上品な仕立のオーバーコートを片手に、中川義直さん(仮名)が、事務所を
訪れ、私の目の前にすっと立ったときは、「英国紳士風」という言葉が、
なんの抵抗もなく閃いて「81歳です」という渋い声を聞いたときは、信じられない
思いでお顔を見直してしまいました。

お話によると、中川さんは一代で道路工事機械の設営会社を興し、11年前に
社長を息子さんに譲り、ご自分は会長職に退かれたとのことです。
背中をぴしっと立てて、話し始めた中川さんの姿勢に乱れはありません。


「私の妻は、10年前に亡くなりました。長く患っていたので、最後は自宅でと
思ったのですが、当時同居していた長男の嫁が、世話を嫌って私と妻の目の前で
義父さんと義母さんの世話は正直さん(長男)がすればいい。私は自分の親の
世話します。義父さんと義母さんの世話する気は一切ないですっ。と、言いました。


もともと、今で言うデキ婚で長男が私らの反対を押し切って貰った嫁です。
折り合いがいいはずはなかったのですが、これが決定的になり、やつらは
別居することになりました。

近くの私の土地を貸してくれと言い、さらに新築費用も貸してくれといい、かれこれ
3千万ほどを用立ててやりました。しかし、やつらはそれを一向に返そうと
せんのですよ。会社も譲って、仮にも社長という身分の者が、借りたままでいいと
いう法はないと、私は弁護士をたてて債権取立ての申し出をしました。
すると、やつらはこれは生前贈与だと言うのです。

そのころから、会社でやつらはやりたい放題。嫁の親族を何人も雇ったり、
その親族が下請けからリベート取ったり、他の社員に示しも何もあったもんじゃ
ありません。
古い社員に泣きつかれて、私がなんとか調べて親族の不正を突きつけてその男を
解雇したのですが、今度はその男の代わりに嫁が息子(私の孫です)を、
会社に入れるというのです。


孫は大手の建設会社に入社したものの二年前に退職し、ブラブラしていました。
息子は将来跡継ぎにと言っていますが、私は嫁が自分のスパイに仕立てるために
後釜に入れたのではないかと思っています。
孫が優秀なら、なんの問題もありませんが、大手を二年で辞めた男です。
しかも、あの嫁に甘やかされて、育っています。

孫が前職をなんで辞めたのか、それが私は知りたいのです。
なにか不都合をして馘首されたのか、会社の人員整理の対象になったのか、
それとも金銭的や道義的な不始末があったのか。または人間的に劣っているのか、
それが判ったら、理由によっては孫の就職を見逃してもいいと思っています。
でも、そうでないなら、前の親族の男の不始末もありますから、もう
私は息子のやることを黙ってはみておれません。」

一気に話す中川さんに不整合な点は見当たりません。
多少の思い込みはあろうかとは思いますが、矍鑠とした父親にここまで
思い詰めさせるのは、不肖の息子であろうとは思います。
譲られた城を守るには器が小さいかも・・・とは思います。

もちろん調査はお預かりしました。
ご相談は人様々です。ご自分の身に受けるのと、他人様の身に降りかかるのでは
その重さに数倍の差があります。
それでも、それを払いたいと思った時、お役に立てるのが私の仕事と思っています。
四国の地といえども、春はまだ遠そうですが、行きずりの梅の蕾は確実に色づいて
少しだけふっくらとしてきたようです。
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by sala729 | 2013-02-16 14:32 | Comments(0)

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