emoticon-0114-dull.gifくどいようですが、すべて仮名です。


「お久しぶりです。野島です。」と、男性にしてはハイトーンの声が電話口から流れてきたとき、三年前に依頼者だった野島昌治さんの顔が、すぐに思い浮かんできました。

「ホントねぇ。三年ぶりね。」
「いえ。もう四年ですよ。」
…・・あらら、私の記憶力にも翳りが・・これも年ということなのか(^^;)

「それでまた何かやっちゃったの?」
「やっちゃったって・・ヒドイなぁ。あの時だってボクは何もしてませんよ。被害者なんだから・・」

そりゃそーです。三年前の野島君は、俗に言う「デート商法」に綺麗に嵌められて、使いもしない、贈る相手もいない、ダイヤの指輪と、パールのネックレスとペアのイヤリングを、200万近い金額で買わされて、しかもそのときの
販売相手の女の子と結婚するつもりでさえあったのです。
(ま、デート商法というのはそういうもので、私にプレゼントしてぇ~なんて
甘い言葉にコロリと騙されて、屑みたいな宝石を法外な値段で買わされるもの
なんですけどね。)

相談に来たときは、まだそれが商法とは微塵も疑わず、連絡の取れなくなった販売の女の子を心配して、その子がどこにいるのか、どうしているのか知りたいというものでした。

もちろん調査は進み、彼女のことは判明し、同時にそれがデート商法であったということが、野島君自身にも判ったのですが、その後については、まったくの音信不通でした。


「いやぁ、あの時はお世話になりました。あのとき、Aさんに相談してなかったらと思うとぞっとしますよ。あっはは~」
「いえいえ。それであの子とは話したの?」
「しましたよ。ボクはあの子と結婚する気だったから、あの指輪やネックレス買ったんですから、結婚しないのならいりませんよ。」
「じゃ、返したの?」
「いや、あの子がもう、いらないって言ったんです。結婚してくれないなら、こんなものいらないって言ったら、結婚はできない。でも、悪いからもうそれも返さなくていいって言ったんです。ボク、半分しか払ってなかったから、なんか気の毒になって、返すというのに、あの子いらいなって・・。いい子でしたよ。」
…・・って、あなたねぇ・・いい人なのは、あ・な・た・よっ。
あんなものの価値は言い値の10分の1もないのよ。それを半分払ってあとは
チャラにしてくれたからいい人って…あなたのほうがよっぽど「いい人」よ。。

でも、ま・・本人はそれで喜んでいるし、納得もしていることだし、それを今なら波風たしなくてもいいか…と、私は言葉のひとつひとつを飲み込みました。


「それで、今日はなんの相談?」
「それがですねぇ。ボク、ある人にお金貸してるんですよ。その人と、連絡とれてたんですけど、一週間ぐらい前から急に携帯繋がらなくなって・・。それでちょっと心配になったんですよ。」
「ある人って、女性?」
「へへへ・・ま、そーですね。」
「いくら位、貸してるの?」
「500万、600万くらい・・」
…・600万って、あなた…軽く言うけどねぇ・・
「それって当然、借用書とかはあるわよね?」
「いや、最初の100万だけであとは、ないんです。でも、全部メモって
ありますよ。ちゃあんと。」
…・なに威張ってるのよぉ。まぁ、確かにあなただけではないけどね。
借用書なしで大金貸す人がいかに多いか・・この仕事してたらよーく判ります。

「うーん。借用書のない分は難しいわねぇ。まぁともかく会社にいらっしゃいよ。話、聞いてあげるわ。」


野島君の話によると…
お金を貸した相手は、福田美里。24歳。5年前に、出会い系で知り合った(野島君は、はっきりとは言いませんが、私の目に狂いはないでしょう。笑)らしいのです。
始めは、サラ金から借りてると相談され、そんなところから借りたんじゃ、利息が大変だからと、男気をだして貸してあげたそうです。
すると、それからあとも…
携帯代、お家賃、病院代、車検代…などなどと口実作っては無心され、それがたまりにたまって600万…。
最初の一年くらいはなんとか返済していたらしいのですが、もう返済も滞って
何年にもなります。
その間でも、携帯はつながっていたので、野島君は安心していたらしいのですが、それが繋がらなくなり、心配になった・・ということらしいのです。


