そうですねぇ「一卵性母娘」という言葉が世に出て、もう何年になるでしょう。
今では、みんなずっと昔からあるようなかんじで、フツーに使っていますけれど、最初に耳にした時は うへぇ とか思ったものでしたよ(^^)
でも、子供をもって、その子が段々に成長していくのを目の当たりにすると、いつしか「子供」というより「同志」に近くなる・・・という感覚は経験しました。

対等に意見を求めたり・・・私は、見栄っ張りですから、そう感じていても、対等なんて相手には言いませんよ。でも、相手もそれが判っていて反応するのですから、ある意味、相手のほうが大人・・かも(苦笑)

ま、ともあれ、こういう感覚は、娘をもった身であれば、覚えがあったり、いつかは体感することなのですが、これが四六時中・・・となると、ちょっと周りは閉口するかも・・・。ましてや、娘の婚家まで出向いていっての「世話焼き」となると、これはもう単なる「おせっかいババァ」にすぎないですね。
今日は、そんなお話をひとつ・・・


前畑玲子さんは37才。夫は某医科大学の医師です。
もちろん大学病院ですから、大学での講義ももっています。
子供は二人。二人とも田舎には稀な私立の小学校に通っています。
玲子さんの実家は、当地で長く続いた化粧品店で、お店は兄夫婦と従業員が回していますから
お母さんもお父さんも悠々自適・・・という生活です。
・・・・・・そう、いわゆる田舎の「エグゼ」というやつですね(^^;;)

その玲子さんは、当然、自尊心も高く、周りの目から見ても「プライドの高い奥さん」と、見られていたことでしょう。
その玲子さんとお母さんの美也子さんが揃って相談に来ました。
・・・・・ま、正確に言うなら、相談のために私は真夏の公園に呼び出されました。

「ごめんなさい。あーいうところに行くのは、ちょっとね。怖いんでよ。どんな人がいるかも判らないし・・」
細面の綺麗な顔を思いっきり顰めて、玲子さんは話し始めました。

・・・・・・そりゃあ判らないことはないですよ。会社に来られるのがいやだと仰る方は時々います。
でも、でも・・・・この連日35℃や39℃の炎天下、クーラーない部屋で、お年寄りが「熱中症」で亡くなっている昨今にですよ。
真昼間、なんの遮蔽物もない公園のこのベンチに・・・・女が三人。
汗だくになりながら、ハンカチと扇子でパタパタと扇ぎながらの二時間・・・
ええ。ぇぇ。それはもう・・灼熱地獄ですわよ。(怒)(怒)(怒)

別に公園でなくとも・・・・と、言うと
「いいえ。喫茶店なんかダメです。誰が聞いてるか判りませんもの!」と、お母さん。
うんうんと頷く玲子さん。

そして玲子さんの夫が浮気をしているという話が延々とつづきました。
聞いているほうは、頭がぼんやりとしてきます。くらくらくら・・・・・・・@@

浮気相手は、玲子さんが
「同じマンションの女よ」と言えば
「そうそう。でも、病院の看護師も臭いわよね。」と母。すると
「うんうん。それもありよね。」と、なんとまぁ、撃てば響くような・・・テンポのよい会話ですこと。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お互いの顔を見つめあって、まるで「漫才」でも聞いてるような、相性のよさです。

調査をするかどうかは、母が決めます。
まぁ、お金を出すのも母ですから、それもよしとしましょう。
でも、今後の連絡も母にしてくれと言うのです。
母から玲子さんに伝えると言うのです。
伝言ゲームじゃあるまいし、正しく伝わらないといけないので、直接玲子さんにしますというと
二人ともに、しぶしぶと・・・OK
そのときの、悪い予感は的中!!

