小枝子さんの長い調査は、彼女の苦悩を抱えたままで終了していました。
覚えておいでの方もいらっしゃるでしょうが、小枝子さんの夫は、浮気をして女にスナックをだす
資金援助までしていたのです。
小枝子さんは、女の影が見え始めたころから、悩みに悩み、調査に至ったのです。
そして、すべてが明らかになりました。
女には、交通事故で長期休職中の夫がおり、昼間は漆器製造のパート、夜はスナックのママと
一見働き者の妻と、周囲には見られていたようです。現に、昼間の女は、地味で夜の顔はとても想像できません。
この事実を知ったとき、小枝子さんは「私が悪いんでしょうか。私が仕事ばかりして、主人のこと構わなかったからこうなったんでしょうか。」と、泣き崩れました。
夫は婿養子で、肩身が狭い思いをさせては悪いと、小枝子さんの父が亡くなったとき、母は父の財産を小枝子さんと、夫の名義にすべて書き換えていました。そして、夫の浮気はその頃からはじまっていたようです。

親と同居している安心感から、小枝子さんは結婚して、子供が産まれても仕事を続けていました。国家公務員で、キャリアもあり、働く女性の魁として、仕事をしていた自分が悪いと小枝子さんは泣き崩れるのです。
しかし、数年前から、うすうす夫の浮気に気づいていた小枝子さんは、妄想と疑惑の虜になり
眠れない日々がつづき、精神がぼろぼろになってしまい、仕事を続けられなくなりました。
しかし、退職しても、心の安らぐ日は来ません。むしろ、時間がありあまりすぎて、妄想は広がるばかり・・です。

主人を取り戻したい。もとの生活に戻りたい・・・そういい続ける小枝子さんに、夫を取り戻すためには、どうすればいいのか、いろいろなお話をしました。私たちは、取り戻すお手伝いはできます。
たぶん、えぇぇーーーっつ。こんなことまで・・といえるぐらいのところまで、できるとおもいます。
でも、それは妻の力なくしてはできません。私たちのお手伝いのあとは、しっかりと妻として、
自信と愛情と慈しみをもって、夫に接してもらうことができなければ、完全に夫を取り戻すことは
できませんと、小枝子さんに話し聞かせます。夫婦のことは、最後は夫婦でないと、できないことがある・・ということですね。
もともと、聡明な方ですから、私の話の真意を理解していただくのに時間はかかりません。
「判りました。私もがんばります。」

その一言を聞いて、さらに調査に熱が入りました。
女と、その周辺を調査して、次の対処をどうするか、会議が続きます。


そして数日後、スペシャルS氏の登場です。
S氏と、その腹心のOM氏。そして、E調査員を連れて、夫に面談を申し込んだ、ホテルのロビーに向かいます。
そこには、すでに夫が、そわそわと待ち受けています。そして、周囲になにやら挙動不審の男たちが数人意味もなく行き来しています。
向かい合って座った夫にOM氏が黙って、調査報告書を見せます。(もちろん、これには小枝子さんの名前は一言も出てきません)
夫はおどおどと視線をさ迷わせます。次の言葉を待っているのでしょう・・・。


・・・・・・・すみませんが、以下は企業秘密です。申し訳ありません。・・・・・・・・・・・・・


数日後、小枝子さんから電話が入りました。
「なにかありましたか?」
S氏が夫に接触したことは、当然事前に知らせています。
「あのですね。日曜日に主人がつつじ見に行こうかって誘ってくれたんです。」
声が弾んでいるのがよく判ります。
「でも二分咲きだったんです。そしたら、じゃ、来週また来るか。そのときは、満開になってるだろうって・・」
心なしか声も潤んでいるようです。
「よかったじゃないですか。」私の声も弾みます。
「はい。誘ってくれたことなんてほんとに何年ぶりか・・です。しかも、二週連続なんて、あったかしら?」少女のような声です。
「ええ。ええ。でもね。これからが奥さんの出番なんですよ。私たちができるのはここまで。あとは、奥さんが、彼に甘えて頼ってみせることですね。でも、見せるだけね(笑)。見せたふりして、しっかり監視の目は緩めちゃだめですよ。しばらくの間はね・・」
「はい。はい。わかりました。でも、何年も何年も、こうやって声かけてくる日を待ってました。もしかしたら、そんな日はもう永遠にこないのではないかって思ってました。」もう、小枝子さんには限界だったのでしょう。語尾はかすれて聞き取れないほどでした。きっと電話の向こうでは、涙で顔をぐちゃぐちゃにして声を詰まらせているのでしょう。

「ありがとうございました。ほんとにありがとうございました。」
何度も、何度もお礼を繰り返す、小枝子さんに
「これからですから、奥さん、がんばってくださいね。」と、電話を切った私は、次の行動の準備をします。

私たちは、小枝子さんのように手放しでは安心はしていません。
たしかに、夫は反省もしているでしょう。やり直すことも考えているでしょう。
でも、それでも私たちは本当にそれが実現しているかどうか、確かめることは怠りません。
しばらくして、ほんとうに夫が女のもとに行っているかどうか、確かめるための準備に入ります。

小枝子さんの手に、確実な幸せが戻ってくるように、彼女の気がつかないように、確かめて安心できるように、そんな「幸せの使者」になれる調査は・・私も幸せな気持ちで一杯です。
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by sala729 | 2005-05-12 09:18

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