美里さんはあっけなく見つかりました。
そして、二人は話し合いをもちました。もちろん、介添えもついて・・です。

そこで、野島君は、美里さんに彼がいて、彼女もその彼の肩代わりでサラ金からお金を借りていたことが判りました。
そして、その彼も、いま彼女から逃げているのです。
「よかった。いつ見つかるか、何時見つかるか、心配で心配で、生きた心地がしなかった。見つけてくれてよかった。」
そんな、美里さんが、愛らしいと野島君は思ったようです。…ハアァァ(溜息)

「Aさん、あいつ(美里さん)の、元彼、捜してやってください。あいつも、それで苦労してるんですから、元彼だけラクするなんて、ボク、許せませんよ。
あ、もちろん、調査費用はボクがだします。」

・ ・しばし、あ然…
第一「元彼」って、「今彼」かもしれないじゃないの?
それに、美里さん自身が、捜すこと望んでいるの?

「あいつも捜したいって言ってます。でも、お金がないって。」
…お金がないって、そりゃそーでしょ。ないから借金から逃げてるんでしょう?
それに、捜したいって、彼と逢いたいのか?お金を返して欲しいのか、そこんとこ彼女に問い詰めてみたの??

そりゃあ、やりますよ。
うちは「人探し」の会社ですからね。
捜しますよ。ご依頼なんですもの・・
それにしても…野島君
君の下心は、美里さんには見え見え、だと思うよ。
君が相手にするには、美里さんの方が百戦錬磨。歯がたたない・・
それでも、このことを野島君に伝えることが親切なのか、余計なお世話なのか
それは、その人にしか判らぬことなのですよね。
すべては結果を出してから、それから考えることとしましょう。
いつもの、上司の言葉のように・・
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by sala729 | 2008-04-30 12:15 | Comments(4)

emoticon-0122-itwasntme.gifもちろん言うまでもなく、すべて仮名です。


今までも、いろいろな人たちを見てきました。
女性も男性も、みんな何がしかの疵をもっていますし、太平楽に生きている人なんて、まずいるはずがない・・とも思っています。
子供でさえも、重荷に喘いで坂道を転がりおちかねない・・というのが昨今の
事情であることに異を唱える方は、そうはおりますまい。

そんな中で、野村結香さんは、気が滅入るばかりの事情を抱えて相談にこられました。
春の陽射しの下では、儚すぎるほどの白い肌を帽子で隠して、伏目勝ちに向き合った顔は充分に美人と称されるはずなのに、26才の瑞々しさも、華やかさも感じられませんでした。 

「何から話せば…長い話なので…」
それでなくても下を向いて、消え入りそうな声で話すものですから、私は何度も聞き返さねばなりませんでした。
そのたびに律儀に顔をあげて私を見返すその口元には可愛らしい八重歯が覗いて、そこだけ切り取れば20才前にさえ思われます。

「何からでも、長くても大丈夫ですよ。気にしないで、思いつくままに話てください。」

「はい。…・私が、彼と出合ったのは…


結香さんは、2年前に派遣社員として市内の会社に入りました。
いろいろな資格を有している彼女はすぐに頭角を現し、その部署の責任者の、中園透さんに気にいられたのは当然の成り行きだったでしょう。
おっとりとした性格が顔に表れている中園さんは、34才には見えない童顔で
その部署の女の子たちの、ちょっとした「あこがれの的」であったようです。
そんな中園さんが、後発の派遣社員の結香さんに、好意的なものですから、同僚女性の反感を買わないわけがありません。

しかも、中園さんは子供はいないものの、10才年下の奥さんと結婚して三年目という間の悪さ…。
当然、やっかみは「噂」になり、噂は捻じ曲がって、二人はいつしか「不倫関係」とかげで囁かれるようになりました。

ところが、男女の間とは不思議なもので、それまでなんとも思わなかった結香さんも、そんな噂が流れるようになると、なんとはなしに中園さんを意識するようになり、そうして、二人は本当の「不倫関係」に陥ってしまいました。

そうやって付き合っていると、結香さんに、中園さんという男の本当の姿が見えてくるようになります。
中園さんの優しさが、優柔不断の裏返しで、人当たりのよさが、八方美人の代名詞と気付いたときは、もう「そんな彼が好き」と思い込んでしまう関係に二人はなってしまっていました。