当日、玲子さんからは
「今どうなっています?」
「し、主人は、どこ?女は???」と、メールがひっきりなし・・・
その間隙を縫うかのように、母からは電話の問い合わせが・・・・・・
しかも、あとでお聞きすると、そのとき二人は同じ部屋にいたと言うではありませんか・・・(--)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あのね、君たち!!
私の言うこと聞いてなかったの??!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・口からあふれ出そうになる言葉をぐっと呑みこんで、伝達はおひとりに・・・・と、言うと
「では母に」
「では娘に」
と、これまた、相変わらずの右往左往・・・・・・


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぁ、依頼者ですからね。
とは言うものの、玲子さんの夫にしても、父にしても、この母娘のべったり行動のことは、どう思っているのでしょうね。

母親としての気持ちは判らないでもありませんが、でもあなたのこの行動が玲子さんの心を
ある意味追い詰めているのですよ・・・と、言ったところで美也子さんにわかるでしょうか?

母と娘は、お互いを投影しあいます。
反発する時期もあり、判り合える時期もあり、協力しあえる時期もあるのです。
そして、そうした幾多の時期を経て、労わりあったり、共感しあえたりする時がくるのです。

母と娘は「同志」ではあっても、「卵生双子」であってはいけない・・・・
ましてや、どちらかに、自分以外の家族がある場合は、自分は自分であって、その母にも娘にもなれないのです。
そして自分の家族は、その唯一の自分と家庭というものを作っているのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・自分は自分以外にはなれないし、誰かが自分になることもできない。
だからこそ、大切にされるし、大切にしたいものだと・・・・灼熱の公園のベンチで、薄れいく意識を掻き戻しながら、しみじみと思い込んだものでした。。。。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・今年の真夏日は過去最高でした・・・・そんなお天気予報の言葉に
私の中で「ぷっつん」と、何かが音をたてたようでした・・・(^^;)


 
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by sala729 | 2007-08-31 10:55 | Comments(2)

なんとも珍しや「夏風邪」なるものをひいてしまいまして、年毎に衰えていくわが身の体力と、相反してますます血気盛んになるわがまま病との格差に、おのが理性がついていかないのが怖ろしい日々をすごしております(笑)

そんな日々の中で、久々の宮部みゆきさんの新刊「楽園」を手にしたら、もうやめられないとまらない状態に陥り、昨夜、上・下巻ともに読み終えてしまいました・・・(^^;)
私の唯一の道楽といえば「本の大人買い」ってやつですね(大人気ない買いと家人はカゲ口叩いておりますが・・)
本屋さんは私のオアシス。行けば手当たり次第ですから、わが町にようやくやってきた「紀伊国屋書店」の進出には歓喜の涙を・・・こぼしてはいませんが(^^;)(^^;)
それでも、広い店内はもとより、なにより嬉しいのは宅配無料という制度!!
なんと4000円以上買うと、無料配達というではありませんかっ!!
しかも、買い物かご付きカートが入り口に置かれ、もう感激っ!!(こんなもん使うの、アンタくら
いやで・・と、家人は言いますが・・)

そのとき購入したのが10冊ほどでしたが、もちろん一番に手にしたのは「楽園」ですわよ。
宮部みゆきさんはデビュー作「われらが隣人の犯罪」からの大ファンで、ファンタジー系の作品以外のものは、すべて初版で読んでおります。エッヘン・・と、いばるようなことではないのですが、しかもそれを取っておくなんてことはしない性格で、読み飛ばしては誰かにあげたりなくしたり、今では娘がせっせと古本屋に売り歩いているようですが・・・(苦笑)

・・・・・・・で、感想は??・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・めめ
・・・むっむむ・・・「パーフェクトブルー」と「龍は眠る」と模倣犯」をクラッシュして、氷をぶちこんただ(・・すみません下品な言葉づかいで・・)ジュースみたいですね。
・・・・なんのことやら、わからんがなと思われる方もおりましょうから、ちょっとだけ、僭越ですが
ご説明を・・
昔、彼女の作品には超能力を使ったものがいくつかありました。
でも、それは力を誇示するのでも、賛美するのでもなく、むしろそれを持ってしまったが故の不幸がテーマになっていました。その代表が、「パーフェクトブルー」であり「龍は・・」です。
そして、「模倣犯」は、言わずと知れた彼女の9年前の大傑作。
近年映画にもなりましたね。(あれにはがっかりを通り越して、腹立たしささえ感じましたが)
それらが混在となっているという・・・そんなかんじが「新しく」ないのです。
どのシーンも、どの台詞もどこかでいつか見たような、誰かが喋ったような・・・そんなかんじ。
それがなつかしくもあり、物足りなくもあり・・というかんじですね。
前作の「名もなき毒」にも使われていた手法ではあるのですが、あの時のほうが、ずっとずっと
新鮮でしたね。杉村というキャラが生きていました。

でも、今回の前畑滋子は、成長もしていないし、生き生きともしていない。これはなぜ?

