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私事なのですが、昨夜遅く離れている古い友人からの電話で、お友達が亡くなったとしらされました。本当に突然のことで、聞いたまま絶句してしまったのですが、人の世の無常や、生のはかなさは、もう知りすぎたと、斜に構えてはいるものの、身近な方の訃報を聞くと、心は波立つものを感じます。
こんな夜は、すでに黄泉の国に旅立った人や、今発とうとする彼女のことが、いろいろと思い出されて、なかなか寝付けない夜を迎えました。
残されたご主人や、三人の娘さんたちとも、もちろんお付き合いをしていましたから、本当なら
最期のお別れに行くべきであることは重々判っています。

ですが・・・たいへん申し訳ないとは思うのですが、私は、ある時を境にそういう場は、すべてご遠慮させていただいています。
これをトラウマというのかなにか判りませんが、とにもかくにも、そういう場で、なにをしてよいか
どんな言葉を発したらよいのか、戸惑うばかりで自分自身が判らなくなるのです。
声をかけることの虚しさや、かけられることの喪失感の方が、先立ってそういう場にいられなくなるのです。

自分で「不義理に生きる」と、嘯いて生きておりますから、そういう私にどんな非難があびぜられようとも、それは承知の上ではあるのですが、そんな私のことを理解してなお、こうして友人の訃報を知らせてくれる友は、有難いものです。

もう少し時間が経過したら、私流のお別れを彼女に捧げに行こうと思っています。
そして、「私が行くまで待っててね。うちのによろしく伝えてね」と、こっそり囁いてこようと思っています(微笑)



そんなこんなの一夜が明けて、また私の日常が戻ってきました。足音も高く(笑)・・

この仕事をしていたら、のけぞるようなことや、呆れ果てること、むかつくことなどは日常茶飯事で、むしろこんな感覚がいつまでも、自分の中に残っていることが、意外なような、ちょっと嬉しいような、気持ちになります。


お逢いした、笹口まりえさん(47才・仮名)は、そんな私に踏み絵をさせるかのように、目の前で
白檀の香りのきつすぎる扇子の手を休めずパタパタと顔を仰ぎまくっています。
目鼻立ちのくっきりとした顔は、確かに美人系だとは思います。
しかし・・・それにしても・・・・

胸の谷間がくっきりと見えるほどのキャミソールで正面に座られたら、男性の方は目のやり場に困るんじゃないと思われるほどです。
両手の指には、大小10個ほどのリング。中には消しゴムくらいの大きさのオパールや、麦粒寄せ集めたようなガーネット。ねずみの心臓くらいはありそうなダイヤもどきもありました。
そして、その指を駆使して、喉仏をのけぞらせ、パタパタ仰ぎを繰り返すのです。

その間の機関銃のようなおしゃべりには、さすがに合いの手の入れようもありません(^^;)

「うちゃあな、このへんでは有名人だから、格好の悪いことはできんのよ。ま、立場っちゅーもんがあるけぇのぉ。」と、ガハハ・・・・

立場ったって・・・・はっきり言わせてもらうと、看板も出ていない民家の一階に、スチール机ひとつと、いかにも中古の応接セットだけで、社員19人。年商数千万といわれてもねぇぇ・・・。
第一、まだ一年にもなっていない、登記もあげていない会社で、なんで「年商」が判るの???

「主人・・・おるよ。誰でもしっとる会社の重役みたいなもんよ。社会的地位が高いから、名前は言えん。そいでも、これ、これにはさっぱりよ。」と、親指と人差し指で円を作ってガハハ・・・

・・・・・な、なんと下品な、アクション・・・・・・・(--;)


「ようするに、付きあっとった男がおるんじゃけど、別の女がのぉ、その男に惚れたんよ。そいで
その男がバカやけん。自分がおらにゃーってその女の言いなりなんよ。そいでも、男はまだ
うちに金せびりに来よるんよ。えーよ。貸したっても・・・いくらでも貸したらぁ。そやけど、どーすんねん。うちに金ださせて、お前はそいでも男かって言うたら、ぐじぐじ言い腐って、帰りかけに
うちのベンツ蹴飛ばしやがったんよ。ほんまに、恥ずかしいでよ。大の男がゲームセンターで大声だして、車蹴飛ばして帰るなんざぁ、格好の悪いことや。」

