和美さんの携帯は相変わらずなり続け、拒否すると今度は、喫茶店の方にかかってきます。
母がでると「関係ないやろ。和美、出せ」と、夫は凄むそうです。
そして、姉からは
「女がひとりで子供育てるのがどんなたいへんなのか、あなただって、私見ていたら判るでしょ。妻の務めも果たせない人が、できるわけないんだから、すぐにその報告書もって、私のところに来なさい。なんで、もっと初めから来ないのよ。」と、訳のわからぬお叱り電話が入ります。

そして、金曜日の夜になって母から私のもとに「主人が帰りました。」と、連絡が入りました。
やはり「お父さん」です。土曜日の夜でないと帰れないとお聞きしていましたが、無理をなさったようです。翌朝、報告書をお持ちする旨を伝えて、一夜が明けました。

「ごめんください」と、お店のドアをあけると、母の肩越しに、グレーの髪が波打った広い背中が見え、その人がゆっくりと振り返りました。
日焼けした顔に、大きな目がギョロっと光って、強面・・と、いうイメージではあります。
「あ、すみません。Aさん。主人です。」
「あ、どうも、このたびは娘がお世話になりまして。」と、挨拶する声も、堂々として押し出しは強そうです。

お店に繋がった、居間で報告書をお見せしました。肝心のところは、分厚い報告書の後半になっていますから、そのことをお話すると、初めのほうは、端折って、後半をじっくりと見てくださり
「これだけのものがあれば、充分です。ありがとうございました。」と、私に深々と頭を下げられました。

そして、和美さんに向かって
「これだけのものがあったら、白川には何でも言える。向こうの、お母さんがどう言おうと、かまやせん。オレは、お前のことだけ考えてやる。親とはそういうもんじゃ。だから、お前はチビたちのことだけ考えてやれ。わしらは、まりたちが大人になるまで生きているかどうかは、判らんのやから、今のうちにお前たちの先々のことをできる限りやってやる。」と、頷きました。

母は「白川のお母さんは、離婚したら家の恥やと思ってるから、和美に帰れ、帰れ言うけど
泰明さんにはなんにも言いませんがな。まだ和美に向かって、あんたにはないものが、向こうにはあったんやろって言うぐらいですよ。私はあんな家に和美はよう帰しませんっ。」と、私に訴えます。

「そうじゃろな。向こうのお母さんは、どうせ、そちらさんにも恥になりますよ。ぐらいは言うじゃろうけど、子供の為になら、恥になろうが、なんになろうが、かまやせん。子供のためにかく恥なら
オレはなんぼでもかいてやる。世間や、他人の目なんて、なんぼのものや。オレは、オレのファミリーが幸せならそれでええ。そのためなら、なんでもする。」

そう言って胸を張るお父さんを、和美さんは潤んだ目で見つめていました。
私は、やれやれと胸を撫で下ろし、・・・やっぱりなんと言っても父親よ・・・と、久々に見る
逞しい父親に、見とれる想いでした。

明日の結果はまた連絡しますから、これからも相談に乗ってくださいというお母さん、「ええ。ぜひ」と、微笑んで、丁寧に頭を下げた私の視線が・・・点、点、点・・・・お父さんの足元に・・・・。


そこには・・・そこには、なんと、私の大っ嫌いな、あの 5本指ソックス の、グレーの足が・・・・(@@)(@@)(@@)
(マイナス30・・・と、心の中で囁いて、早々に帰社した私でした・・・)(^^;)




二日後・・・・お母さんから電話がありました。

・・・・Aさん、主人から電話ありました?と、開口一番聞かれましたので、いえ、まだですとお答えしましたら、それじゃあ私が・・・と、お母さんは怒りに震えながら話し始めました。

・・・昨日の夜、主人と和美と私で、チビたち連れて白川の家に行きました。
そしたら、向こうは義母さんと義姉さんが待ち構えていました。居間に座るなり、義姉さんが
「和美さん、お茶入れなさいっ。」と、こうです。(怒・怒)

それからは義母さんの一人舞台。
そもそも、和美さんには母たる自覚がない。母親として子供のこと本当に考えたら、勝手に連れ帰れるはずがないんです。自分のことしか考えてない。だいたい、男の浮気なんて病気みたいなもんです。誰でもします。女房というものは、それを我慢するものです。それもできない。泰明を責めるばかりですけど、浮気するには、それだけ相手に、和美さんにないところがあったということと違いますか?。」

「いや、ちょっと待ってください。」と、父が制すると
「いいえ。言わせてください。お父さん。私もずっと我慢してきました。世間さまからは、白川さんも人がいい。他所の子を自分の処の子として、訳隔てなく育てられるもんやと言われて来ました。和美さんの至らないところにも、ずいぶん目を瞑ってきました。それなのに、なんですか、
人の頭ごなしに、白川の子を勝手に連れて、実家に帰って、帰って来いといっても、帰らず、なしの礫。電話しても出ない。あげく、休みに両親つれて、直談判。これが、嫁たる者のやることですか?」まるで、機関銃です。


「では、では、泰明さんが浮気してもいいって言うんですか。」やっとのことで和美さんが一言言うと
「和美さん、お義母さんにむかって、なんて口きくの。」と、義姉の時代錯誤の叱責です。