不満ではないのです。流石だな・・と、感銘もするのです。でも、なぜか物足りない。
心がはためくような「共感」が薄い・・・。いえいえこれは超能力というものが、現実的でないと
思っているからではないですよ。むしろ、私はそういう力を信じている方ですから、前述の本を
読んだときには、その深い悲しみ浸りきったものでした。

・・・どなたか、この本を読まれたら、それはこうなんだよと私に教えていただけませんか?


それはともかく、私がそれでもこうも耽溺したのは、まさに「親と子」の問題だったからでしょう。
先日来私がここに書いてある親子の関係が、またひとつの事例のようにポンと投げ出されて
いて、読み進まずにはいられなかったのです。

ちょっとだけストーリー書いておきますと・・・
中学生の娘の不良化に困り果てた両親がその娘を殺し床下に埋めた。何も知らない妹と両親はそこに暮らし続け、そして16年。
無作為の出来事でそれが発覚。
その事件を発覚のずっと前に、絵に描いて予知していた事故死した小学生。そしてその母。

ざっと書けばこれだけなんですが、そこは稀代のストーリーティラーですから、話はどんどん膨らみます。
でも、私が追いかけてやまなかったのは、その娘の時代と両親の意識の「ずれ」でした。
どう考えても娘は、おばかだし不良だし、どうしょうもない子です。でも、そのおばかを作って育て上げて、今までにしたのは自分だという自覚。
これがこの両親にはあったのか・・・という見極めですね。私が自分に求めたのは・・。

最近のわが社の事例では、どの親もそれを認めていないような気がします。
「友達がわるい」・・・・
そうなんです。たしかに「友達は悪いんです。影響も大きいんです。」
でも、それだけですか?
それだけじゃないでしょ?
そう問いかける誰かが、親たちの傍に誰かいるでしょうか?

そういう意味では、まさしく考えさせられるテーマです。
なんやかやと言いながら、一晩で読み終えてしまった、淋しさと悔しさがないまぜで
早く次をかいて~~と、叫びたいのが本心なんですけどね(笑)
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by sala729 | 2007-08-15 12:30 | Comments(0)

「ある出来事が起こるとそれは連鎖的に起こる」と、有名なかの名言がありますが(すみません、寄る年波か、生来の頭の悪さかのどちらがで、名前が・・・お、思い出せません・・(^^;;))
仕事をしている上で、それは如実に感じます。

例えば、私たちのエリアの中でも、相談電話がある時期、一箇所に集中していたり、地域はかけ離れているのに、相談内容が殆ど同じであったり、、相談者の年令や性別、環境が似通っていたりと、「同一性の法則」は、ここでも実証されているなぁと感じることはしばしばです。

そんな中でのお話です。

私が、中澤まなかさんの家出調査をお受けしてまだ間もないころ、Rさんにも同じような相談電話が入りました。
まなかさんの住むところとは隣同士の町です。

相談者は、樫村洋一さん(42才・仮名)です。
聞けば、長女のもねさん(18才・仮名)が家出して二週間になると言います。
彼は電話で長々とその経緯を話しつづけていました。
そして自分たちがいかに綿密に機敏に行動して娘の行動を探り当て、三日前までの行動は掴んだ・・・と、言います。
しかし、その後が庸として知れないので、相談したいと言うことでした。
もねさんの母親はパート勤務で夕刻でないと帰らないので、夕方に・・・と、お逢いする約束になりました。
Rさんが待っていると、約束の時間きっかりに、夫婦は現れました。まだ小学校の一年生という妹も連れてやってきては「この子には聞かせたくないので」と、母親の依子さんは言います。
聞かせたくないと仰っても、面談室の外は、私たちのオフィスです。
たまたまそのときは、調査もすべて出払っていて、誰もいません。
そういうところに、少女をひとり置いておくことはできないですよね?。

