81才だという菊村そめ(仮名)さんからの電話で、18年前に行方不明になった孫の、日野一志(37才・仮名)を捜したいというご相談に、山間のその村に向かったのは昨日のことです。
距離にすればわずか150キロ程度のところですが、高速を下りてからの40キロは、そのまま
ずっと山の中に続く道を走りますから、かなり奥深い里に向かうことになります。

まるで時代劇のロケに使えそうな、のんびりとした田んぼや、沼地の周りには、タンポポやナズナが生い茂り、山桜や枝垂桜の一斉に花ほころんで、春が一度にやってきたかのような、そんな風景の中を、県道を山道にむかって更に登っていくと、そめさんの住む古い民家がやっと見えてきました。

半分開かれたままの玄関引き戸を入って「ごめんくださーい」を何回か連呼すると、すぐ手前の部屋から、90度も腰が曲がっているのではないかと思えるほどの、そめさんが皺だらけの笑顔で迎えてくれました。

かび臭い広い部屋は仏間でしょうか。華美ではないですが、かなり大きな仏壇が野花を両前に飾ってひっそりと佇んでいました。

この広い古家にそめさんは一人で住んでいるのでしょうか・・・。


人恋しいのか、そめさんの話は、まず自分の半生から入ります。
こうなると、時間は構っていられません。じっくりと腰据えてお聞きしないと、肝心の事が聞けなくなります。(^^;)



・・・・・・・・わていは青年学校出た年に父を亡くしました。18のときです。ひとり子でしたから、その日から、わていは母とふたりきりです。毎日、毎日田圃で働きました。戦時中とはいえ、みんなが挺身隊に召集されていくんですが、わていは家継ぐ身ですから、それもなく、ただひたすら
働きました。
そうこうしているうちに、終戦になって、食べるものに困った、町の人や復員さんらが、このあたりまできて、盗人したり、悪さしたりすることが続いて、女ふたりの家を心配した村の世話役さんが
わていに、進駐軍のカバン持ちしておった人を、婿にもらわんかという話を持ってきよりました。

それが、最初のわていの主人です。悪い人じゃねーけんど、なにせ町もんだで、田圃なんぞ
したことがありません。要領もわりーし、仕事もおせえで、母はイライラしておったんでしょうね。
ぼっけえ、辛う当たったんですわ。
長女の和子が生まれて、ええ、これが一志の母親です。そいから長男がわていの腹ン中にいたときに、とうとう主人は逃げ出してしもうたですよ。はっはっは~

そんなわけで、和子らは、ずっと母が育ててくれたよーなもんです。わていは、毎日、毎日
朝星から夜星まで、外仕事ばっかりしておりました。

和子が高校を出て、隣町の縫製工場に就職して、そこにおる100人の縫い子さんたちの中でも一番の腕前だったのは、そりゃあ自慢でしたげよ。それなのに、そこで知り合ったのが、四国から流れて来とった日野ですら。
工場の奥さんは、わざわざここまで来んさって
「あれはいかん。日野はワルですけえ、あの男だけは、付き合うたらいかんですよ。」と
いうてくれたんじゃが、和子はとうとう、日野について四国に行ってしもうたんですよ。

四国で、一志と園子が生まれて、やれやれと思うとったんですが、あの日野という男は、大酒のみで、酔うと女房子供に暴力振るうたんじゃそうですら。
そんなこんなで5年くらいたったでしょうかの・・・とうとう耐えきれんごとなって、和子は子供二人つれて逃げ帰りました。3人だけやら、なーんも問題なかったですけぇ、その時日野の友達たら言う、岡部という男がついてきよりましたんや。


岡部ははじめんは「ワシは刑事や。日野がきたら、和子さんらを守ってやるけん」言うとっんじゃが、毎日毎日、和子とふたりでパチンコ行っとるし、この家では不便じゃ言うて町で家借りたんはいいけんど、家賃やら敷金やらがいるゆうて、私の母を騙して、ずーっとため込んでいた年金を使うてしもーたんじゃ。

一志も園子も、放ったらかし、学校も満足に行けんよーになっちょるとはしらなんだです。
ある日、知らない男の人がきて、岡部を捕まえたと言いました。なーんのことはない、その人らが、刑事さんやったとです。
岡部は、ドロボーを繰り返して、結局、刑務所に行きました。懲役6年だったです。

その6年だけか゜、考えて見れば一志には幸せなときだったかもしれんですら。
岡部が出所して、また和子のとこに転がり込んで、前ン時みたいに、ふたりでパチンコじゃ、競輪じゃいうて、遊び暮して、サラ金ば゜ぁに借金して・・・・・。そんときに、和子の弟が、あれらの家に行っといたら、岡部が一志に・・一公、なんぼやぼやしとるんや。早う帰ってこんかい。くそたわけめ。遊んどいたらしょーちせんどぉ・・・やら言うのを聞いて

