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理恵さんが小学校三年の娘を連れて、八雲家の敷居を跨いだとき、夫は娘に「萌ちゃんのパパにならせてもらってありがとう」と微笑みかけたあの顔を、今も忘れませんと理恵さんはうつむきます。

三歳で父親を亡くした娘は、それまで父と呼ぶ人を知らず、初めて会った夫の優しい笑顔に、母子とも感激のあまり言葉もでなかったと言います。



そして月日は流れて、萌ちゃんは小学6年になり、二才の弟もできました。
家族の生活は変わらないように思いましたが、パパとママの様子が、ちょっと変だな・・とは感じていました。でも、ママにどうしたの?と聞くことは、しないほうがいいような気がして、時々廊下やドアの前で、パパやママに判らないように二人の話しを立ち聞きしたりしていました。

そんなある日
ママの泣声が洩れて、パパがなにかに怒るような声。パタパタとスリッパの音がしたかと思うと
萌ちゃんの目の前のドアがさっと開かれました。
驚いたのは開いたパパと、萌ちゃんです。
言葉もなく立ち尽くす萌ちゃんに
「なにやってるんだ。部屋に帰りなさい」
それは、今まで聞いた事のないような、冷たいパパの声でした。

言葉もなく立ち尽くす萌ちゃんの肩を邪魔物をどけるように振り払ったパパは、そのままどこかに出かけていきました。
遠くで、何度か萌ちゃんも乗せてもらったことのある、パパの大きなオートバイの音が響いて
そのまま、パパがどこかに行ってしまったことが判りました。



その三日後です。
夫はやり直そうと言ってきました。と、理恵さんは話続けます。
それまで、合コンで知り合ったという人妻と、浮気をしていたことがばれて、理恵さんに追求され続けていた夫が、頑としてそれを認めず、諍いが続いていたことは事実です。
それが、今日になって、「あれはメールだけの関係だった。もう二度とメールはしない。だから
忘れてくれ。オレも忘れる」と、言って来たのです。

理恵さんはもちろん受け入れました。
もう一度彼を信じてみることにしました。
もちろん、「ただのメル友」というのが嘘とは判っています。
合コンで逢ったこと、何度かホテルに行ったことも、かわしたメールに残っていました。
でも、彼がそういうからには、それを信じてみようと思いました。
なにより、あれ以来塞ぎこんでいる萌ちゃんに、パパとママは仲良しに戻ったと告げてやりたかった・・・・のです。


でも、二日後の夜
飲んでかえった夫の上着のポケットの中で、ピロピロと携帯がなります。
やってはいけない・・・と、シグナルが心の奥で鳴り響いています。指が震え、心臓がパクパクと
音をたてて、理恵さんの脳に危険信号を送っています。
でも・・・・理恵さんは止められませんでした。
震える指で、携帯を開くと、メールの受信が知らされています。
もう、止まりませんでした。
そのまま、開いて見ると・・・・
「私だって逢いたいよ。逢いたい。逢いたい。逢いたい。でも、もうすぐだもんね。我慢我慢って
言い聞かせているから、なおちゃんだって、我慢しなよ。
その代わり、今度あったときは、うーーんと、サービスしちゃうもんね~」と、最後にはハートマークが無数に並んでいます。
理恵さんの頭の中が真っ白になりました。

あの二日前の夫の言葉はなんだったのか・・・・

それでも気を取り直し、携帯を夫のポケットに戻します。
なにくわぬ顔を装って
「パパ、もう浮気はしてないわよね?女とはメールもしてないよね?」と聞くと
夫はたちまち顔色を変えて
「うるさいなぁ。お前、何度もしつこいよ。もういいかげんにしろよ。そんなにオレのこと信じられないなら、いいよ。いつでも離婚してやるよ。」と、突然の逆ギレ・・・・。
「そんなこと言ってない。ただ聞いただけなのに・・・」
「そのしつこさが、もういやなんだよ。オレはいいんだよ。もう、お前とはうんざりだよ。」
言葉を吐きつけると夫は一人で寝室に向かっていきました。


迷いに迷って、理恵さんは親友と二人で相談に現れました。
「もうしてないって夫は言うんです。」と、自分に確かめるように言う理恵さん。
「でも、今度会いましょうメールが届いたんでしょ?」
「え、ええ・・・それはそうなんですけど・・・でも、今度がいつなのか判らないし、逢わないって
言うのを私が信じればいいだけなんですけど・・」
「それは違うでしょ。それは信じるというのじゃなくて、信じるふりをする・・・ってことよね。ふりをして、お嬢ちゃんの前で、演技続けられる?これからもずっと。」

理恵さんは下を向いてしまいました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・夫を信じたい気持ちはよく判ります。夫婦ですから
信頼関係がなくて、どうして夫婦でいられるでしょう?

でも、これは私が相談者さんにいつも言う言葉ですが「浮気をしている人はうそつきです。
浮気をするには嘘をつかないとできないのです。そこのところをよーく考えてみてくださいね。」と・・・。
相手の嘘を信じるか、事実を知るか・・・・・連れ合いに浮気されたとき、選択するのはこのどちらかです。

夫を信じたいという気持ちの奥に、初めてパパに疎ましがられた萌ちゃんの茫然とした姿が忘れられないと理恵さんは言います。

疑えとは言いませんが、事実知る努力をしなければ、理恵さんに対処策はないでしょう。

何度も迷って、迷って・・・とうとう理恵さんは調査を決心しました。
そして今現在・・・・
夫の行動は、私たちが監視しています。
もうすぐお昼・・・・
彼が動くのはこれからでしょう・・・・・・・。

by sala729 | 2007-07-27 11:24

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