少し流行遅れだけれど、それがまたかえって落ち着いて清楚に見えるというのは、本人の美貌と立ち居振る舞いにあるのかもしれない・・・・それが最初の印象でした。

扇谷美也子さんは、前に落ちてくる髪を指でかきあげながら、ひそやかな声で話はじめました。

「彼は、前川と言います。団体職員で身元は確かです。・・・ええ、きっかけは出会い系サイトでした。」
その美しい横顔と「出会いサイト」がすぐに結びつかなくて、ペンを持つ手が一瞬、宙で止まり、
え?と、彼女の顔を見返していました。

「ばかでしょ?」自嘲気味に笑う美也子に
「いや、そういうことじゃなくて、なんだか不似合いだなと思ってしまって・・」
私は正直に感想を言うと
「私も、初めからそういうところをアクセスしたわけじゃないんです。タレントのブログを見つけて
ごちゃごちゃやっていると、自然とそういうところに、行き着いちゃったんです。」

・・・・これは嘘ではないでしょう。
最近の出会い系サイトは、いくら無料とはいえ、少ない女性アクセスを増やすために、こういう
操作をしているらしいです。


「それで前川と知り合ったと・・」
「ええ。最初はお互い独身と嘘を言い張り、初めて寝た日に、彼は妻も子もいると、告白しました
。」
「あなたは?」
「私はバツイチだと・・。子供はいないと言い張りました。」
美也子さんは顔をそむけて話します。

じつは、美也子さんには警察官の夫があり、子供も二人います。

魔がさしたというのか、淋しかったというのか、毎夜帰宅は遅い、泊まり勤務はある、堅物で融通のきかない夫に、不満を募らせていた美也子さんは、前川との、情事に溺れました。
前川はスマートでした。
細身の長身にいつもスーツをばりっと着こなし、食事に行っても、ドライブに行っても、
美也子さんをエスコートし、楽しませてくれました。
そんな関係が三ヶ月続きました。

しかし、美也子さんも馬鹿ではありません。
こんな関係が永遠に続くはずはないし、何より、自分にはこの家庭を捨て去る気持ちなど微塵もありません。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・潮時・・・・なのかもしれない・・・・と、美也子さんのカラータイマーが点滅して、危険を知らせていました。


「もう、これで最後にしましょう。」
ある昼下がり、着替えを終えた美也子さんが切り出すと
「そうだね」と、低い声で前川も答えます。
「・・・・ええ。そのときは判らなかったんですが、彼はすごくプライドが高くて、女から別れようなんて言われいたことは、いまだかってないのだそうです。
そういえば、あのときの彼は、一度も私のほうを見ませんでした。」

「そして、三日たって、これがきたんです。」
美也子さんがバッグから取り出した、三通の封筒。
パソコン打ちした大きな文字が躍っています。

「読んでいいですか?」
うなづく美也子さんを確認してから、私は次々に三通を読み始めました。


三通とも、差出人は同じのようでした。
某調査会社と名乗って、浮気をやめなさい。そうでないと、警察官のご主人にも迷惑がかかりますよという内容です。

「私は怖くなって、彼に電話をして相談しました。そして、また、私たちは逢うようになったのです。」
「結婚してることも言って?」
「はい」
「彼は怒った?」
「いいえ。そーなのってかんじで・・・」
「でも、別れ話はなくなった・・と。」
「はい。そうなんです。何度か相談しているうちに、またもとのように・・」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
決め付けるわけではありませんが、この話から見えてくるのは、差出人は前川・・・という構図
ですよね。

前川は、美也子さんいわく、こんな田舎ではまずいないタイプの美形なのだそうです。
ですから、もちろん女性にふられたことなどは皆無です。
こうと決めた女性は必ず落とす・・・そして落としたら、もうそれで満足・・・というタイプなのだそうです。



それにしても・・・・
ご相談者が、警察官の奥様というのは、統計的にかなり多いです。
強制ではないらしいのですが、奥様方はたいていが専業主婦です。
いまどき、専業主婦で子供が二人ほどいて・・・楽な生活しているサラリーマンはそう多くはないでしょう?
それでも、妻の副業をやんわりと止められている以上、子供が学齢期になっても、彼女らは
ぼんやりと時間を過ごさなくてはならないのです。
時間だけがたっぷりあって、お金の余裕のない自由・・・・これはある意味「檻なき牢獄」です。
だから、無料サイトやPCに嵌りこんで、そこにいるウノ目タカの目の、悪い奴らに利用されやすいのではないかと、私は思います。

その綺麗な横顔を見つめていると、この人を離したくないと、心で叫びながら、格好つけている前川の顔が浮かび上がってくるようです。
夫も家庭も失くしたくないと願う美也子さんにとって、最上の解決策とは、なんなんでしょう??
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by sala729 | 2007-10-06 14:25 | Comments(2)

Commented by でんすけ at 2007-10-09 01:30 x
前川さん、、、
やな男ですねぇ・・・・

ってか、思うとおりに操作されてる美也子さんも・・・
うーん、うーん、、、
わからんすw
Commented by sala729 at 2007-10-11 10:38
でんすけ 様
やな男よ。(笑)
男と女の話には、わからないことばっかり・・・(笑)

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