人気ブログランキング | 話題のタグを見る
波間をキラキラと光の帯が染め上げて瀬戸内海の小島の秋は、たゆたゆと過ぎていくようですが、それでも男と女には、どこにでもあるような、底の知れないふかーい事情があるのです。

夫と不倫相手の現場を二度ならず押さえているにもかかわらず、開き直り、まだ懲りずに逢瀬を重ねていることで、離婚を決意し、調査に至った景子さんの決心は揺るぎのないまま、最終段階を迎えようとしていました。

N係長はこの調査のため「コマンドN」に身をやつし、虻の大群の襲撃にさらされ、蚊や雨の波状攻撃を全身で受け止め、その上になお、現場の霊障にまで身を晒し・・・と、「調査員残酷物語」をそのまま物語るような辛苦の上に辿り着いた、結果でした。・・・・・ほんとに、ご苦労様でした。・・・・・・・その右の腰あたりに、ぼんやりと浮遊しているのは、なんでしょう?と、思った途端、金色の光がぱあっとさして、シャボン玉がはじけるみたいに、消し飛んでいったものがあったことは、さすがに今日まで黙っていました。・・・・す、すみません(^^;;)


その日は万全の体制て臨みました。
そして、景子さんの希望通り、現場におよびする手はずも整えていました。私は、会社でその連絡を今か、今かと待ち構えていました。
プルプルプフル~~~。
景子さんからです。待っているのに、まだ連絡がこないと泣きそうな声です。
時計を見ると、確かにもう二人は遭っているどころか別れて帰ってきそうな時間です。
それでも、なにも連絡がないということは、現場が動いている・・・と、いうことです。


それから二時間。
景子さんから連絡がありました。「ありがとうございます。・・・終わりました」
ほっとしたような、泣き出しそうなそんな声です。
「お疲れさまでした。詳しくはまた改めてお聞きしますから、今夜はゆっくりお休みくださいね。」

現場は、なんと景子さんのお父さんも眠る墓地の一角で、真っ暗な中を二人はライトも消して
車をバックで入れてきたそうです。・・・・・・うーむ。不倫もなかなかたいへんですわね・・・。

まず、証拠の写真です。そして、景子さんがおそるおそる声をかけます。
「なによっ。あんた。」女の声が闇を切り裂くように響きます。景子さんは34才。女は確か25才だったと思いますが、この態度の差は、いったいなんなんでしょう?

バタン!!
激しくドアの開閉音がして、女が飛び出してきました。いまにも景子さんに掴みかからんばかりです。
その二人の間に、すっと身を割って入って「5分でいいですから、奥さんに思いのたけを話させてあげてください。」とN係長。

そして、かたわらには、こういう現場ではとんなトラブルが出現するやもしれないので、スペシャルS氏。そして、その下のOMさん。
女は、周囲を見回して、OMさんの前に立ちはだかります。両手を腰において、肩をそびやかし
OMさんを見上げて「あんたたちなによっ?」と、甲高い声でわめきます。


「君は、不倫の相手だろうが・・。なにを偉そうにしとるのかっ!?」
OMさんは、わが社きっての論客です。こんな、不倫娘の理屈にならない抗議の処理なんて、赤ちゃんの寝言より簡単です。
ところが、その間、夫は・・といえば、へらへらと笑いながら、車のドアを下げて、肘を窓の外に突き出し、眺めているだけで、車から降りようともしません。

なんと、情けない、いーかげんな男でしょう?
自分よりずっと年下の女が、精一杯の背伸びをしているというのに・・・。


キャインキャインと、お座敷犬の遠吠えのような、女の声を遠くに聞きながら、景子さんは
大きな重荷が、肩から落ちたような気がしたと、後にお伝えくださいました。
自分が欲しかったのは、いまこの「時間」なのだ・・と。。。。

慰謝料も養育費も、もちろん欲しい。でもなによりも、今私の欲しいものは「この達成感。夫の浮気を晴天のもとに晒して、本当に言いたいことの、すべてを言い尽くす開放感。わたしは、これが欲しかったのだと・・・。




話はずっと続いていたかもしれません。
でも、今朝になって、景子さんは晴れやかな声で電話をしてきました。
「第一歩がはじまりました。これからがんばりますのでAさん、また助けてくださいね。」
景子さんの中では、なにかが吹っ切れたのかもしれません。

男たちは、それぞれに疲れ果てて、帰ってきました。ながいながい夜だったようです。

でも、ほっとする間もなく、景子さんが次に打つ手を考えなければなりません。
N係長、OMさん、私と、相談室にこもります。
なにをどう動くか、景子さんにどう動いてもらうか、緻密な相談の部屋に時間が流れていきます。
なにも言えず、なにもできなかった景子さんが、一大決心をして動いた結果です。
その景子さんのサポートのためにこれからは動くのです。

まだまた゛、これから・・ですよ(にっこり・・・)

by sala729 | 2005-10-18 16:19

<< 彼女の選択    一番の嫌われ者は・・ >>