付き合って一年がすぎる頃、中園さんに借金があることが判りました。
出会いサイトで知り合った、幼い妻は家事を一切せず、毎晩であるく毎日、結香さんと出遭うまでの彼は、毎晩就業までパチンコ通いの日々を暮らしており
そのためにできた借金だといいます。
彼が、結香さんに頼み込んだわけではありません。
でも、彼の口からその事を聞いた結香さんが放っとけるはずがありません。
今まで、貯め続けた貯金をはたいて、それを返済させました。

その次にでてきたのは、別の女性問題です。
もともと「もて系」の彼には、言い寄ってくる女性も少なくありません。
そして、そうやってきた女性たちを、断るということが彼にはできないのです。
受け入れることは、相手女性に期待をもたせます。
いくら彼が、「妻がいる」「恋人がいる」と言ったところで、ずるずると関係を
続けている以上、女たちもそれを望みます。

そんな関係が折り重なって、幾重にもからまってとうとう抜き差しならなくなった彼は、手首を切り、血まみれの手で携帯電話を取り出し、結香さんを呼び出しました。
そのときは、結香さんの機転で、救急車を呼ぶこともなく、何事もなかったかのように処理できたのですが、これが終わりではありませんでした。

その日から二週間もすぎないある夜
「ごめん。逝くね。」と、結香さんの携帯に留守メッセージ。
動転した結香さんが、探し続けてもしやと、思い当たった二週間前の現場にいくと、そこに彼の車。
彼はその中でぐったりしていました。


それからは、何がどうなったのかよく覚えていないと、結香さんは言います。
幸いにも一命は取り留めたものの、彼には重い後遺症が残りました。
それも、結香さんには、何の知りようもありません。

救急車に同乗して病院に向かってすぐ、彼の妻という金髪のヤンキー崩れのような女が現れ、口汚く結香さんを罵って、彼の両親がその女を引き離して、結いかさんに自宅に帰るようにと言って…・。

気がつくと、結香さんには、派遣会社から待機命令が出ていました。
彼の妻が、周囲に「あの女のせいで旦那がこんなことになったんよ!」と、叫び倒し、触れ回った結果です。

事実上の解雇でしょうね・・と、結香さんは淋しく笑います。



「彼のご両親は、うちにきて、母に謝ってくれました。ばか息子がこんなことをしてって、申し訳ないと・・。でも、私と母に、こんなことになって今更、あなたのところに帰るわけにはいかないし、嫁が離婚しないと言い続けている以上、自分たちにできることは何もない。あなたも息子のことは忘れてほしいと、頭を下げられました。」

……対処としてはなかなか立派な親御さんだと思います。

「判ってるんです。彼のご両親の言うことは・・でも、でも・・私は、私はやっぱり、彼が今どうしているか知りたいし、彼の奥さんが、本当に奥さんらしいこと彼にしてあげているかどうか知りたい。この目で確かめたいんです。」
そう言って、一杯に溜めた涙を一滴落とすと、あとは溢れるにまかせて、静かな嗚咽をくりかえしていました。


そう、私はもう何人ものこういう女性を見てきました。
誰が見ても聞いても「だめ男」としか思えない男に、身も心も捧げつくして、何も得ることを望んでいない女性。

それを世間の人たちは「おんなじだめ女」と言うかもしれません。
そうなのかもしれません。
でも、職を奪われても、彼の妻から罵られても、世間の冷たい目にさらされても、重い後遺症に冒された恋人を案じて、その消息を知りたいという彼女の心根を、だめ女とあざ笑うことができるでしょうか?

彼女は悔いていました。
なぜもっと早く見つけられなかったのか・・
もっと早くあの場所に気付かなかったのか・・。

私は思います。あれは彼の計算ミスなのではないかと。
狂言のつもりで、同じ場所で同じように自殺を図ったのに、動転した彼女がその場所に気付くのが遅れた結果ではないのかと・・。
もしそうだとしたら、彼こそ、許されるべきではありません。
優しさは、毒薬よりも、残酷に確実に、彼女を蝕んでいます。

そんな彼女の望みを叶えてあげることは簡単です。
それで、結香さんが自分の人生を取り戻せるのなら、喜んでお受けしましょう。。
でも、彼女は今、迷っています。
そうすることで、自分を見つめ直せるのかどうか自信がないと言います。
あと二日…
その結論がでるまで、お待ちすることになりました。

