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10月の連休初日に、娘家族と共に、「祖谷・かずら橋」に行って来ました。

ご存知の方も多いかと思いますが、高知県と徳島県に跨る大歩危・小歩危(おおぼけ・
こぼけ)と呼ばれる深い渓谷の、まだその先にあります。
この地名、音にだすとなんだか、小バカにしたニュアンスがありますが、本来の意味は
大股で歩くと危ない。小股でも危ないと言われるくらい急峻という意味なのだそうです。

往路はこの渓谷を通らず、県道とは名ばかりの、隘路の続く道を、運転者以外は
久しぶりの車酔いの洗礼を受けながら、やっと到着したのがお昼前です。


行きがけに、近所の喫茶店でモーニング囲みながら、家人と婿殿がどのコースに
するかと相談していますと、その店のマスターが「かずら橋いくの?」と、親しげに・。
白の混じった剛毛と、髭が、喫茶店マスターらしいといえば、らしいような・・

「ええ。どのコースにしょうかと思って。」
「紅葉には、ちよっと早いようやね。私、祖谷出身よ。」
「あら?、西祖谷山村?」
「いや、もひとつ奥の東祖谷山村。」
「じゃ、マスター、平家の末裔?」

会話だけ聞くと、すごい遠国に聞こえるでしょ?
祖谷山村は、西・東とありますが、どちらも平家伝説が残っており、落人部落と
言われています。
たしかに、鄙という言葉が、これほど似つかわしい土地もないと断言できるほどの
山里であることは、間違いありません。


三年に一度でしたか、山の蔓を村民総出で切り取って、切り立つ岩場の渓谷に吊橋として
渡すのです。
もちろん、今は安全面を考えて、ワイヤーも渡しているらしいのですが、足元も蔓なので
広いところは20センチ近く間が開いています。そこからは流れの早い渓谷の白いしぶきや
岩がゴロゴロと見えます。欄干といっても、これも蔓ですから、持っても体を支えて
くれるわけではなく、足元、手元ともにぐらぐらと揺れ動く、なかなかにスリリングな
橋なのです。


初めての女性観光客は、ハイヒールだったりすると、絶対に後悔します。

奈良県の十津川渓谷の吊橋はその高さで日本一ですが(あれも怖いですけどね。余談
ですが、あの橋の僅か30センチの幅を、観光客が渡りはじめる前に、郵便やさんが
バイクで渡っているのを見た事があります。あれも、匠の技というものかと・・)
高さこそ譲れ、その奇橋の形状は、勝るとも劣らないと私は思います。

キャアキャアと、黄色い声に混じって「やめて~。揺らさないで~」と、哀願する
声も上がっています。
そうなんです。いるのですよ。必ず・・こんな時に、ぐらぐらと橋をゆする者が・・


あらら・・・知らずにもう橋まで話が飛んでしまって・・・ほほほ~



マスターがこの村の出身と聞いて、私はさらに質問。

「祖谷そばも食べたいんですよね。ほら、かずら橋渡って、びわの滝の前をずっと
あがったところに、お蕎麦屋さんありましたよね?」



しばらく行っていないとはいえ、私はここの蕎麦屋さんが大好きで、かつては
橋の下の岩場でお弁当広げたあと、その蕎麦屋で祖谷そば・・というのが
我が家の定番コースでした。

祖谷そばというのは、10割蕎麦で、晒していませんから、黒くて短くてブチブチ
切れます(笑)
そんな蕎麦の何が旨い?と、江戸蕎麦通さんには言われそうですが、このねちねちと
した素朴感がなんとも言えず、美味しく感じられるのです。

一言添えますが、私は神田藪そばのあの、細めのせいろも好きですが、この山里の
素朴な蕎麦に、そこいらの山で採れた、山菜やきのこが、たっぷりの田舎蕎麦も
大好きです。



ところが・・・

「ああ、あれ。あそこはもうないよ。お爺ちゃんが死んで、蕎麦打つ人がもうおらん
のよ。」

そうか・・改めて行かなくなった歳月の長さが身にしみます。
でも、食べたい。。。

「じゃ、どこ?」
「もうないよ。あのあたりにゃ、もう旨い蕎麦食わせるところはもうない。だって
蕎麦打っとらんのやもの。みんな香川のうどんやから買うとんよ。わっはは~」