その間、夫はと言えば、子供二人を相手に、生まれたばかりの子猫のところに行ったきりでまるで他人事のようです。・・・・・(溜息・・・アホ夫・・アホ姑・・アホ小姑・・・アホ馬鹿トリオだわね。)


「それで、じゃこの始末はどうつけるんです?」という父に

「和美さんがここに帰れば済むことです。泰明も反省してますし、子たちも帰りたがっていますしね。」と、姑。さらに小姑が
「第一、夫が浮気したくらいで、ギャアギャア騒いで実家に逃げ帰ったりするから話が大きくなるんよ。探偵までやとって・・。なんで私に相談に来なかったのよ。」と、さらに追い討ちです。


思い余って、お母さんは席を立とうとしたのですが、そのとき、まりちゃんが
「ここに帰る。白川の家がいい。」と、泣いて訴えてきたというのです。あまりのタイミングのよさ・・と言うのか・・。
子供心の配慮というのか・・・・。

姑は鬼の首を取ったように勝ち誇ります。
「そーらみなさい。あなたは子供のことなんてなにも考えてないのよ。」

和美さんは、返す言葉もなく父を見つめます。



結局、お父さんはこの子供たちの涙を押しきることはできませんでした。
こんなところに娘は置けないというお母さんに頷きながら、しばらくは離れて暮そう。そして泰明さんがどうでるか見よう。なにも動かないのなら、そのときに家裁に相談に行く・・という、お母さんいわく「生ぬるい判断」でした。
離婚したいという和美さんの気持ちを押しきることが出来なかったのは、やはりこれも「親心」というものなのでしょう。
子供を抱えて「ごめんね。ごめんね」と泣く和美さんを見下ろしながら
「子供が可哀想」と泣く、姑、小姑に
「私は、涙も出ませんでした。」と、吐き捨てたお母さんの気持ちのほうが私にはよく判ります。

そう・・・もうすでに、涙も枯れるほど泣いた人は、人前では泣かないものです。心の病気でもない限り・・。


もしも、和美さんがこの家に帰ることになったとしても、もう彼女の居場所はこの家にはありません。冷たい針の筵が待っているだけです。
それは例え、夫が心から詫びを入れることがあったとしても・・(それすらも、ありえないと私は思っているのですが・・・)

それにしても、男は口ばっかり・・・。なに冷静なふりしてんのよっ。もっと熱くなればいいじゃないの。「子供のためなら恥でもなんでもかいてやる」って息巻いたあの気合は何処にいったのですか?
あの5本指のソックスの上から、思いっきり足指を踏んづけてやりたい気持ちを、私はどこに
発散させようかと、持て余しています・・・(脱力・・・ふぅう・・)
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by sala729 | 2006-04-17 19:44 | Comments(6)

Commented by てるプー at 2006-04-17 23:53 x
出た!相談員さんの天敵、5本指ソックス!!(爆)
それにしても、本気で雷を落とす強い父親は もう存在しないのかなぁ。。。  幻滅しますね(溜息)
この環境だと 必ず再発するでしょうね、幼児退行。
完全治癒させるためには 本人がリラックスできる環境と長期にわたるカウンセリングや投薬治療が必要だと思いますが・・・ちょっと厳しそう。。。
Commented by 文房具や at 2006-04-18 00:22 x
くっくるひぃ。ホント世の中ってどうにもならない事ばかりでなんだか苦しいです。みんなみんな踏んづけてやりたい!
Commented by 新・元銀行員の探偵ライフ 中村 at 2006-04-18 09:47 x
人間って、かくも自分本位にできているもんですかねぇ…。そういう人って、見えないだけで、たくさんいるのかな?幸い、この年までそういう修羅場に遭遇したことがないです・笑。
Commented by sala729 at 2006-04-18 10:21
てるブー 様

そーなのです。一瞬は「5本指ソックス」好きになろーかななんて、思ったりもしたのですが、やっぱり、あれはアレでした・・(溜息)

文具や 様
踏んづけてやりましょーよ。ほんとに、踏んづけられないと判らない人や
踏んづけても判らない人は、いーーっぱい、います(笑)
でも、どうにもならない事でも、どうにかしたいって足掻く人が、私は
好きですねぇ。応援したくなります。。(^^)

中村 様
いますよ。ウジャウジャ>自分本位人間。
見えないって・・ことはないでしょうね。たぶん・・。善意の人間には、相手だって見せませんもの。
私は、たまたまこういう仕事ですから、いつも見ているだけ(笑)
善意の相手にまで、こういう悪意むき出しにする人は、社会生活できませんっ(笑)
それにしても・・遭遇したことがないのは、幸せですわよ(微笑)
Commented by 現実にある・・・・・ at 2006-04-18 15:09 x
遅くまで頑張ってますね!
僕もなかなか進みません、昨日相談員さんと同じように10回目ほどの失敗で、ブログを書くのを挫折してしまいました・・・・・・

俺の30分はどこに消えてしまったんだろう???????
なんて考えていると、もういやだ・・・・
と言うことで、昨日も寝てしまいました。

コメント有り難うございました☆
Commented by sala729 at 2006-04-18 23:41
現実にある・・様
そうなんです。実は今日も失敗しちゃいまして、力・・抜けました(笑)
でも、このままではと、意地を振り絞り更新しました(笑)

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