私は、結香さんの結論を何度でもお待ちしょうと思います。
何度でも…
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by sala729 | 2008-04-24 12:57 | Comments(2)

emoticon-0136-giggle.gif もちろん、すべて仮名ですし、特定できるような設定には多少手を入れています。


黒フレームのめがねに、白の鹿の子ポロシャツ。生真面目に対峙した、黒崎祐司さんは
36才。
少し時代がかっているとはいえ、豊かな髪と容貌は決してイケてないわけではありません。
仕事も、家業の鉄工所の跡取りですから、経済的にもなかなかのものです。
それなにの・・・・なのです・・・・


「今までにつきあった女性がいないわけではないのです。でも、ぼくは長男なので・・
それであの、家族に責任をもたないといけないですし・・・」
ずりおちかけた眼鏡を、現場仕事には珍しい細い指でかきあげながら、一生懸命に彼は
説明するのです。

「それでいままで結婚に至らなかったと?」
「そーなんです。いろいろ真面目に考えたら、相手の人に望むことばかりで、それで交際が
続かないんです。」

要するに、「相手がひいてしまう」・・・と、いうことですよね?(笑)

そりゃあそうでしょう。。
よくよく話を聞いてみれば、はじめのデートから、相手の両親の出身地。職業、親族の血統
病歴、犯罪歴などを問い詰められたら、誰でも同じ反応示すでしょうよ(呆)

「いやでも、それは真面目に結婚のこと考えたら当然のことだと思ってました。やはり
相手のこと判らないと、結婚を前提にはお付き合いできないでしょう?」

そりゃあそうですが・・・・

「でも、はじめの初めから、結婚を前提に交際する人ばかりではありませんよ。結婚するか
どうかは、交際してから、決めてゆくものだとほとんどの人は思っています。
それなのに、最初から釣書みたいなこと聞かれたら、ちょっと考えるのは普通の女性じゃ
ないでしょうかね。」


「そうだったみたいですね。僕も最近はじめて知りました。ぼくが間違っていたと・・・
でも、そうなってからは、もう誰もいなくなって、そんなときに、万里絵さんと出会ったん
です。」
そういって恥ずかしげに俯く黒崎さんは、まるで少年のようです。
(ちょっと気持ち悪いけど・・・苦笑)

「でも、万里絵さんは、とても厳格な家で、門限は10時なんです。34で、ですよ。
それに、今まで男性と交際したことがないはずはないし、うちの両親に会って欲しいと
言ったら、なかなかいい返事はくれないし・・・。第一、自分の両親の出身地のことは
かたくなに言わないんですよ。
それが、気になって・・・」

「なぜです?:厳格なおうちは立派なことじゃないですか?ご両親云々については、まだ
彼女のなかで、気持ちが決まらないというだけじゃないですか?」

「そうでしょうか? ぼくはやっぱり長男ですから、家を継がなくてはいけないし、嫁いだ
妹もまだ嫁をもらう前の弟もいます。
きちんんとした人でないと、うちの母とも上手くやっていけないと思うんですよ。ぼくは
昼間仕事場に出てますから、母といざこざがあってもかばってあげられないし、工場の経理
なんかも安心して任せたいし、親戚との付き合いも、なんとかして欲しいし・・・」

これ、一応「現代青年」の結婚観なのですよ。
ここだけ切り取ったら、戦前の長男の嫁取観かと思いますよ。

「それで、ご自分で彼女のことお調べになりたいというのですね?
:結婚のための調査をご自分でなさりたいと?」
「そうです。へんですか?」

「へんとは言いませんが、ご自分で相手さんのことをお調べする方は少ないです。親御さん
がお調べになることを、反対される方は多いですけど、まぁ、珍しいケースですね。」

調べられる彼女が、ちょっと気の毒かな・・・という言葉は飲み込みました。

そして、調査結果がでたら、晴れて万里絵さんに求婚するという黒崎さんに違和感を
感じながらも、調査はお受けしました。


調査の結果はでました。彼女や両親にはなんの問題もなく、結婚調査としては良い
お知らせができると、私は思っていました。
ところが・・・
親族のおひとりに、未婚の母がいらして、その方が子の父から手切れ金かわりに
土地と家をもらっていた事実が、黒崎さんにはひっかかったようです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・しかしねぇ・・・・親族ですからね。