聞いてるこちらのほうが恥ずかしくなるような言い草です。。。

「それで、何をお調べになりたいんです?」
イライラする気持ちを理性(・・・あったかな?笑)で、押さえて聞いてみました。

「女よ。おんな。女の仕事先が知りたいんよ。名前はわかっとる。バツイチで子供もおるんよ。
仕事は美容師言うとった。ま、美容師やったら、うちの仕事関係で判らんことはないんやけどな。ツレもようけおるし、調べられんことはないんやけど」

「じゃ、そうなさったらどうです?」

こういう手合いは、苦手・・というよりキライ・・です。(笑)
わざと突き放したような言い方をすると、まりえさんは眼をまん丸にしています。
今までこんな突き放したような言い方はされたことがないようです。

「それは格好が悪いじゃろ。立場があるけん、できんのよ」と、またパタパタ・・・ほんとに忙しい人です。

「調べてうちは得することはなーんもないんよ。」と、ガハハ・・・
「損得だったら、なにもお得なことはないです。おやめになりますか?」

まりえさんは眼を剥いています・・・彼女のプライドがびりびりと音をたてているのがわかります。

「損得やないんよ。意地やね。」と、余裕を取り戻したふりをしています。

「そうですね。」・・・淡々と見積もりをお出しすると・・・
「うーん。高いともいえんし、安いとも言えんなぁ・・」と、言うところに、まりえさんの妹の夫という人が帰ってきました。

「な、な、洋二。この人たんてーさんやと。どうしょうか思うとるんやけどなぁ」と、顎で私のこと示します。
「栄子(相手女性の名前)のことかいな。ねーちゃんがしたけりゃしーぃや。」と、ニタニタと笑っています。
「ほんでも、これしたって、うちにゃなーんの得もないけんねぇ。」


私を無視して、会話しています。
ぶちっ・・・・ぶちぶち・・・ ぶちっつん!! 

「損得なら、なんのお得もありません。おやめになったらいかがですか?」

二人は揃って私を見ました。まるで「異星人」を見るかのように・・・。
「金じゃないんじゃ。こんなくそっトロイ女にと思うたら、むかつくんよぉ。」

それからは、女に対する悪口雑言・・・とてもここにはかけません・・・(**)


くどくどと、義姉弟で続ける会話に、もううんざり・・・です。
いくらなんでも程度低すぎ・・・・・

じつはこのまりえさん・・・一年ほど前にRさんが面談して、契約しながら翌日、訳のわからない理由でキャンセルしたいわく付きの女性でした。
でも、なかにはいるのです。前回やめたけど、やっぱりまたしたい・・・と、思い詰める人は・・。
でも、、、
でも・・・・・まりえさんは、少なくともそんな繊細な人ではなかったようです。。。。

「はい。やめましょーね。」
口をあんぐりと開けたままの義姉弟を尻目に、夜も更けた田舎の町にでると、いつしか夜はもう
秋の気配に満々ているようでした。。。

こんな夜もあるさ・・・・。

# by sala729 | 2006-08-31 17:25

先日来、調査に入っていました晴子さんの長男、直人さんの居場所が判明いたしました。
住所は、判ったものの、ご本人を確認するのに時間がかかって、やっと本人と断定。晴子さんにお知らせしました。

晴子さんは、義母の為の看護人を早急に手配し、お父さんと一緒に現地に向かいました。
現地の調査員が、張り込みを続けている現場には、すでにこちらからもN係長と、K主任が向かっています。
朝一番の飛行機のチケットが取れたと、連絡を受け、現場に通達。
「家出」の場合は、お引渡しするのが一番緊張もし、困難な場面でもあるのです。
居場所が判ったからといって、ドアをトントン・・・で、開けてくれるはずはありません。
ましてや、直人さんのように、相手がいる場合は特に用心しています。
突然の訪問者・・・しかも肉親となれば、まずドアは開けず、籠もってしまうことが殆どです。
そうなったら、もう泥沼のようなながーーい時間との戦いがあったり、通報されて警察、三つ巴だったりで、現場は混乱を極めます。

ですから、こういう場合は、まず彼らの行動を見ておいて、状況をみてご家族をおよびします。
そして、しばらくは一緒に張り込んでいただいて、チャンスを待ってもらいます。

晴子さんも、実家の母が一緒に行きたい・・とのご希望でしたが、暑いさなかでもありますし、
おばあちゃんということを考えたら、健康上の問題もありますので、おひきとめしました。