わっはは~じゃないわよ。それって・・・

「ないって・・・ないってどーいうことよ。」
思わず、マスターの胸倉を・・・なんてことはありませんでしたが、私は全身から
力が抜けました。

「あ、あの、ネットで検索した○○の蕎麦って店はどうですか?」と、おそるおそる
家人。

「あぁ。あそこね。あそこは旨くないよ。なんたって、オレの従姉妹んとこやからね。
間違いないっ。わっはは~」

あぁぁ・・・お昼ごはんが・・・・・消える。きえる。キエル・・・・・・


「だけど、まぁ、おみやげくらい買ってやって。俺からって言えば、安くして
くれるから」と、ご丁寧に、マスターのお父様のお名前まで教えてれました。

でも・・・おみやげ別に、お安くなくてもいいんですけどぉ・・・
お蕎麦が食べたいだけなんですけどぉぉ・・・


そしてくねくね道を経て、かずら橋へ・・

昨日までの雨がすっかりあがって、冷たい空気がとても清浄で心地よいです。
はらはらと風に舞う、黄色い落ち葉も秋の訪れの使者のようです。


お約束の、かずら橋をちびギャングは婿殿に肩車され上機嫌で渡っています。
入り口では、そのあまりの自然さに、しり込みしていたくせに・・(笑)
渡りきったら、すぐに「びわの滝」が、水音高く落ちています。
すごく涼しくて、マイナスイオン全開ってかんじですね。

その前の店先には、祖谷の名物「でこまわし」とあめご焼きが、炭火を囲んで串刺しに
されています。
「でこまわし」は、じゃがいもとこの地独特の堅い木綿豆腐、それにこんにゃくを串刺し
にして、自家製の味噌を塗りながら、炭火で焼くというものです。
阿波名物「人形浄瑠璃」の、頭部分を「でこ」といい、劇中の見得を切るシーンでは
頭を回したりしますが、この串刺しも同じように回して焼くことから「でこまわし」と
呼ばれるらしいです。


ちょっと一休み。
今日は運転しない家人は迷わずビールとあめご刺し。
私たちは「でこまわし」と「だんご」と、ラムネ。
そして、ちびギャングはなんと「そば」が欲しいと・・・

「ほら、マスターが美味しくないって言っていたから、○○の蕎麦はやめて、ここで
食べようよ。」と、家人がいつもの妥協策を提案。

うんうんと、頷く娘と婿殿より先に私は
「だめっ。行くわよ。食べてみないと判らない。味覚なんて人それぞれ。」
「だって、わざわざ、まずいといってるのに、行くことないじゃない?」
「何言ってるのよ。食べてみたからこそ、ホントにまずいって言えるんじゃないの。
行くわよ。まずくても行く。」

大人三人は、もう何も言いません。
ちびギャングだけが、蕎麦をまってルンルン~
「あのさ、どうせ○○の蕎麦行くんだったら、ここで食べたら、食べれないから
一応、Dちゃん(婿殿の名)だけ、食べてみて。で、味教えてよ。」と、家人。

「いや。むりむり。わかんないっす。オレが食べたら全部、旨いっす。」

なんだか、みんなが責任回避しているような会話です。


「でこまわし」・・美味しかったです。おかわりしました。(笑)
娘は「だんご」が、美味しいと。団子粉で作ったねっとりした団子ですが、それが
味噌によく会うと申しておりました。
あめごは、もう感激するくらい美味しいと、いつものように大げさな家人コメント。
かの人は、ビールのつまみになるなら、大福餅でも美味しいと、叫ぶことでしょう。


そして、車にのって、例の○○の蕎麦に・・・
ところが、このあたりでも大きな方の店なので、駐車場も広いのですが、なんとこの
時間帯は、満車。
この地に不似合いな、無粋な制服のガードマン氏が、誘導しているではありませんか。

「もう、いい。バス。」
「へ?」ハンドルを握ったまま、固まる婿殿に「待ってまでは入らないってよ。」と
娘が囁いています。
そして、次の店・・・またも満車。
次は店がチープ・・・・

なんやかやのうちに、次の予定地「ラピス大歩危」に。。。
ここの渓谷は、吉野川を源流としていますから、その水流の豊かなことと、綺麗なことは
特筆ものです。

この地で切り出した、原石の美しさを展示しているのですが、それよりまずここで
腹ごしらえです。さすがに、空腹。。。

川にせり出した、テラスに席を取ると、眼下に岩場の渓谷。川を挟んで対岸は土讃線の
線路と背後の緑豊かな山、また山です。店内のレストルームで調達してきた、お蕎麦。
山菜蕎麦は「ニッスイ」。焼きおにぎりも、もちろんニッスイ。
それでも、誰も文句も言わず食べてます。そう、美味しけりゃいいんです。
「ちがうだろっ!!」と、家人と娘の突っ込みが見えてくるような・・・
でも、ここにしたおかげ・・・と、思えたのは、食後すぐのことでした。