どうしょうかと困っているところに、たまたま、相談員のSさんが帰社し、「いいですよ。私が見てますから」と、「渡りに船」いえいえ!!「ぢごくに仏」です(^^)

面談室で対峙すると、依子さんが堰を切ったように喋り始めます。
「とてもいい子なんですの。才能があって東京の芸術関係の大学に今年入りました。先生も将来をそれはそれは有望視していただいてますの。他のお子さんは、授業が一杯でアルバイトなんてできないんですけど、うちの子はアルバイトしてるんですけど、先生から、もねさんは余裕
があるわよねぇって、言われているくらいなんです。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オイオイ、それは違うだろう・・・と、突っ込み入れたいのをぐっと我慢します。


「家出にお心あたりとかはありますか?」
「いいえ。全然。・・・・でも、その数日前、あの子の日記を見てましたら、なんだか、誰々とデートしたいとか、次はいつ会えるかとか、夜中の11時ごろまで逢ってたなんていうのが判りましたから、私、怒ったんです。
まだ学生の身で、男の子と付き合うなんて早いし、ましてや、こんな遅い時間まで・・・なんてって。そしたら、お母さん、日記見たのねって、とてもひどい形相で怒りましてねぇ(・・・・そりゃ
怒るでしょうよ・・・ふつーはね。)
当たり前じゃありませんか?。母親が娘のこと知るのは・・・。でも、あの子はそれが判らなくて
次の日家を出たんです。」
「所持金とかはご存知ですか?」
「いいえ。自分の通帳は自分で管理させています。アルバイトもしていますし。」
「携帯電話は?」
「それがですねぇ」と、依子さんは一層身を乗り出します。
「メールがもの凄いんです。規程料金内はいくらしてもいいってやつですから、料金は規程料金なんですけど、実際は3万円くらいはしていたみたいです。」

この調子で何を聞いても、どう聞いても、喋り答えるのは依子さんばかりです。洋一さんはただ
黙って腕組をしてうんうんと頷くだけです。

「たぶん、お友達なんだと思うんです。それで片っ端から電話してみました。怪しいと思った子のところには警察官立会いでお部屋も見せてもらいました。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あらら、それはやりすぎでしょう・・そんなことしたら、もねさんが見つかっても、彼女の人間関係はボロボロですよ・・

「ええ。相手の親から抗議されました。でも!。でも、これっていけないことですか?親が子供のこと心配するのはいけないことですか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん。んんん、村上○彰さんみたいなこと言いますよねぇ(苦笑)・・・・・○○っていけないことですか?・・・ですって~笑)


「でも、相手のいることですからねぇ。相手の親御さんからしたら、はいそうですかって訳にはいかないですよねぇ。」
「どうしてですか?うちの子は家出したんです。それも、友達にそそのかされて。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あらららららら・・・・こらららら・・・・・
友達にそそのかされてって・・・そんなのまだ判らんやないでかぁ????


このお母さんの思い込みの深さ・・・・
そう、これはあの中澤小夜子さんそっくりです。(^^;)

失礼を承知であえて言いますが、このきわめて狭量な視野の中ではさぞかし子供たちも窮屈であったろうかとは思います。
親はその字のごとく「木の上に立ち、子を見るのが親である」と言うのは、まさにこのことでしょう。
自分の枠に入れてはいけません。
だからといって、枠から飛び出させていもいけません。
鵜飼いの鵜庄よろしく、ひいたり緩めたりしながら、「ある程度の自由」を感じさせてやることも
必要なのではないかと、私は思います。

もちろん私に、子育て云々という資格はありませんが、こんな外野の意見でも、ちょっとだけでも振り向いてみようかなと、そんな気持ちになってくれたら、嬉しいなとは思います。