そして、思ったとおり・・・・
7時間近い時間を待機して、やっと直人さんと対面したものの、彼は「帰らない」と、一言
いったままで、俯いたまま、以後は一言もしゃべりません。
対象者は、突然暴れたり、逃げ出したりすることもありますから、調査員たちは、周囲にも気を配ります。
そして、N係長は、晴子さんと一緒に、直人さんに向き合います。。。

長い、ながーーい、ながーーーーーーい、時間が流れました。。。
連絡を待つ私たちにも、長い時間ですが、炎天下、緊張のままに対峙している調査班は、仕事とはいえ、本当に大変です。

早朝から、張り込み続けて、ご両親を待って、さらに張り込んで、見つけて、話し合いに入って
、ようやく直人さんが「・・・かえる」と言ったのは、日付がとっくに変わって、午前三時もすぎようとしていました。

さてそれから、調査班は、晴子さんとお父さん、直人さんを乗せて、車で自宅までお送りします。晴子さんとお父さんの二人で、直人さんを飛行機は・・無理とN係長が判断しました。


もう、太陽は真上に上がる頃、やっと現場は解放されたようでした。


そして、夕方になって、私の携帯が鳴りました。
晴子さんからです。
「Aさん、ありがとうございました。ほんとにありがとう。Aさんところでお願いしてよかった。ほんとによかったです。」と、開口一番、興奮した口調です。
「いえいえ。そう言っていただけたら嬉しいです。ご子息さんは、今どうですか?」
「ええ。帰ったら、それはそれで納得したみたいで、おじーちゃんにも、ただいまって・・・。おじーちゃんもおばーちゃんも、それはそれは喜びましてね。ほんとにありがとうございます。
調査の人たちも、よくしていただきました。ご飯も食べんと、寝んとね。わたしらには、どうぞどうぞと、言うてくれまして・・・。ほんとに、そちらには足向けて寝れません。」


・・・・・ 嬉しいですっ 
お褒めいただくことは、もちろん嬉しいに決まっていますけれど、現実にこうして言葉で、調査の
現場を労っていただけると、心から嬉しく思います。

直人さんのケースは、まだまだやらなければならないことが残っています。
あの、野崎礼二のことです。このまま放置していたのでは、同じこと繰り返すだ゛けですから
それも、抑止しておかなければなりません。

それでも、晴子さんには、自分のもとに直人さんが戻ってきた・・・・これ以上のことはないのです。
おじーちゃんの前に座って、恥ずかしそうに下を向いた直人さんの姿は、子供のころのままで
それもまた、晴子さんにはなによりなのでした。


調査のみなさま、本当にご苦労様でした。
束の間の「眠り」でしょうが、どうぞ深く、深く、眠りの懐で抱かれていれますように・・・と、祈らずにはおれません。



そして、私は、三日坊主とのそしりを背中に、今日からはじめた「ルームランナー」に、再び向かっていったのでした・・(^^;)

# by sala729 | 2006-08-28 11:58

最近・・・でもないんですが、PC開いたりすると「逆援助交際」のメールが、見ず知らずの女性名で届いていたりすることはありませんか?
私のところにもよく届きます。どーやら、私・・その方面の方たちには、名実ともに「おっさん」と
認識されているよーですわ(^^;;)

同じような趣旨の広告が、風俗誌や、成人漫画雑誌などにも掲載されています。
枝葉を省いて、ひじょーに簡単に説明すると・・・・

あなたと交際したいという、女性がおります。(多くは、女性社長であったり、セレブ妻とい自称しています)。女性たちは、社会的立場がありますから、お金を払っても割り切って付き合える
方を捜しています。

なーんていう広告文があって、申し込むと、女性からは3000万の会費を預かっています。
ご゛紹介するにあたって、あなたの方も、この20パーセントを、預託金として振り込んでください。関係が終了の後、この預託金と、一回のセッティング料金を、あなたの口座にお振込みします。


・・・・・・ま、バージョンはいろいろですが、だいたいこんなかんじで「お誘い」されるみたいです。


これに、まんまと乗せられちゃう方がいるですねぇ。。。それも、かなりの高額をつぎ込んでいる
パターンが、増えているような気がします。


でも、これって、ふつーに考えれば、どう考えても「おかしい」でしょ??
女性が誘って、関係もって女性にお金を払うのは、いわゆる「売春」ですよね。これなら
昨今の女の子たちが、罪の意識を紛らわせるために「援交」なんて言葉に替えていますが、
システムとしては判ります。
でも、でも、お金に余裕のある女性たちが、こんな秘密クラブみたいなものを介して、自分の
セックス相手を募集すると思いますか?
しかも、文字通りの女性たちなら、守らなければならないものは、山ほどあるはずです。
それが、こんな胡散臭い雑誌に広告載せるようなところに、加入すると思いますか?

