多田さん(31才・仮名)が、その電話をかけて来たのは、昨夜遅くで、日付が昨日から今日に変わろうとする頃でした。
「妻と離婚するつもりなんですが、妻の相手の住所が知りたいんです。」

この場合の相手とは、たぶん「不倫相手」のことでしょうね。翌日お逢いすることになって、今日、私はここにいる・・と、言うことなのです。


トントン・・・。心なしかノックの音が軽やかに響きます(大抵の場合、深刻な相談が多いので、重いノックはあっても、こんな軽やかな音は・・・・まずないですね(いやーーな予感・・・・)

「ちわーっす。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・な、なんなの?この軽さ・・・・***********・・・・・・・・・・・・・・・・・

「すんません。きったない格好のままで来ちゃいました。」
泥の付いた長靴に、埃まみれの作業着。そして、どこまでも明るい彼・・・・(ふぅぅ・・・・)
前途多難・・・・・・・・お茶を出す手が震えます・・・・・。。。


「いゃあ、女房とはもう離婚することは決めてるんですよ。女房の浮気?。そ、そそ、そーです
よ。そーなんですが、相手がね・・・いゃあ、お恥ずかしい話ですが、相手は女なんです。23才。
これがまたなかなかの美人なんですよね。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん、もう・・まったく存在の許せないこの軽さ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ピシッ・・ピシッ・・・

まるで背骨が溶けきってしまった「贋軟体動物」のように、ぐにゃぐにゃと机に身を投げかけるように話す、多田さんを冷ややかに見下ろしながら、私が聞いたことを要約すると、話はこうです。


多田さんの妻は、介護士をしています。結婚7年。それなりに穏やかに暮らしていましたが、夫のただひとつの悩みは、妻があまりに淡白で自分の求めに応じてくれないことでした。
しかし、そんな妻が半年前に提案してきたのは「自分に自由な時間を下さい。その
時はあいちゃん(相手女性の名前・仮名)のところに泊まってもいいでしょ?。その代わり、週一回はがまんしてあげる」と、いうことで、彼はこの案に一も二もなく乗りました。


しかし、これが「罠」だった・・・と、彼は訴えるのです。
そう、夫の了承を得て、妻は堂々と泊まりを重ね、あいさんとの関係を深めていったのです。
多田さんは妻を今でもふかーく愛していると言います。もともと、妻にはそういう「気」はなかった。運悪く、あいさんに巡りあって、こんなことになってしまったのだと・・。

妻は一旦は離婚に同意しました。妻からの慰謝料請求はなし。(とーぜんだは思いますが、彼は感激しているようです・・)養育費もいらない(子供はふたりで妻が引き取るといいます)。
しかし、自分が夜勤の時に、彼に面倒を見てもらいたいと言うのです。

多田さんも一度は了解したものの、面倒を見るったって、そこにはあいさんもいるわけですか、
やっぱり「いや」だと申し出すると、妻は「約束が違う」と怒りだし、離婚調停にかけることを決めた・・・と、言うのです。。。。


なんともはや・・・・緊急性も必要性も感じられない話ではありませんか?
そして、彼はあいさんの住所を知って、あいさんに調停申請するつもりというのです。
まったく・・・・失礼ながらおめでたい話です。
もし、彼の話がすべて真実なら、あいさんは、年若くても、いろんな意味で世間を彼ら以上に知っています。そんな「調停」なんて、お話し合い・・・ぐらいにしか感じていませんよ。

それに、なにより確たる証拠もなしに、相手を決め付けようなんてあまーい考えなんですから
多田さんが、あいさんの逆襲に会うのは目に見えています。。。


ところが、これを何度お話しても、彼は理解できないのです。・・・もしかしたら、しょうとしないのかもしれませんが。。。
「いや、妻はあいとのことを認めています。証拠なんていりません。それに、自分は妻のこと今でも愛していますから、負担はかけたくないんです。ただ、あいには調停かけるぞと言いたいだけなんですよ。」などと、物分りの良い男を気取っています。。


でも、現実にそれが調査になると、当然いくらかの費用はかかってきます。

「ひぇぇ~~。そ、そんな・・・」
私が提示した見積もりに、多田さんが応えた第一声です。

「こんな簡単なことなんだから1万か、せいぜい2万でしょ??」

・・・・・・・ばかじゃない?・・・・・と、いう呪詛をお腹の中に封じ込めて、私は精一杯の笑顔を作りました。

「お見積もりは、わたくしが作るもので、あなたがお決めになるものではありません。調査をするのはこちらですから。」

「そ、そ、そ、・・・そーですよね。。うんうん、そーですね。そーですよ。」

なに?この納得の軽さは????

「し、失礼しますっ。」
言うが早いか、多田さんは立ち上がり、ほんとうに「脱兎」のごとく、事務所を飛び出していきまいた。・・・・(はやっ・・・@@@@)


毎日、いろいろな相談が入ります。
その中に、精神的に不安定な人もいれば、被害妄想のような状態の人もいます。
でも、みんな、それなりにまじめで追い詰められている人も多いです。
深刻な人でないと・・・という訳ではありませんが、「ほんのちょっと」とかのかるーいノリや遊び感覚の人には、向いていないかもしれません。
(深刻なことも、かるいふりしてしまう人がいる・・・ということは、判ります。そして、そういう人は
見分けられると、私は信じています。こうして、もう数え切れないほどの人たちの、胸の中を開いて見せていただいているのですもの。。。)


あなたの、心の内側を見せてくださいと、囁く私の声が自分の耳の奥から聞こえてくるような、
雨の昼下がりです。。。。
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by sala729 | 2005-10-15 11:37 | Comments(0)

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