まなかさんも、もねちゃんも、お母さんと衝突しながら自分を見つめているのです。
あともう一息・・・一息入れたら、お母さんに連絡一本だけ入れてあげてくださいね。
「私は元気です」と・・・
あなたたちのお母さんは、それだけが心配だということに、そのとき気付くはずです。
家でも、世間体でも、自己満足でもなく、ただ、あなたたちの身が心配だという、とても当たり前の、でも親のただひとつの切なる思いに気付くはずです・・・・。

・・・・それでも気付かなかったら・・・そしたら仕方ない「奥の手」使いますか・・。
え??・・・・奥の手が知りたい??・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うーん、それはダメですよ。ここで公開したら、奥の手じゃなくなりますもの(笑)
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by sala729 | 2007-08-09 12:20 | Comments(4)

カタコトと鄙びた一輌電車に揺られて、辿り着いたのは日本海が目の前のほんとに小さな街でした。
真夏の強い日差しがアスファルトに照り返して、そこに佇むだけで汗が滴り落ちるような昼下がり・・・それでも私の隣を楽しげに笑い逢って通り過ぎていく女子高生の二人組。
喧嘩をしているのか、じゃれあっているのか判らないけれど、もみあって、やはりはじけるような笑い顔を見せている高校生の一団。
夏の日のありふれた、駅前の光景です。


笠指すずかさん(31才・仮名)は、その名の通り涼やかなフレンチスリーブのTシャツに細身のパンツがよく似合う、きれいな奥さんでした。
夏休みなので、子供のスポーツ少年団の活動が多くて・・・と、微笑んでおっしゃる顔に翳りは見えません。

・・・・・・・・・・・・・・・「夫は・・・」
本題に入った途端、すずかさんの笑顔は崩れ、眉間の皺が一層深く刻まれたようでした。
うながすでもなく、待っていると・・・深呼吸したすずかさんは一気に言い放ちました。

「夫は、盗撮してるんです。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は??・・・と、とうさつ・・・・・
頭の中でバラバラに飛び散ったひとつひとつの単語を拾い集めて、私は次の言葉を探しました。
「ま、ご夫婦でやってると仰る方を私も知っていますけどね。」と応じると

「いえっ。夫婦じゃありません。た、他人の女の子です。電車やトイレで・・・」
げっ!!


「5年前にそれに気がついて、テープ、私がずたずたにしたんです。そしたら、主人が怒り狂って
・・。それなら、お前をとらせろって、私の入浴中や、トイレの時まで・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ま、まだそのほうが
いいんじゃあ・・・・・ありませんかぁぁぁぁ???・・・・・・・・・

「いやですよっ。!!私は厭ですっ。だから、私今、寝るときカッター持って布団に入るんです。」
・・・・・わおっ!!
なんと凄まじいご夫婦か・・・・・。

「しかしまぁ、盗撮はいけませんね。これって犯罪ですよ。」
「そーなんです。何度言っても判らないんですよねぇ。どーしたらいいでしょ。」

・・・・・・って、相談はそれではないのですが・・・・・(^^;)

すずかさんの相談は深刻です。
実は、すずかさんは再婚です。上の子は連れ子ですが、もちろん夫は可愛がってくれます。
でも、あの盗撮テープ事件以来、すずかさんの夫を見る目は変わりました。
駅のトイレや、小学校のプールでの、写真の数々を見せつけられたとき、上の娘を見る夫の視線が無視できなくなりました。
さすがに一緒にお風呂に入ることはないですが、お風呂上りや、着替えの時に、なんのためらいもない長女の姿を見る夫の視線が、妙にキラキラと輝いてみえるのです。
すずかさんは不安でした。
そしてその不安は日毎に膨らんでいきました。

そんな中、夫の携帯に女からのメールが入っていたことを知り、離婚を決意しました。
そして、その離婚のための証拠が欲しいと、彼女は言うのです。

もちろん証拠は取れるでしょう。
でも、これは早く結果を出さなければなりません。
折悪しく、今は夏休み。
それでなくても、夫と長女の接触時間はいつもより、ずっとずっとあります。
すずかさん自身にしても、カッターを抱いて寝ていること自体が異常です。