迷い、悩み、考え、渋る気持ちを抑えて、黒崎さんは、万里絵さんに求婚しました。
すると・・・

「彼女から、考えさせてくれと言われました。」と、黒崎さんから電話がありました。

ぇぇ?????
だって、結婚をするからと調べたんじゃないの??
自分が求婚したら、すぐにでも彼女はOKするって言ってたじゃないの。。

これって、もしかしたら、黒崎さんは結婚、結婚ってひとりで騒いでいたけど、万里絵さん
のほうは、そういう気持ちにまで、まだなってなかったのかも・・・・


それにしても、親族のプライベートなことにまでこんなにこだわる、黒崎家に入っても
万里絵さんは幸せになれるでしょうか?
姑と争ったとき、この人は嫁の味方になってくれるでしょうか?
そんなことを考えていたら、この結果を盾に、万里絵さんのほうが、結婚断ったら面白い
のに・・・なんてことを考えてしまいました。。(笑)
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by sala729 | 2008-04-22 00:01 | Comments(3)

さて、和霊千壽様の恋人の、居場所の確認は思ったよりずっと早く判明しました。
もちろん、彼女の祈祷の成果でないことは言うまでもありません。

彼はある関東圏の都市で、市民センターの講師として登録していました。
もっと詳しく調べてみると、彼には同居女性がおり、現在のマンションと、ライフラインはすべて
彼女の名義になっていました。
その女性は、23才の大学院生で、もちろん未婚です。

要するに、千壽さまは「乗り換えられた」ということです。。。(--)

まずはこのことを連絡しなければなりません。
それと、家出の場合は引き合わせるというのが原則ですから、当然成功報酬として頂かなければならないものもあります。

「彼は、女性とすんでいるようですよ。」
「ぐうえっ。。そ、そんな・・・私の私の今まではどうなるのぉぉぉ~。尽くして尽くして、尽くし続けた今までのわたしは・・・・」
電話の向こうで、喚き散らす千壽さまにかける言葉がありません。


聞いたところによると、10年以上の長い月日を彼に捧げつつけてきたというのです。
生活の場はもちろん、衣食も車もお小遣いもすべて千壽さまがみてきたというのです。(うーん
・・・祈祷というのは、腰すえてやればなかなかのものですねぇ。笑)

「そ、その女は、若いのですかぁぁ??」
「23才の大学院生らしいですよ。」
「23!!!!!・・・・・23.。。。そ、そんなに若いおんなが~~。」(もーなんだか、せりふのひとつひとつがオカルトチックなこと・・・)

「それで、お引き合わせのこともありますので、成功報酬をお振込みいただかなくてはならないのですが。」

「そんなものは・・・・・ありません。もう、お金は一円もありません・・・・うぅぅぅっっ。私は、私はどうしらいいのぉ。」
電話口で泣き続ける千壽さまが哀れです。

たしかに、基本調査料さえすぐに払えなかった、千壽さまに、成功報酬は難しいでしょう。
でも、当然、成功報酬については、最初のときにお話もしていますし、納得もされているのです。
もっとも、そうでなければ、普通は誰も契約はしないでしょ?


「困りましたねぇ。・・・それではお引き合わせはできませんが、情報はお渡ししますから、それで
調査終了ということにいたしますね。」
お気の毒ではありますが、仕事は仕事です。そう何度も、特別扱いはできません。

「あ・・・・で、でも、でも、女のことはもっと教えてください。名前は?
どんな女ですか?・・・きれい?・・・・・スタイルはいいの?
誰に似ているの?・・・・・脚は??・・・・・・・・・・・・・・・・・・眼は????」

そんな矢継ぎ早に聞かれても・・・・
第一、そんなに詳細きいてどうする気なんでしょう?
まさか、これから本腰入れて、祈祷するかしら???
彼女を呪い殺すとか・・・・おぉぉブルブル・・・


「お、お金は用意します。だから、だから・・」

また来たっ!!・・・・お金は用意しますって・・・・・また、呪いの安売りしょうというのかしら???