なにより、、この呼びかけに応じる男性たちは、失礼ながら、いわゆる「男の魅力」に、溢れる
人たちは、私の知る限り、ひとりもおりません。(--)

しかるに・・・なのに・・・
ひっかかっちゃうんですよ・・・簡単に・・・(沈)


昨日、お逢いした、岡村さんは、81才です。2年前に奥様が他界しましたが、娘さんご家族と
同居していらっしゃるので、家事に支障をきたすということはありません。

向かい合って座ったときは、なかなかにダンディで、柔和なまなざしが、印象的でした。
その、岡村さんから、「これ」に、ひっかかったとお聞きしたときは、耳を疑いました。
しかも、総額は5000万くらいと言うではないですか・・・・(あ然・・)

いくらなんでもこれはおかしいと思って、振り込んだ会社と、担当の者について、調べたいとの
ご相談でした。
・・・・・もちろん、それは可能です。
そして、もう何件も同じような調査はしています。
そりどれもが、おとなしくて、なにか暗いイメージを背負っているような、そんな依頼者さんばかりでした。。。。


その中では、岡村さんは異色です。
すっきりと伸ばした背筋と、穏やかな話し振りが、品性すら感じさせました。

調査のあともどうするかということについて、お話しましょうと言うと、やっと相談できる相手ができたと喜んでいらしたのです。
そして、帰り際
「じつは、今夜、むこうから電話があるんです。私がこうやって向こうのこと不審に思っているものだから、私の出資金のうち4200万を返金すると言うのです。その打ち合わせというのですよ。もちろん、信じていませんけどね。でも、上手いんですよ。口が・・ね。笑」

その電話があったら、内容を必ず教えてくださいねと、堅く念を押して帰った夜中のことです。。

私の携帯が、鳴り響きました・・・岡村さんです。
「いゃあ・・あのですね。お願いしたあれ・・もう白紙にしてくださいや。ええ。ええ。理由は聞かんとってください。私の勝手ということですから・・」と、妙に明るい声です。

「もちろん、やめろと仰るなら、やめますけど、どういう経過で辞めることになったのか、お聞かせいただけませんか?」と、言っても
「いやいや。それはわたくし事ですから、もういいじゃないですか。ふぇふぇふふ」と、妙に濁すのです。

理由の想像はつきます。
たぶん、約束通り電話がかかっきて
「返金手続きに○○万お振込みいただけましたら、お約束通り、4200万の返金をいたします」
などの、あまーい言葉を囁かれたのではないかと思います。

あれほど言っておいたのに・・・・返金なんてあるはずがないのに・・。
まとめに領収書もないお金を、どうして返金があるなんて思えるのでしょう?

思い切って
「ご返金のお話があったのですね?」と、聞いてみました。
「え・。いや、あの。・・・・うーん。まぁ・・・」
嘘の下手な方です(笑)・・・・・やっぱりね・・・・でも、もうなにを言っても今はだめですね。

「調査の中止処置はすぐに取ります。でも、岡村さん、何かありましたら、相談してくださいね。
約束が、守られないときは、迷わず相談してくださいね。」と、付け加えると
「ええ。そのときにはお願いします。」と、妙にはっきりした口調で、答えていたのが、なぜか
物悲しく聞こえたのは、私の気の回しすぎなのでしょうか・・・。


結果が見えていることなのに、説得ができなかった自分の非力を、しみじみと噛み締めて
ベランダのカーテンを開けると、夏の夜空がいっぱいに広がっていました。

# by sala729 | 2006-08-26 11:53

山また山に囲まれて、どこを見渡しても、稜線と尾根しか見えない盆地にその家はありました。
急斜面の敷地の奥にある玄関を入ると、真っ白な総髪の老女が端然と出迎えてくれました。
そして、私と前後して車でやってきたのが、今日のご相談者の、山田晴子さん(47才・仮名)でした。

晴子さんの長男である、直人さん(25才・仮名)が、勤務先を辞めて、ここに帰ってくると言い残したまま、姿を消してもう20日になろうとしています。
直人さんは、幼い頃から優秀で、日本で一番優秀な大学を出て、さらに大学院に進み、新進の
コンピューター技術者として、前途洋々・・・・の、はずでした。。。