一見のどかなこんな小さな漁港の街に、すずかさんのような妻がいて、夫がいる。
夫婦の問題はどこにでもあるということは、判ってはいましたが、それでもこの潮の匂いの街には不似合いで、それゆえに一層、じっとりと心の中に沈んでいくような、そんな思いが寄せてきます。
一刻も早く、結果を出さなくては・・・・
今は、その思いしかありません。。。
空はますます青く、高くなっているようです。
ちぎれた雲が、静かに東の方に流れていきます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・まだまだ、暑い夏は続きます・・・・・・。
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by sala729 | 2007-08-07 15:43 | Comments(0)

初めて来社されたときは、失礼ながら男性?女性?と、一瞬迷ってしまいました。
短く切りそろえた、少し白髪の混じるショートカットに、シルバーフレームの眼鏡。白いポロシャツとアイボリーの綿パンといういでたちを見たら、きっと多くの人は私と同じ、間違いをするかも・・などと思ったりもしました。

浜口薫さん(仮名・49才)は、お名前からして、性別の判断が難しい・・・(^^;)
高校の数学教師で、現在は休職中と仰います。
向き合って、状況を説明されるその口調は、確かに「先生」というイメージにぴったり嵌ります。

浜口さんは、教師になって10年目に、更に志をもって某国立大学の大学院に進みました。
自らのスキルアップも当然ありましたが、実際の現場で10年いると、その現状が見えてきます。
浜口さんいわく、日本の教育現場は、かつての面影はもうとっくに崩壊しており、その原因は
生徒にもあり、親にもありだけれど、教師自身も、もうどうにもならないレベルの一団がどの
学校にもある。
そしてその塊が、年をおうごとに大きくなっている。この状態でそのままいけば、教育現場が
どうなるのかと思うと、大学院を終えて、現場に戻るという私を、恩師や同窓の友人は止めてくれたけれど、かえらずにはいられなかったと・・・。

まず教員委員会に戻った彼女は、現場を統括する立場からの仕事に就きました。
多少の上司との軋轢はあったものの、そこでの何年かを終え、やっと彼女に与えられた現場は
専科高校で、彼女の高等数学が生かせるとは思えませんでした。

しかも、その学校の教師レベルは、その「悪い塊」が、校長、教頭、主事らにまで波及しており
どうにも手がつけられない状況である。その悪しき状況をなんとか、矯正してくれないかと、教育委員会からの要望があったと言うのです。

浜口さんは孤軍奮闘しました。
「改善要求書」も、何通も作成しました。
「指導要請書」も提出しました。
しかし、何を出しても、どうやっても、「無しの礫」・・・・・です。

そして、報復人事のような転勤命令がおりました。
そのときに、彼女は休職を決意しました。ひとりでは、大きすぎた戦いだったのかもしれないと
今になって彼女は思います。
でも、その力に屈したくないと、今も彼女は悪戦苦闘しています。
たったひとりの戦いです。。。

そんな浜口さんの今の悩みは「盗聴」です。
どうしても、その心配が心から抜け切れません。
それで、相談にみえたのです。

一途すぎる視線をまっすぐ前に向けて、浜口さんはきりりとしています。
盗聴器があるかないかは判りませんが、調べることで安心は得られるでしょう。

もしかしたら、浜口さんの求めているものが、あまりに高潔な教師像なのかもしれませんが、
潔癖すぎるこんな教師は、生きにくいのか、周りが併せにくいのか・・・。
このまま孤立すると、浜口さんの向かう方向が、想像できるだけに、こんな優秀な人材を
埋もれさせてしまうことも惜しまれます。

「今の家は、教え子が探しくれたんですよ。薄給だから高いのは無理だけど、本や研究書が
一杯だから、狭いところはダメなんて無理難題言ったら、ここを捜してくれたんです。」
話をほぼ終えて、そう言って笑った浜口さんは、最高の笑顔で帰っていきました

・・・・・明日、ご自宅にお伺いする予定が立ちました・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
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by sala729 | 2007-08-02 11:40 | Comments(0)