何気に対岸の山を見ていた、婿殿。
「あの木の動き、なんだか不自然。」と、指を指します。
確かに・・・周りは動いてないのに、その木の枝だけがたわんでいます。
じっと、眼をこらすと・・・

あっ!・・・・・猿!!猿!

そうなんです。木々の間を野生の猿があちこちに、伝わって、とうとう線路にまで
降りてきました。
それも、何頭もが連なって、猿はグループ行動って本当だったのですね。
ちびギャングも大喜び。まわりのテーブルの人たちも、みんなザワザワ・・・
そうですよね。野生の猿なんて、早々見られるようなものではありません。
今年の夏はあまりに暑かったので、どんぐりの実の生育が悪く、猿や熊が里に下りてくる
というニュースを実感した一こまでしたね。


「ほら、ごらん。ここでお昼食べたから、見られたのよ。」と、言う私の声を無視して
家族は、併設してある「妖怪博物館」に向かいます。
水木しげるさんでおなじみの「子啼き爺」は、ここの生まれなのだそうです。
それが、妖怪になってからここで生まれたのか、妖怪になる前の人間時代の話だった
のかは聞き逃し、見逃しましたが、なかなかに商魂逞しいものです。

でも、ひやっとさせられたのは、入り口前がPになっているのですが、車を降りようと
すると、目の前を妖怪の着ぐるみたちが、やってくるのです。
もちろん、子供たちは大騒ぎ。
ちびギャングも固まってしまって、動こうともしません。
「パパのお友達なんよ。」と、言い募って無理やりツーシヨット写真。
・・・・パパのお友達って・・・パパも妖怪かい??・・・・・・・・・・・・


その後の車で到着した5才くらいのおにーちゃん。
降りた途端、「カラス天狗」の洗礼をうけて、うわぁ~っと回り右して走り出したのです。
そして、見境なく走ったものですから、車道に飛び出す寸前。その子のパパがキャッチ。
車道は国道ですから、結構往来はあるのです。

そうなんですよね。子供は精一杯だから、だから面白いのだけど、こんなことで事故でも
あったら、なんのために着たのか判りません。
くれぐれも気をつけろという戒めと、私も受け止めました。


そして、すぐ眼と鼻の先から「遊覧船」が出ているのです。
エンジンは積んでいるものの、25人乗りの、見かけは「櫓こぎ舟」です。
もちろん、乗りますよ。こういうものは乗ることにしているのです(笑)

両岸が切り立った花崗岩。川鵜や鴨が水辺に、鳶が空高く舞って、情緒たっぷりです。
そして、頬にあたる風のすがすがしさ。
岩場の上の歩道を行く人や、すれ違う船の客たちに、手を振り合って、お互い
嬉しそうです。こういう、ご挨拶、私、大好きですよ。
なんだか、とても楽しくなるでしょ?
30分の船旅があっという間です。


ハードな一日でしたが、とても楽しかったです。ちびギャングがもう少し、おとなし
ければ・・・(苦笑)
はい。彼は日毎ハードに、逞しくなっていきます。
疲れたら、僅かの充電時間で、再びさらにハイパワーで動きます。ほんとに、
上り坂のエネルギーに対抗できるものは、何もありません。


ようやく別れてやれやれと一息ついた時、家人の携帯にメールの音が・・・
いやーな予感・・・・
私の携帯は、仕事関係がよく入るので、私と家人がいるときは、用件があれば
家人のほうにメールが入るのです。

「明日、お隣のMIちゃんのお誕生日プレゼント買いにいくから、連れてってね。
Dちゃん仕事だから、午前中には行きます。」と、Vサインメール・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・ほっとしたのも束の間、明日もまた続くのか
と、嬉しいような辛いような・・・

家人は、そそくさとマッサージ機に身を任せ、私は念入りに、家人に足裏マッサージを
施してもらい、明日に備えたのは言うまでもありません。

あぁぁぁ・・・明日が、こわい・・・

by sala729 | 2010-10-13 14:10

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