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春の雪が一夜にして降り積もった「花冷え」の朝、中村さん(49才・仮名)からのご相談で、ご自宅に伺いました。
南の国とはいえ、山間部には雪も積もれば、スキー場もあるのです。中村さんのお宅はその
スキー場のさらに高地にあり、
「Oリーダー、チェーン規制って出てますよ。」
「ホントだね。」
のんびりと会話を続けながら、それでも怯むこともなく車は走り続けます。

「道がジュルジュルですね。」
「そーだね。ほらっ。下見てよ。真っ白だよ。」
「ホントですねぇ。ずいぶんと標高、高いみたいですね。」

会話ののんびり度は変わりませんが、国道とは名ばかりの対面車線の両側は、真っ白に雪が積もり、中央部も融けかけたシャーベット状になっています。
ちらほらとチェーン着けようと路肩に車を止めている人たちもいます。

「そーだ。この車、チェーン積んでるんだよね。」
「ええ。積んでますよ。」
「そか。じゃAちゃん付けてよ。」
「へ??。じょーだん言わないでください。誰がチェーン付けていようとも、車から降りない私が
付けれるはずないでしょ?」
「そーだよね。オレもやだ。」
「じゃ、このまま行くしかありませんね。」
「そーだね。」

無謀というか「命知らず」のこの上司と部下は、こうして途中一度上り坂をずるずると下がる
車を後ろから押していただくという地元のカップルの温情のおかげで、なんとか中村さんのお宅に辿り着くことができたのでした。


「いやぁ、大変でしたでしょ。」
日焼けした顔を綻ばせて迎え入れてくれた中村さんと奥さんに案内されて敷地内に二棟ある
奥の方の建物に入ると、ひんやりとした冷気とじっとりした湿気がまとわり付いてくるような
そんないやーな気配がします。

「ここなんですよ。」
奥さんが引き戸を開けると、キッチンになっています。
こげ茶の板張りで、ちょっと時代遅れかなと思えるシステムキッチンが右手に左手には食器棚と冷蔵庫が並んでいます。
「綺麗じゃないですか?」
「いーえ。床は張り直したんです。他所で。もう腐ってボロボロになって踏めなかったもんですから。」奥さんは、とんでもないとばかりに顔をしかめて説明を繰り返します。

「ほら、ここも見てください」
案内されて入った、長男さんのお部屋。18才らしく、オーディオやゲーム機が散乱しています。
白っぽい板の壁と白い天井が、しっとり濡れているようなかんじはしますが、取り立てておかしなかんじはしません。
「真ん中歩いてみてください。」
言われて中央まで行くと・・ぎぎぃ~ぎぎ、ぎ 

な、なんなの? なんなの?・・・・・・も、もしかして、重量オーバーとか??(^^;)

「ね、真ん中ギシギシ言うとるでしょ。」
(あーよかった。みんなギシギシ言うんだ・・・と、ひそかに胸を撫で下ろして・・・)
「ほんとですね。これはひどい。」

落ち着いて居間に通されてから、一連の流れをお聞きすることにしました。


中村さんがこの家のリフォームに取り掛かったのは二年前。
亡きお母様が屋根の葺き替えをしていので、築80年のこの家屋もまだまだと思っていました。
そこに訪れたのが、日東ハウジングの山田という営業マンでした。

長男さんが、卒業したあとのことも考えたら、住みやすいようにと考えたと中村さんは言います。
そして、リフォームを決めたのです。

最初の見積もりは300万。
それが、中途追加や、手直しが、嵩んで、結局は750万、かかってしまいました。そして、ローンと現金でそれを支払ったそうです。
これが高いか安いかは、それぞれの判断だと思います。
ただ、家を建てた方ならお判りと思いますが、見積もり以上の金額になることは、珍しくない・・というよりごく普通のことです。
「一生一度のことだから」と、グレードを上げたり、予定外のところも・・ということは、よくあること・・・ではあるので゛す(ただ、2.5倍というのは、個人的には・・うーんと考え込んでしまいますが・・)

でも、問題はこれではなかったのです。
このリフォーム、住宅金融公庫の「リフォーム融資」の対象になっており、後日800万近いお金が振り込まれました。
はじめのローンと現金は、ひとまず・・ということで払い込み、この公庫のお金で賄う予定でした。
ところが、この手続きをすると言って、山田が通帳とキャッシュカードを持って、全額引き出してしまったのです。その上、あろうことか、預けてあった中村さんの身分証明書を使って、サラ金にまで手を出していました。

そう、中村さんはリフォーム代金、そっくりそのまま二重払いしていたのです。。。。
日東ハウジングにも行ったそうです。
怪しげな社長がひとりいて
「山田とは連絡がとれん。」と、相手にしてくれなかったそうです。
もちろん、警察にも相談しました。
「そんな大切なもの、預けるあんたが悪い」と、言われたそうです・・(怒・・これが公僕の言うセリフでしょうか?)

山田はじつは、この近在の出身らしいのです。実家のお母さんのこともいろいろ話をしていたそうです。
そんな身の上話でこの善良なご夫婦を騙したのです。

そうこうしているうちに、ローンの支払いはやってくる。公庫の支払いもある。サラ金からの取立て電話もしつこい・・・と、思い余って相談電話をかけてこられたのです。

正直言って、これだけのリフォームなら750万と言われたら、それくらいかなと納得するかもしれないと思います。
でも、二重取りは明らかに犯罪ですし、サラ金に至っては、言うまでもないことです。

日東ハウジングは、現在も営業しているかどうかは判りません。山田の行方も知れません。
でも、なんとか探してあげなくては、あんまりではありませんか・・・。

毎日かかるサラ金からの電話の対処をひとまず、お教えして(ゴメンナサイ・・これはここでは言えません。企業ヒミツ・・というやつです。^^;)調査をお預かりしました。

並んで丁寧に頭を下げられる山田さんご夫婦に見送られながら、シャーベットの道を下る私の足元のおぼつかなさ・・・(笑)

しかし下りの雪道は怖いです。ずるずるとセンターに寄る車を止める術がない・・・。
上り坂の時に、センターを越えてきたトラックにビビリ
「このまま突っ込んできたら、崖から落ちるよね。」
「そしたら、遺体の回収困難ですよね。」
「春まで待つんじゃないの?」
なんて会話が思い出されます・・・・。。。。。

でも、失礼ながら総額2000万近くかけて(お母様のした屋根葺きも含めて)リフォームするぐらいなら、もっと街に出てきたほうがよかったのに・・・と、思うのは、帰るべき故郷を持たない者だから思うことなのでしょうか・・・・すみません。余計なことでした(深謝)

by sala729 | 2006-03-16 17:47

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