人気ブログランキング | 話題のタグを見る
昨日、今日は秋の気配を少しだけ届けてくれるような、そんな夜をすごしています。

のんびりと、息子が送ってくれた千葉の国産「チーズピーナッツ」をお供に、私はコーラ、
家人はオールドパーを片手に(田中角栄さんはこれ飲みすぎて頭の血管ぶちきれちゃった
んだからせいぜい飲みすぎないようにと、きつーい警告を残して息子は東京に帰って
いきましたけどね・・笑)秋の夜長の入り口を楽しんでおります。


昨夜は今、NHKの衛星2でやっています「文豪の描く怪談」・・ちょっとタイトル微妙
ですが・・・
その中の三話目。芥川龍之介氏の「鼻」をやっていました。
ちなみに一話目は川端康成氏の「片腕」
二話目は、見ていません。

「鼻」は、ご存知のとおり、あまり怪談というイメージはありません。
むしろ、滑稽と哀しさが織り交ぜになって、怖いという気がしたことはなかったのです。
それを、韓国人監督の(日本育ちでしょうか?とても流暢な日本語の若い監督さんでした)
切り口で、怪談仕立てにしている・・・というのが「売り」であったのでしょうが・・・

こんなに有名な話を、無理やり自分の解釈の中で見せようとするには、相当の技量と
才能が必要です。しかも、自分とは国柄を同じくしていない人たちに、それを
解釈してもらうには、自国の作品以上の理解と許容がなくては難しいと思います。

私は、はっきり言って、この作品、何も面白くなかった。
ただ、異形の僧を村人たちが、取り囲んで、小突きまわして、蔑んでいるだけにしか
見えないのです。
これは、怪談でもなんでもありません。
僧の苦悩も、異形の悲しみも苦しみも、何も伝わってこず、ただ古人の異形なるものへの
排他が醜く描かれているだけです。

文豪の・・の、タイトルに冠している割には、なんだか損したようなそんな時間が
すぎました。
四夜連続となっていましたから、今夜もあると思います。私の偏見と思われる
方はぜひご覧になって見てください。そして、私に作品の見方を教えてください。
私は、どれも録画していますので、改めて鑑賞することは可能です。



なんて、斜に構えていましたら、古い友人から電話が入りました。
もう、何十年の付き合いの友人グループの一人の娘が結婚したとかで、おめでたいと
言う話からはじまって、現在の心境・・・
私達の世代は微妙です。


彼女は、実の両親の介護をもう一年以上引き受けています。
母は痴呆が入り、父親は老人性のうつ病に罹患しているので、両親の介護が必要です。
父の代からの商家である実家近くには、親戚の家も多く、その分「子供介護が当たり前」と
いう目に見えぬ圧力がひしひしと感じられる日本のどこにでもある田舎です。
弟は実家の隣に居を構え、娘たちは大学進学で家を離れています。
弟嫁は教員をしており、嫁の実父も寝たきり生活をずっと続けています。
そんな親の介護に帰してもやれないのに、うちの親のこと見てくれとは言えないと、彼女は
弟と交代で親につきっきりです。

こんな状況なのに、介護認定は3。当然施設入居は順番待ちです。

「親が早くに死んだらそれは不幸で哀しいことだけど、長生きするってことは、こうなる
ことだから、これもこれで、哀しいわよね。」
彼女のこの一言が、私の中を右往左往しています。

彼女の言葉は、子供の本質を貫いています。
私の両親は、母は13年前に、父は二年前に亡くなりました。
一人っ子の私は、子供以外にはもう直系血族はおりません。
でも、その私よりも、いま父と母のいる彼女のほうが、ずっと可哀そうに思えるのは
私が非情だからでしょうか?



彼女は決してこの介護をやめたいとか、いやだとかは言ったことがありません。
自分の体調がどんなに悪くなっても、夫婦間が微妙にきまづくなっても・・・です。

親子には親子にしか判らない、さまざまな葛藤があります。
それは、誰に話しても、判ってもらえるわけではなく、自分だけが、親だけがしか
判りえないものです。
そんな中に入り込もうなんて、そんな不遜な気持ちはもうとうありませんが、一度
「もう少し手を抜いてみたら?」と、言ったことがあります。
そのとき、彼女は、うんでもいいえでもなく、ただ黙ってどちらとも取れる微笑を
返しただけでした。

それで、その話は終わりました。
私には入れない世界です。
私には、どうのこうのという資格のない世界です。


私にできることは、彼女がひととき、そのことから離れたときに、いつもの私のように
つまらないバカ話で今のこの時間だけを楽しめるようにと・・・それだけです。

厳しい現実の世界に戻り行く友に、かけてあげられる言葉はありません。
ただ、見守るだけなのです。
私が、そうしてもらったように・・・

by sala729 | 2010-08-27 15:58

<< 最後の日曜日    夏の日はまだまだ続く >>