あんた他人の息子にそんだら言い様はないじゃろと、言うた途端、岡部は次ぎの日から、弟の勤め先から嫁の実家、弟家の近所に、毎日毎日、いやがらせ言うて歩きましたげな。

一志は、高校も中退して、近場のパン工場の三交代しちょりましたけど、給料日やら、なんやら、いちも岡部が来ては、金せびりよったげなですら。断ったら、叩いたり、蹴ったりするですよ。和子にも、そんなやから、一志は、出さんとはおれんかったんですな。
そのうち、金がのうなりよりまして、サラ金やら、友達やらにも借金して、とうとう返せんげになったです。

そいで、どうにもならんごつ、ここに帰ってきました。
わていも、こん年ですげぇ、なんもできんけど、なんとか金かき集めて、ようよう返してやったですが、おばあちゃんに悪いゆうて・・・・(泣・・)
おらんようになった日の日付で、駅からわていに10万円送ってきよりましたがぁ。それも、あとで
サラ金の金やらが判ったですが、一志の気持ちがかわえそーで・・・。




・・・・長い、長いお話です。
一志さんは、結局この母と一緒にいる岡部に、利用されることを苦にして家を出た・・というところが事実なのでしょう。
そして、皮肉なことに、一志さんが家を出て間もなく、岡部と和子は、サラ金に追い立てられ
夜逃げしていまだに音信不通です。風の噂では四国にいるらしいとのことですが、一志さんも
もう少し、待つていればよかったかもしれません。。。これは、結果論なのですけれども・・ね。

そめさんは、自分の年齢も考えたら、なんとか今のうちに一志さんを捜したいと日々思いつめるようなったと言います。
岡部に居場所を突き止められたら、また地獄の日がくるから、自分だけには居場所を知らせてほしいと訴えます。

「あん子(一志)が、こまい時に、ボクはなんで生まれたんじゃろ。生まれてこんけりゃよかった」言うのを聞いたときにゃ、かわえそうで、なーんも言えんじゃったですら。どうぞ、捜しておくれんさいと、そめさんの、長い長い話は終わりました。


正直、これは難しいです。
一志さんは逃げてますし、18年前の出来事です。
そめさんの記憶は、断片的ですし、具体性があるものがない・・(^^;)
母親である和子さん協力は得られないどころか、岡部のこと考えたら、知られてはならない

こんな難解な条件下での調査になります。
でも、これだけの話をお聞きして「できません」とは言えるでしょうか?

いくら、緑色の血を流すと言われる私でも(・・私はガメラかっ?!)・・なんとかしてと、
Oリーダーに泣きつかないわけにはいきません。


小さな体を何度も何度も折りたたむように、おじぎするそめさんにお暇して、帰路についた私の目には、この小さな集落が、そっくりそのまま、そめさんの生きてきた月日の中を、ゆらゆらと漂っているように見えました。
この波の向こうには、これからの苦労をまだ知らぬ18才のそめさんが手を振っているのでしょうか。
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by sala729 | 2006-04-18 23:32 | Comments(3)

Commented by てるプー at 2006-04-19 08:05 x
18年前の失踪+家族の協力なし・・・本当に難しい調査でしょうね。
でもこんなケースこそ 調査会社の実力発揮!!ですよね。そめさんの願いがどうかかなうように祈るばかりです。一志さんにとって故郷の思い出は辛いことばかりだったでしょうけど、一志さんを思っていてくれる人がいる事実が彼の悲しい記憶を和らげてくれますように・・・
Commented by junjun at 2006-04-19 10:54 x
18年の年月で・・・むずかしいですね。
ところで、岡部って、仮称??私の知り合いの岡部って人間に似てる気がして。
そめさんの願い、かなうといいな。
こんなに人生の荒波を乗り越えてきたのに・・・。このまま、ほっとけないよね、相談員さんなら!
Commented by sala729 at 2006-04-19 10:59
てるブー 様

見つけたら見つけたで、今度は帰るように説得するのが大変・・ではありますね(笑)
そめさんに、現地に来ていただくのは、ちょっと無理そうですし・・。。
と、私は見つけた後のこと、もう考えてますけどね(笑)


ジュン 様

もちろん仮称です>岡部(笑)
ここでの名前は、原則的にすべて「仮名」です。
本名だしたら、私、「クビ」になっちゃいますわ(爆)

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