話は二年前に遡ります。
直人さんは、どんなきっかけかは判りませんが、野崎礼二という32才の男と知り合いました。
野崎は、名古屋に住んでおり、それ以来、直人さんと野崎は、東京と名古屋を往復して、親密度を増していたようです。
でも、そのころから、晴子さんのもとに、いろいろな口実をつけて、直人さんからお金の無心が入るようになりました。
最初は、10万。30万。50万・・・・・100万
あっという間に、総額は1000万近くになりました。

直人さんは、昔から手のかからない子供で、晴子さんは「あの子に捨てられるとは思わんかった・・」と、涙ながらに話していました。
その、息子が言うことなのだからと、きっとどうしてもいるに違いないと、晴子さんは思ったのです。


しかし、さすがに、これはおかしいと、晴子さんは夫ともども、上京して直人さんを訪ねました。
すると、直人さんの口から、野崎の名前が出てきて、お金の大半は、野崎に送金していると言うのです。しかも、野崎は、女性になるための手術を受け、豊胸や、性器も女性のものにしている
というのです。

晴子さんも夫も、腰を抜かさんばかりに驚きました。
 ま、まさか、うちの子が・・・

その、野崎の手術の結果が思わしくなく、面倒みるために、会社を辞めて、名古屋に行く・・と、いうのです。
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やっとの思いで気を取り直した、晴子さんは
「えーよ。あんたがそれでええなら。でも、そんなら二人で田舎に帰らんね?。近場で夫婦で暮らしてもええやないの?」

・・・・・・・・・・・穏やかな、山里で生きてきた晴子さんの、子を思うが故の決心でした。

「そーやね。」
一言だけ言って、頷く直人さんに、ほっと一息ついて、明日は、一緒に帰ると約束を取り付けました。
翌日の朝になって、ちょっと会社に忘れ物取りに行くと言った、直人さんと約束した上野駅で
晴子さんは待ち続けましたが、とうとう・・・・彼は現れませんでした。


そのまま、直人さんは野崎のもとに向かったと思われます。
たったひとりで帰った、晴子さんを義父は激しく責め立て「なんでひとりで帰ったんじゃあ!お前なんかいらん嫁じゃあぁぁ。でていけ~ 」と、家を追われました。

一時的に実家に、身を寄せたものの、義母は10年来の寝たっきりで、晴子さんがいなければ
食事も排泄もできません。
その義母が、枯れ果てた手を出して
「うちにおってくれよぉ。里には帰らんでくれよぉ」と、泣く姿を見ると、むげに実家には帰れないと晴子さんも涙を溜めています。

そして、思い余って、相談に来られたのです。

名古屋にいるはずの、直人さんを連れ戻したい・・・その一心で。

「野崎礼二」というその男(女?)と、一緒にいるのではないかとは考えられますが、母の心子知らず・・なのか、もっと他に深いわけがあるのか・・・それは
直人さんを探し出さなくては判らないことなのですが、野崎とどんな生活をしているのか、本当はどんな関係なのか・・・知ることは晴子さんにとっては「怖ろしいこと」かもしれません。
でも、それを知らなければ、直人さんは晴子さんのもとに帰ることはないでしょう。

これを、母の盲愛と片付けることに、異議を申し立てるものではありませんが、狭い地域の
古い家の、因習と家族のしがらみに、がんじがらめにされてきた晴子さんへの、これが
天の仕打ちなら、あまりに気の毒・・・と、私は思うのですが・・・。

# by sala729 | 2006-08-25 16:07

槙原さん(48才・仮名)は、白いTシャツにオレンジのハーフパンツ。
さらさらの金髪に、それはみごとな褐色の肌と、対照的な白い歯を見せて笑いました。
もちろん、お約束のように、首には首輪のような金のネックレスと、ブレスレット。・・・・・(うーん)

「それがよぉ。六本木のディスコで知り合った彼女と、三回ばぁ、逢うたんよ。うんうん。月イチでね。いや、東京に友達がおりよるで、よーいくんよ。」
外見とはうらうらに、方言そのままで話す、槙原さんにちょっと高感度は上がった・・かもしれません。(苦笑)

