さて、10月に入りますと、季節感は急に走り出したかのように「秋の気配」を醸し出し、道端に咲き続けている向日葵がさすがに場違いに映ります。
毛羽立った白い葉茎が、もの悲しくさえあります。
やっと、「ほんとうの秋」が始まったのでしょう・・・急激な季節の変わり目と共に・・(^^;)

中小路さえ子さんは、にこにこと微笑みながらやってきました。
64歳とは仰いますが、小柄で白いシャツをきりりときた姿はなかなか素敵・・・と、思ったのです。。。

「主人が、まぁ浮気してますのよぉ。」からからと笑い飛ばして、一オクターブは上がった声で切り出したさえ子さんに、いやな予感が私の胸をかすめます。

夫は70歳。大手の電気設備会社を定年退職したあとは、さえ子さんと二人暮らしです。
多趣味な方らしく、ゴルフ、囲碁、卓球、詩吟、写真とあけ暮らしていらっしゃるのだそうです。

「主人はねぇ、毎日出歩いておりますでしょ?。女性と知り合うチャンスは多いんです。もう、5,6年くらい前からですねぇ。女がいたのは・・・。ええ、最初の女とはもう別れました。でも、次から次へとねぇ・・・笑。ほら、優しいもんだから周りがほっとかないみたいなんですよ。」
カラカラと笑いこけるさえ子さんは、とても夫の浮気に悩む奥さんには見えません。

「でもね、浮気が判ってからは、どこに行くにも、わたくしがいっつも一緒。片時も離れませんの。だから、卓球部の女性の時も、ゴルフ場の売店の人のときも、わたくしが事情を話して
女の方に引いてもらったんですのよ。
うちのは、なんと言っても、やさしいのよねぇ。ほっほっほほ」
さえ子さんの高笑いは、耳に障ります。

「でね、今は、隣の奥さんなのよ。」
急に声を潜めたかと思うと身を乗り出して囁きます。
「は?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・とうとう、でたか・・・(溜息)

「ええ。そーなんよ。それも、真夜中に家に連れ込んでるのよ。ほんとにねぇ。わたくしはねぇ
お隣のご主人の仕事先にも言って、そのこと話してあげたのよ。そしたら、そんなことはありませんよって、笑うのよ。失礼でしょ」

いやいや、それってお隣のご主人がデキてる人ってことですよ。突然そんなこと言われたら
怒鳴りつけられるか、張り飛ばされますよ・・・・

「でね、わたくし主人が出かけられないように、内側から鍵かけたの。窓やドア全部ね。14箇所くらいかな。それでその鍵をパジャマのポケットやわたくしの寝ているシーツの下に敷いてるんだけど、それでも主人、開けちゃうのよねぇ。困ったことに・・・」
ニコニコと笑うさえ子さんはちっとも困ったようには見えません。

「それから、これ見てください。」
ともおもむろに持ってきた、ビニールトートーから出してきたのは掛け布団カバーを切り裂いたものです。

「ほら、ここ、ここも、ここもでしょ。私が布団ほして広げていたら、その上でよ。しかも、ほら、
こんなに汚して。警察にも持っていったら、間違いなく、血だって言われましたわ。もうねぇ。。
いいかげん生理の時ぐらいはねぇ。」
苦笑いるさえ子さんの目は、三日月のように笑っています。

「それからこれも。」
と、今度はシミだらけのハンドタオル。
「まだ、あるのよ」と、ごそごそするのを
「いえ、判りました。これだけで充分です。」と、私は制するだけで精一杯です。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・仕事柄、こういう人たちと対峙するのは珍しいことではありません。
季節の変わり目には多々あることです。
でも、さえ子さんのご主人は、たいへんだろうと思います。

寝る前には、ドアというドアのすべてに鍵をかけられ、携帯電話は取上げられ、固定電話は
鍵付きの戸棚に収納され、不自由な生活を強いられているわけです。
・・・もしも、火事にでもなったら・・と、思うとゾッとするような、おうちではあります(苦笑)
失礼ながら、さえ子さんの妄想である部分は大きいでしょう。
でも、身近にいる旦那様がそれに気付かないはずはありませんし、それでもなお、彼女との暮らしを維持しているというのは、思うえばふかーい「愛」ではありませんか?
それとも、こうなるにはそれだけの事情があったのかも。。。

妄想も、執念も、スタートは「愛」です。
この、愛が、そのままに温められていたら、穏やかで楽しげな「第二の新婚生活」が待っていたのに・・・と、思うのは、私の考えすぎでしょうか・・・。。。。
[PR]

by sala729 | 2007-10-02 13:20 | Comments(0)

<< 警察官の妻    平常心 >>