセンターでひとまとめにした60才前後かと思われる男性が
奥から出てきて、つかつかと私ではないほうのお一人様に向かっていくと

「どうこれ。いいでしょう。」と、親しげに薦めるのです。
そのお一人様は、60代と思われるのですが、私よりは気弱げ(あなたより
気の強い人は、まずいないっ!と、断言した家人にいつものアッパーを
お見舞いして・・)
で、作品をハンガーから出しては、戻し、また出しては戻しを繰り返して
いました。

「え・えぇ。いいですね。だけど・・」気弱夫人は小さな声で応じています。
突然に現れた、ドン小西風の男性にたじろいている様子はありありです。

「いやぁ。これだけの作品お目にかかれませんよ。ほんとなら、美術館で展示して
入場料がいるんです。それをタダで見れるなんて、幸せでしょ。」

なんたる、押し付けがましい言い分。その時には、私はそのドン小西風が、この
作品のデザイナー氏だと判りました。

「え、ええ。そうですね。でも、ちょっとお高い・・」

「何言ってるんです。高いなんて。タダで見られて、高い安いで決められる
ような作品じゃないんですよ。ほんとに何言ってるのか、見る目がないにも
ほどがある。ほんとにこんなじゃやってられないよ。
それに、そうやって何度も 入れたり取ったりするんじゃないよ。
ほんとにもぅ、商品のことなんにも判ってないん゛から・・」

・・・・・・私はこの会話を聞いていて、胸がムカムカしてきました。
(よく、あることだけど・・BY家人)

・・・・何言ってるのとは、あなたのことよ。美術館で入場料ですって。
あなただって、ここで出展していたら、即売も出来るからって言うんで
決めたんでしょ?。得したのはどっちよ。
それになに?・・・高い安いの問題じゃないって?・・一理はあるけど、道理は
ないわよね。お金を出す人が高いといえばそれは高いのよ。
作った人間が、高い安いを判断するなんて、作品が泣くわよ。
しかも、お客に向かって、見る目がないってどういうこと?
売る気がないんなら、初めからこんな田舎のデパートで作品展なんかしなきゃ
いいでしょ?
上海や中国で売ればよかったのに?・・・もっともっとシビアーな高い安いの
ご婦人たちが押し寄せてくるかもね。・・・・・・・・・・・・・・・・

その上、商品を出し入れするなぁ?
出し入れしないでどうやって見るというのよ?あなたの洋服は遠くから眺めるため
だけに作られているの?


私は、デザイナー氏が私の方に来るのを待っていました。これだけの反論を用意
して・・(笑)

私がよほど挑戦的な目をしていのか、それとも気弱夫人をいたぶるのがそんなに
面白いのか、デザイナー氏は、なかなかこちらには来ません。
ちらちらと、こちらは見るのですが・・(笑)
もちろん、「敵対ビーム」一杯の視線を投げておりましたけどね。





さすがに上品な売り子さんも、デザイナー氏のあまりの傲慢な態度と物言いに
眉を顰めてチラチラと見ていました。
そして、同じように見ている私と目があうと、困ったように視線を落としました。


なかなか獲物を手放さない、デザイナー氏と、手の内から逃げられない哀れな
気弱夫人を見かねて、私が一踏み出したその時、彼はさっと踵を返して、
フンフンと鼻歌を鳴らしながら奥に消えていきました。
それは、突然のことだったのでしょう。置き去りにされた気弱夫人も呆然として
おりました。

しかしその時、彼女の肩がほっとして落ちたことを私は見逃しませんでした。

私は去り行くデザイナー氏を引きとめようかとも一瞬は思いましたが、それを
するほどの「若気」はありません。(^^)



私はこういう傲慢な商売人が大キライです。
お客様の中にも、もちろん傲慢で我儘で偏執的な人間はおります。
しかし、買っていただく側が傲慢でどうしますか?
しかも、相手はこんな田舎で平日で閑散とした昼日中に来ていただいた貴重な
お客様ですよ。

そんなときこそ、心をこめてより大切に接客するのがプロとしてのあり方ではない
ですか?

自分の作品に自信があり、愛おしいものならば、なおさらのこと、大切に
してくださるように、愛してくださるように、お客様に思っていただけるように
お伝えして、受け止めていただくの、生み出した者の務めではないですか?

それが、今蔓延している、大量商品激安商品との違いではないですか?


もちろん気弱夫人は、デザイナー氏が離れた途端、そそくさと会場を後にしました。
私ももう購買意欲も、見学意志もなくして、ここを去ることにしました。
もう一度、会場を見回すと、上品売り子さんとまたまた視線が合いました。

(あなたも大変ねぇ。)
(ええ。ホントにそうなんです。デザイナー氏が来ないほうがよかったんですけど・・)
(そうよねぇ。あと二日。頑張ってね。
(はい。頑張ります。)

・・・・と、現実の言葉を交わした訳ではありませんが、こんな心の会話をして
いつものように、地下のお魚売り場に向かったのでした。

by sala729 | 2012-09-03 16:05

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