じつは前回の、お金は、かつての信者さんたちに片っ端から電話かけまくって、半額にするからって、祈祷を誘いまくったものの、単価が半分なものだから、結局合計は、従来の半分にも満たず、その割にハードすぎる祈祷で、千壽さま自身が、それまでの過労もあってか、ばったり倒れてしまい、見かねた助手兼巫女の20才のお手伝いの、みよちゃんが自分の貯金と親から借りてあげたという、「心温まる(?)お話」付だったのです。



「まぁ、ちょっと待ってください。どれだけお伝えできるか、調査に図ってみないと判りませんから
判り次第お知らせはします。」

「すぐにお願いしますね。すぐに・・・護摩炊きしないといけないし・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・護摩炊きって、やっぱり、やる気なのかしら?

・・・・えっ・・・もしかして、もしかして、信者さんじゃなくて、本当に相手の女を、呪うつもり???
ま、呪いが本業ですから、それはある意味当然かも・・・・・なんて(--;)(--;)(--;)


彼と女の資料を前に、どうやって千壽さまの「お怒り」を鎮めながら、事実をお伝えするか、
下手をして、呪いがこちらに来ることはないかと思いながら、でも、自分の恋人も探せない
程度の呪力だしね・・・・
なんて、思ってしまっている自分がいたりして・・・・
春のうららは、迷いと思いが、散り始めた桜の花びらに貼りついたような、そんな時間が過ぎていきます。。。
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by sala729 | 2008-04-17 22:38 | Comments(5)

emoticon-0128-hi.gifここに記載されている個人名等の固有名詞は仕事の性質上、すべて仮名としております。
また内容についても、事実ではありますが、設定は多少の変更を加えている場合があります。




その家は、見るからに奇妙な門構えでした。
和洋折衷の母屋のとなりに、ちんまりと佇む離れが、彼女の仕事場・・・そう、そこが「祈祷所」だったのです。
「和霊千壽(われいせんじゅ)詔賜所」という仰々しい墨書きの看板を横目に祈祷所に入ると
まだ20代と思える若い女の子が、すっと近寄って「千壽さまがお待ちです」とささやきます。
・・・・・・なに?この雰囲気・・・このモード・・・・
これって横溝正史の世界じゃない???・・・・・・・・・・・・・
でもねっ。でもでもでもでも・・・最初に電話してきたのは、ここの「和霊千壽」さまなんですけどぉ・・・
と、口から飛び出しそうになる呪詛を飲み込んで、私は女の子のあとに続きました。




私が千濡さまのお電話を、うやうやしくも承ったのは、二時間ほど前のことです。

「あ、あ、あのあのあの、、、、あのぉぉぉ」

・・・・あらら、またか。春だものねぇーと、正直その時の私は思いました。彼女は、それほど取り乱しておりましたし、支離滅裂、語彙不明、まさしく春先に発病されたのかと思いました・・・


「はい。どうぞごゆっくりでいいんですよ。どうなさいました?」
それでもそんなことにめげていたのでは、正しい相談員は務まれません(って、正しいってどんな???)
「彼が・・・彼が家出しちゃったんですぅぅぅぅ。うっぅぅぅぅぅくくっくくくく・・・しくしく・・・よよょょ
もうあとは言葉になりません。
それをなだめすかして、慰めながら、やっと聞き出したところによると、彼女には20年近くの
関係を持つ彼がいました。
でも、彼には妻子があって、いわば彼女は内縁の妻であったわけです。
彼は、妻子が離婚に応じないからと生活費と養育費を送り続け、彼自身の生活はすべて彼女が見ていました。


彼は有名な(彼女が言うには・・です)作家で、東京の出版社からもう何冊もベストセラーを出していると言います。・・・・でもですねぇ
自慢じゃないですけど(ホンとはちょっと自慢ですけど・笑)何冊もベストセラー出しているなら、そのうちの一冊くらいは私は知ってるはずです。
なんたって、行方不明になったら本屋を探せと言われているくらいの私です。
そんな作家なら、名前に聞き覚えがないはずがありません。


もちろん、そんな作家さんぜーんぜん知りません。
もっとも彼の名誉のために、言っておきますが、確かに彼は本は出していました。
アマゾンで検索しましたら、確かにありました。
とても、としてもマニアックな、自費出版本として。。。。。


さて、彼女はその彼を探して欲しいと言って来たのです。
もちろん、探せますよ。それが仕事です。

そして、お会いするために、彼女のお名前とご住所と、お仕事をお聞きしたのです。
すると・・・
「和霊千壽と言います。。●●市永井町××・・し、
仕事は・・・祈祷師です」




