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瀬戸内海の沿岸は、北側も南側も、みかんの産地として有名ですが、みかんは潮風に吹かれると、甘くなる・・・と、いうことをご存知でしたか?

その温暖な気候と、潮風の洗礼が、皮が薄くて甘い瀬戸内のみかんを形成するそうです。
でも、そんな温暖な地域であっても、先日のようにいたいけない小学一年生の女の子が、下校途中で殺されたりする事件もあって、やはり世の中は、自分で思うよりも、ずっとずっと加速をつけて、暗い世界へと転がり落ちているのではないかと・・・暗澹たる思いがします・・。

川島さん(56才・仮名)と、妻のやよこさん(51才・仮名)が、深刻な顔をして相談に見えたのは、まだ6時をまわっただけというのに、外は真っ暗で深い夜の闇が、突然に口を開けて待っているようなそんな夕暮れ時でした。

「息子の嫁なんですが・・」やよこさんの声が震えています。
ひとり息子さんは、つい二ヶ月前に結婚したばかりです。挙式も披露宴もなしで、入籍だけの結婚は、そう珍しいことではありません。
ただ、このお嫁さん、実家からの嫁入りではなくて、別の男性と同居していて、そこから自分の荷物を運んできたらしいのです・・・・(絶句・・)
嫁の、美穂さんはその男性を「叔父」と、言っていましたし、川島さん夫婦は、彼女がそういうんだから、それに違いないと信じていました。

新婚のうちは・・と、長男にもかかわらずふたりを別居させて、やよこさんは「娘」と、思って可愛がったといいます。結婚式も挙げていないのでと、その費用分を美穂さんに渡して、なにかの足しにしなさいねと言っても、ありがとうをいうでもなく、ただ黙ってそれを受け取っただの、美穂さんに、物足りなさはあっても、それを責めたりはしませんでした。

ところが、何日か前から、息子の様子がおかしいことに気づきました。
遊びにきてもいつもなにかふさぎこんでいます。話しかけても、上の空のことも多くなっています。なにより、この一ヶ月、美穂さんはここには来ていません。
最初の頃は、仕事だとか、なんだとか言っていた息子さんも、今はなにも言いません。
「美穂さん、どーしとるんね?」
恐る恐る尋ねてみると、息子はようやく決心したように、やよこさんを見て
「あいつ・・・男がおるかもしれん。」と、搾り出すように言います。

腰を抜かすような衝撃のあとで、よーく話を聞いてみると

美穂さんは電車で一時間以上離れた地域の大型スーパーでパート勤務をしています。
都会の方なら、一時間くらい・・と、思われるかもしれませんが、田舎で一時間というと、なんでそんな遠くに・・と、たいていの場合言われます。
時給700円や800円の仕事に、こんな交通費かけるのは、愚か・・と、言われます。

もちろん、やよこさんも常々思っていましたが、美穂さんには美穂さんの考えがあろう・・と、自分の思いは閉じ込めていました。

それが、息子の言うことには、美穂さんには、結婚前からの男性がいて、その人が駅まで迎えにきてくれて、また、勤め先から駅まで送ってくれる・・と、いうのです。
そして、そのことを、美穂さんは悪びれる風もなく、夫に話すのだそうです。
まったく、抑揚のない、言い方で・・・・。


しかも、パートというのに、毎日出勤して、帰宅は22時ごろです。
こんなパートはないでしょう?

つめの先まで日焼けした指をブルブルと震わせて、やよこさんは続けます。
息子さんは、もう何度も男に送られる美穂さんを目撃しているそうです。

あとで、公簿を取り寄せてみると、美穂さんには「叔父さん」は、存在しないということも判りました。でも、それでも、息子さんはまだ一縷の望みを持っていたいようなのです。


まじめな息子ですが・・・と。やよこさんは笑います。
息子さんは、優秀ですが女の子と交際した経験が皆無です。いつも、自家栽培のみかんの取り入れを手伝ってくれる優しい息子さんなのだそうです。
その息子さんが、一目ぼれして、相手の言うがままに、挙式も披露宴もない結婚に踏み切ると言ったとき、母としての願いを飲み込んで、微笑んで了承した結果が・・・・・・これ、なのです。

やよこさんは、本当のことが知りたいと言います。
憶測や、想像でない、本当のこと。それを自分も知りたいし、息子にも知らせたいと、思っています。
まじめな息子が、選んで求めた結婚が、これ・・であったにせよ、今はその決着を一日も早くつけないと、息子も、自分も、なにも信じられない。なにも考えられない・・そんな日を送っていると言います。
そういう、やよこさんを痛ましげに、川島さんは見つめて、白いものの混じった髪を、掻きながら
ただ黙ってうなづいています。でも、今のやよこさんにはその、夫の鷹揚な信頼こそが、支えなのでしょう。・・・これが「夫婦」です。
そして、その「夫婦づくり」に失敗した、息子のことを案じながら、やよこさんは何度も、何度も
「よろしくお願いします」と、繰り返しながら、わが社を後にしていきました。

by sala729 | 2005-11-26 17:26

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