「そいで、次はディズニーシーに行こかということになっちょるんやけど、一週間前に彼女で電話したら、男が出たんよ。もぉ、ビックリしたがよぉ。で、そん男が、さや(女の名前)とは、どんな関係?って聞くがよ。びっくりしてよぉ、そのまま電話切ったんよ。そしたら、二日後とその次の二回。うちに無言電話がかかったがよ。それも、オレが買い物帰るのを見計らったようにじゃよ。
そいで、昨日、これ見てよ。」と、差し出した、携帯には・・・

さやとは別れてください。そうでないと、あなたのどんなことがあっても責任もてませんよ。
今度の、ハイアットでも・・です。・・・・・・・・と、記されていました。
しかも、アドレスは、彼女と同じ。@マーク以下の電話会社名が違うだけです。


槙原さんは急に、怖ろしくなりました。

「どーいうことや?」と、彼女に確かめました。

「そいたら、彼女は、おとろしがってパニックになりよりましたがや。おとろし、おとろし言うて、
娘のボーイフレンドたらいうのに電話代わって、そいつが、なにかあったら力になりますよ。
ボクいろんな方面の人知ってますからって言うがや。」

「お嬢さんのボーイフレンドに電話代わるというのも、おかしな話ですよね。普通はそんなこと
しないでしょ?。無言電話や、あやしいメールは、彼女もご存知のことではないですか?」
私がそういうと、槙原さんは、首も折れよとばかりに、勢いよく横に振り続けます。

「いんや。それはないですろ。ほんまに、おとろしおとろし言うとります。あれは、演技やないがや
ですよ。」と、あくまで、彼女をかばいます。


「じつは、彼女に嘘言うとりました。ボクはバツイチ言うたんです。ほやけど、ボクには嫁がおります。このこと、何度も彼女に言おうか思う取ったんですが、なかなか言えんで・・」

・・・・・そんなことは、たぶん彼女もお見通しだったと思いますよ。・・と、いう言葉は胸に畳んで

「あらら・・でも、それならこのこと奥様には言えませんわよね。」と言うと

「いんや。もう言うちょります。嫁はぜーんぶしっとります。そいで、あんたの好きなようにしいやと言うてくれとりますがよ。」
「それはまた、ご理解のある奥様ですこと。」
「そーながや。ほんまに嫁はよう理解してくれちょります」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


つまり、槙原さんは、彼に連絡しているのが「誰」であるかが知りたいのです。
そして、そのことを、さやさんが知っているのかどうか・・も。
槙原さんは、さやさんのこと信じていますから、彼女を付け狙うストーカーじゃないかと思っています。そして、そのストーカーが逆恨みで、槙原さんに嫌がらせしていると思っています。

それならそれで、さやさんに、ストーカーの存在を教えてやらなければ・・と、使命感に燃えています。


「東京によく行かれるようですが、モテますでしょ?」・・私だって、仕事と思えば、お世辞のひとつぐらい言うことはあります。。。。すると、彼は身を乗り出してきて

「そーながです。言うちゃなんやけど、ボク、よーもてるんですがよ。一緒に行った友達もびっくりするがです。みんな、爽やかねぇ、言い寄りますんや。
「爽やかじゃねぇとか、イケメンやねぇ・・・言うね。笑。彼女もそう言うて話しかけて来よりました。
ま、ボクも努力はしとりますよ。ほら、この歯、これはデンタル美容で、綺麗にしてもろうちょります。そいから、毎日5キロのロードは、欠かしたことがありませんけに。ほら、」と、
半袖シャツから見える腕を更に捲り上げて、力瘤を作って見せます。

そして、やにわに立ち上がると、 ばっ と、Tシャツの裾を捲り上げると
「ほら。どーですやろ。腹筋も、なかなかのもんですやろ?」と、白い歯を見せて、にっこりと
笑います・・・・(沈・・沈)
・・・・(本心から叫びたかった・・・です)

超自己愛男の、槙原さんと別れ、自宅に向かう私の携帯がブルブルとなります。
知らない電話番号なので不審に思いながらも、出ると・・・

「あ、Aさん、すんません。じつはうちの嫁が、どーしてもご挨拶したいと言いよりますんや。」と、
奥様と電話を代わります。

「槙原の家内です。このたびは、よろしくお願いいたします。」
落ち着いた声です。
こちらこそ・・・とお答えしながら、こんな夫婦もあるのだなと・・今更ながら、世間の広いことを
実感しました。。。。

# by sala729 | 2006-08-23 11:07