・・・き、祈祷師・・・祈祷師ってあの祈祷師??
人探したり、人の行く道占ったり、相手を呪い殺したり・・する、あの祈祷師??
って、それ相談するところが違うでしょう!!
あなたが占うんでしょうがぁぁ。。。。

な~んてことは言いません。(笑)
祈祷師様とて人の子です。愛する者をなくしたら探したいと思うのは、恋する女の常なのです。恋の前に、祈祷師も看護師もありません(すみません。看護師さんというのは、言葉のアヤというもので・・・)



それで今私はここにいるということなのですが。。。。
映画やテレビで見たことのある、護摩木をくべる四角い・・あれはなんと言うのでしょうね。
映画ではいつも、メラメラと燃えて、炎があがってその前で狂ったように祈祷師が釈伏している
のですが、現実は何も燃えておらず、冷え冷えとした灰色のけし炭が木枠の中で白々と置かれ
ここで護摩木が焚かれたのはいったい何時のことなんだろう?

そしてその前に、今にもくず折れそうに鎮座しているのが、ここの主、和霊千壽様らしいのです。

しかし、その千壽様、やつれ果てているというか、疲労困憊というか、座っているのがやっとという有様で、ゆらゆらとゆれながら話すしぐさは、さすが祈祷師という「妖しさ」をかもしだしはいましたけれど・・・。


状況をお聞きすると、どうやら彼には、また別な女性ができたみたいで、要するに彼は「浮気男」で、千壽さまはその彼の浮気心が見抜けなかった・・・と、いうことのようです。

「判りました。お探しすることはできます。でも、これはかなり広範囲になりますし、彼の女性関係はなかなか華やかなようなので、ある程度のお時間はいただきます。
費用も、それなりにはかかると思いますよ。」
やんわり言って、見積書をお見せすると、

「わぁっ!」と、のけぞってその見積書を手にしたまま、わなわなと泣き崩れる千壽さま・・・。
「お金、お金ないんです。彼がいなくなってから、祈祷する気にならなくて・・・誰もこなくなって・・
持ってたお金は全部、彼が持っていってしまったし。。。。」


それはお気の毒な・・・と、心から同情はしますが、だからといって、無料で・・・というわけにはいきません。かといって、信者さんをご紹介するわけにもいかず・・・


「まってくれませんか?三日だけ。三日待ってください。必ず作りますから・・・お願いします。」

祈祷師さんに手を合わせられたら、「いいえ。できませんっ」と、無情に振り切るわけにはいきません。逆恨みとはいえ、「呪い」をかけれたら、たまったものではありません。

物分かりのいい上司に頼み込んで、三日間お待ちすることになりました。



さて三日後・・・
千壽さまは、ちゃんとお金は用意されておりました。
さすがです。
「祈祷師さんは嘘つかない」

でも、これってどうやって作ったんだろう?
祈祷再開しましたって、お客さんたちに電話でお知らせしたのかしら?
お客さんたちに、お金もってこいって「呪い」かけたのかしら?
などと思いながら、調査のための指示書を書いている私です。。。。
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by sala729 | 2008-04-15 21:50 | Comments(2)

長い間不在にいたしまして申し訳ありませんでした。
いろいろおもうところがありまして、今日まで勝手をいたしましたが、私がメインを変えると、早々に変えたのねと、コメントをいただき、うれしく思いすぐにお礼を伝えるべく、ここに舞い戻ってまいりました。

長く続けていると、それなりにマンネリという言葉の虜になり、綴っても、綴っても、物足りなくて
ずるずると空白時間を作ってしまったのは、まったく私のわがまま以外の何者でもありません。

もともとは、こういう「仕事」があることを知っていただきたくて、ブログをはじめました。
「事実は小説より奇なり」ということばそのものの事実があるということを、私もこの仕事を通して知りましたし、私がこんなにもこの仕事が好きだということを、誰かと分かち合いたくて、ブログを
はじめました。

いまもその気持ちが変わらないことや、こんな拙いブログでも、見ていてくださる方がいることを
励みに、また再開させていただきます。

どうぞ、これからもよろしくお願いいたします・・・・・・・・・・・・・・・・相談員
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by sala729 | 2008-04-15 21:00 | Comments(5)